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第13話 4/17-B かしわ餅の種類
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きゅ、がたん、という音がした。チャリだな。
「うーす」
眠そうな声でがらがらと戸が開いた。
「何ー」
「かしわ餅食うー?」
作業中。今日は縁の仕上げと、石箕《いしみ》用のひご作り。時計を見たらお十時だった。
「食うー」
どたどたと上がってくる音。立ち上がってワタシは湯を沸かしに行く。かしわ餅なら緑茶だろ。番茶でいいかな。
「もうあったんか?」
「うん。だけどまだたくさんは無いし。ガキ共にはちゃんと五月になってからの方がいいよなーと思ったからオトナの分だけ」
「その理屈のイミは?」
「季節感?」
「だってこいのぼり立ててるとこあるじゃん」
あー、とこいつは天井を向いた。
帰って来る途中にそういう家も見たんだろ。割と早くにこいのぼりを数匹流してる様な家がここいらでは結構あるんだ。
「じゃーいいや。ねーさんに任せる」
「それがいい。で、どっちが何?」
開いたパックを見てアタシは聞く。
「うすピンクがみそあん。白いのがこしあん」
「よもぎは?」
「売り切れ。あんたの兄貴好きだったっけ」
「つか、かーさんと兄貴がつぶあん派なんだよな。ねーさんはこしあんだけど」
「深くて暗い溝があるな」
「それは認める」
そう、目玉焼きとかつぶあんこしあんというものはちょっとのことだがこだわりになる。
「で、確か上のがこしあんだから」
「みそあんは? 誰も?」
そういえばこいつみそあん派だった。白あんに味噌で甘辛くしてある味のやつは、全国的ではないらしい。……とこないだラジオで聞いた。
「ど、どうだろう…… ガキどもは……」
試したことはない。まあ今日試せばいいか。
「カレーの甘辛じゃないからどうかな」
「むー。美味いのになー。ワタシ大学ん時には無くてさー」
「アタシも九州ではなかったな」
「みそあんはそれでも無いとこあるとこそれなりにあるけど、もろこしは本当に滅多にないのがなー」
「もろこしはなー」
そう、実はここいらではもう一つ種類がある。
たまたまこいつが今日行った店ではなかったが、だいたいこの地域では赤っぽい餅地になる、こしあん入りの「もろこし」というのもあるのだ。
「ねーさんは好きなんだけど、親父はつぶでもこしでも何でもいい派だからなー。まあ今度売ってるとこに買いに行くべ」
「だな」
そう言いつつ湯が沸いたので茶を淹れた。そう言えば新茶の案内も来てたなー。
「うーす」
眠そうな声でがらがらと戸が開いた。
「何ー」
「かしわ餅食うー?」
作業中。今日は縁の仕上げと、石箕《いしみ》用のひご作り。時計を見たらお十時だった。
「食うー」
どたどたと上がってくる音。立ち上がってワタシは湯を沸かしに行く。かしわ餅なら緑茶だろ。番茶でいいかな。
「もうあったんか?」
「うん。だけどまだたくさんは無いし。ガキ共にはちゃんと五月になってからの方がいいよなーと思ったからオトナの分だけ」
「その理屈のイミは?」
「季節感?」
「だってこいのぼり立ててるとこあるじゃん」
あー、とこいつは天井を向いた。
帰って来る途中にそういう家も見たんだろ。割と早くにこいのぼりを数匹流してる様な家がここいらでは結構あるんだ。
「じゃーいいや。ねーさんに任せる」
「それがいい。で、どっちが何?」
開いたパックを見てアタシは聞く。
「うすピンクがみそあん。白いのがこしあん」
「よもぎは?」
「売り切れ。あんたの兄貴好きだったっけ」
「つか、かーさんと兄貴がつぶあん派なんだよな。ねーさんはこしあんだけど」
「深くて暗い溝があるな」
「それは認める」
そう、目玉焼きとかつぶあんこしあんというものはちょっとのことだがこだわりになる。
「で、確か上のがこしあんだから」
「みそあんは? 誰も?」
そういえばこいつみそあん派だった。白あんに味噌で甘辛くしてある味のやつは、全国的ではないらしい。……とこないだラジオで聞いた。
「ど、どうだろう…… ガキどもは……」
試したことはない。まあ今日試せばいいか。
「カレーの甘辛じゃないからどうかな」
「むー。美味いのになー。ワタシ大学ん時には無くてさー」
「アタシも九州ではなかったな」
「みそあんはそれでも無いとこあるとこそれなりにあるけど、もろこしは本当に滅多にないのがなー」
「もろこしはなー」
そう、実はここいらではもう一つ種類がある。
たまたまこいつが今日行った店ではなかったが、だいたいこの地域では赤っぽい餅地になる、こしあん入りの「もろこし」というのもあるのだ。
「ねーさんは好きなんだけど、親父はつぶでもこしでも何でもいい派だからなー。まあ今度売ってるとこに買いに行くべ」
「だな」
そう言いつつ湯が沸いたので茶を淹れた。そう言えば新茶の案内も来てたなー。
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