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第5話 4/13-B 仕事

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 今やってるのは、昨日の朝の続きだ。
 中位のざるを十注文うけてる。新規開店する店の器として欲しいんだと。
 他はあいつとは逆方向のお隣のばーちゃんから、石箕いしみが壊れてきたんで代わりをって。んでも、「遠州えんしゅう」の石箕じゃ野菜運ぶにもちょっと重くなってきたかも。これはじいさんから受け継いだ系の仕事。

 昔からじいさんが座り込んではやっていた竹細工の仕事が好きだった。
 何かと言っちゃ裏山に竹を採りに行くのについていったり、割り方剥ぎ方というものも教わってきた。
 見よう見まねで六つ目の籠ができるようになったとき、じいさんは「よく続くな」と言った。「好きだしー」と言ったら、別府の職業専門学校に行くように勧められた。
 あいつが都会の大学に行くって言い出して凹んでいた時だ。頭いいから仕方なかったけど。だから半分やけでその話に乗った。

 実は滅茶苦茶な倍率だったはずなんだが、何ってことでしょう。アタシはさくっと受かってしまい、お手当もらいつつ修行ができてしまった。
 ただしそこでやっていたのは、農作業用のがっちりした系ではなく、繊細なものも作るための超基礎! という感じのもの。
 失敗したらまた採りに行けばいいやーい、という気分の青竹ではなく(いや青竹もそれなりに時期があるんだけど)、ちゃんと加工した白竹を与えられてそれで作るんだから、あいつのことを気にしてる余裕もなかった。
 とはいえ、温泉地だったから、それはそれで楽しかったんだけど。
 それから二年ほどそこで先生についた。

 そんで何とか修行終わって戻ってきたら、あららまた何ってことでしょう。あいつが居るじゃあないですか。
 ラッキー、とアタシはここのじいさんの離れに移ることにした。
 じいさんはアタシが修行しているうちに亡くなった。桜の木の手入れの方法も置いてったのはやっぱ偉い。
 で、ウチの仕事手伝いつつ、まだまだ昔の道具使いたいってひとのものを直したりしてたら、ヨツバちゃんがお祖父ちゃんの跡次いでくれるんですってー、って噂になって、ちょっとずつ仕事が来た。細かい方の仕事もその流れで来るようになった。まあありがたいことだ。
 ただそんな時にちと根詰めることがあってぶっ倒れたことがあって。
 まああいつが怒ること怒ること。
 こっちは何だ夢か、と抱きしめてキスしたら思いっきりぶっ叩かれたが、めでたくそれから何だかんだで付き合えるようになったのは実に喜ばしいことなのだ。
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