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6 仲純くんの直接の死因、そして関係されると思われるのは
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「何故そこで兵衛が?」
「判りません。きっと騒ぎが広がったので、貴宮さまから様子を伺う様に言われたのかもしれません」
それは有り得る、と祐純も納得する。なかなか出発せず、邸内がざわついていたなら、彼女は気にしただろう。
「その間大殿さまと大宮さまは、物の怪の仕業だ、真言院の阿闍梨を呼ぶように、ともう皆てんやわんやで…」
「真言院の阿闍梨と言えば、確か今一番院のご寵愛著しい御坊であろう?」
「大殿さまは昔なじみのよしみで、と使いを飛ばして阿闍梨をお迎えなさいました。私はその場を離れる訳にはいきませんでしたから、そのままでしたが… でも、阿闍梨の御験は確かなものでした。仲純さまは到着と共にお目を覚まされたのですから!」
「ねえ、ちょっと気になるんだけど… 兵衛はそのまま居たのかい?」
「え?」
不意の問いかけに、衛門は目を見開いた。
幾度か視線を格子の方へと向けると、やがてこう言った。
「そう言えば、…いつの間にか居なくなってましたね。でもそれからすぐに大殿が今のうちだ、と大号令をお掛けになりましたから… 様子を見たらすぐに戻ったのではないですか?」
そうかもしれない。だがどうも祐純は気になった。
「ともかくその時は、仲純さまも何とか息を吹き返されたのです。ですが」
衛門はう、と目頭を押さえる。
「…正直、思い出すのも苦しいことですが」
そう前置きして。
「貴宮さま御入内の日からは、それでも少しは良くなられた様に見えました。
白湯など口にする様になりましたし、やがて薄い汁や柑子の様なものも口にする様になりました。
だから私達はほっとしていたのです。
あの日が一番悪かったのだ、とそう思おうとしたのです。
しかし。それは間違いでした。
そもそも何が原因か判らない病なのですから、安心などしてはいけなかったのです。
ですが私達は何処か気を抜いていたのでしょう。
仲純さまはある日、筆を持たせて欲しい、と仰いました。
どなたかの元へ御文を書かれる程の気力が戻ってきたのだ、と私は喜んで仲純さまのお側へと筆と硯と紙を持って行きました。
仲純さまはありがとう、と私に仰ると、しばらく下がっている様に、と命じました。
正直、筆をお持たせしたのは私ですが、その時も、何て重いんだ、と自嘲気味に仰ったものです。
紙は―――淡い色の薄様を一重ねお渡ししました。少しでも軽いものを、と思ったのですが、どうでしょう。今となっては判りません。陸奥紙の方が持ちやすかったのではないか、とか時々考えることもあります。
それから少し経って、お休みになっていらっしゃる様でしたので、使われた後の筆と硯、それに紙の残りを下げに参りました。
反故も特にありませんでしたので、誰かを呼んで、何方かへ届けさせたのでしょうか。その辺りは判りません。
ともかくそこまでは回復なされたのか、と私はうとうとと眠る仲純さまの側で、ほっと一息ついたものでした。
ですが、それが甘かったのです!」
衛門は大きく首を横に振った。
「私はあの時、どうしてその御文の相手が何方だったのか知ろうと思わなかったのかと、今でも後悔しております」
「心当たりは無いのか?」
まるで、と衛門は答えた。
「祐純さまもご存知でしょう? あの方は本当にどんな女性にもまるで関心が無い様で。では仲の御宜しい仲忠さまと、とも考えたのですが、どうやらそれも違う様で」
「ちょっと待て、仲忠に訊ねたのか?」
「はい。仲純さまが亡くなる直前に御文を受け取ってはいないか、と不躾だとは思いながらも、同じ屋根の下をいいことに、お訊ねしてしまいました。―――自分でも思い上がったことをしたと思っています。お許し下さい」
彼女はそう言って、手をついて頭を下げる。
「いやいい。それより、仲忠はそなたから問われているのだな?」
「はい」
「彼は何と?」
「そうだったらいいのにね、とあのいつもの飄々とした美しいお顔で」
らしいな、と祐純は苦笑する。
「しかし何故そこまでそなたが食い下がった? 今こうやって謝る位なら―――」
「私」
顔を上げる。
「仲純さまのお命を奪ったのは、そのお相手からの御文です」
衛門はきっぱりと断言する。
「何」
「あまりのことでしたので、自分の目が信じられなくて… 今までこのことは、誰にも喋っていません。ええ、仲忠さまにどうしてそんなことを、と逆に問われた時にも、決してその理由は言いませんでした」
「前置きはいい。何があったのか、それだけで…」
「仲純さまは、返しの御文を小さく丸めて飲み込まれたのです」
その時の衛門の表情を祐純は長く忘れられなかった。
地を這う様に低い声で彼女は続けた。
「私はその時、一体何を、と思いました。けどすぐに自分の目を疑いました。仲純さまは丸めた文をお口に入れ、そのまま白湯と共にお飲みになったのです」
「それは―――初耳だ」
「そうでしょう。私、未だ誰にも申し上げておりません。正直、自分が見たものすら、信じられない始末です。でもその時私すぐにいけない、と叫びました。すると仲純さまは咳き込まれました」
飲み込めなかったのか、それとも何処か別のところへ入ってしまったのか。
「お身体をよじられ、お涙をお流しになりながら咳こみ、ひぃひぃと喉から息をお漏らしになり… 私達が呆然とその様子を見ているうちに、ぴくりとも」
それ以上は言えない、とばかりに彼女は黙って首を大きく横に振った。
祐純は思わずぐっと目をつぶる。拳を握る。何て――― 何って最期だ!
「薬師がすぐに呼ばれました。黙って首を横に振りました。大宮さまが泣き叫ばれました。私達ももう、どうしていいのか判らず、ただもう泣くばかりで…」
その場に居なかったことがこれ程悔やまれることは無い、と彼は思う。
「薬師の言うことには、飲み込んだものが喉に引っかかり、そのせいで大きな咳を繰り返したのがいけなかったとのことです」
「それだけなのか? …咳をただ…」
「あの方の身体は、既にそれにすら、耐えられるものではなかったのです」
「―――馬鹿だ」
祐純はぽつん、とつぶやいた。
「馬鹿だよ。そんな死に方をするなんて。大馬鹿だ。…私などよりずっと東宮さまの覚えもめでたく、いつかは我が家を背負って立ってくれると――― そう思っていたのに…」
「全くでございます」
衛門は大きくうなづく。
「ですから私、あの最後の文の送り主がどうしても知りたかったのですが… ご遺体からそれを抜き取る訳にもいかず」
「それはならんだろう」
「はい。さすがにそれは堪えました。ただ、ある方にはつい訊ねてしまいました。仲純さまに最後の御文をお出ししたのは貴方様か、と」
「それは一体…」
祐純が聞くか聞かずか、という辺りで、衛門は鋭い声で言った。
「仲忠さまです」
*
その翌日、祐純の足は早々から内裏へと向かっていた。
行き先は後宮。飛香舎――― 藤壺である。
「まあ祐純さま、本日は如何致しましたか?」
「藤壺の御方さまは今日もご機嫌麗しく」
型どおりの挨拶をしてから、祐純はこの日の最初の目的を述べた。
「実は兵衛の君に用があるのだけど」
「それは少々祐純さまでも突然な。兵衛さんは只今、御方さまのお側に控えております」
「構わないさ」
「いいえこちらが構うのです。東宮さまがもうじきいらっしゃるということで、御方さまは御信任厚い兵衛さんにはいつも是非一緒に居て欲しい、と願っておいでです」
「ならいい。待たせてもらう」
そう言って祐純は簀子にどっかと腰を下ろした。
困ったわ、という表情で女房達は顔を見合わせる。しかし祐純はここは動く気は無かった。
前日の夜、彼は仲忠を再び訪問していた。彼はこの日は女一宮にちょうど夕餉を食べさせている所だった。
「…ですので少し」
廂の方で待たせてもらった。さすがに申しわけないと思ったのか、素早く円座が用意された。
まあ待つだけのことはあった、と祐純は母屋での二人の様子を御簾越しに眺めながら思った。
仲忠が作ったとおぼしい夕餉が、上座に座る女性の前に置かれている。
そして微かに可愛らしい声が。
「…わたくし唐菓子はふずくがいいと言ったのに。あの冷やしたものを甘くしたのがいいと言ったのに」
「それは明日のお楽しみ。今日はほら、さくべい…」
「明日なの…」
「ああそんな顔しないで…」
聞いている方が赤くなりそうな可愛らしい会話が繰り広げられていた。
「もういいわ」
「じゃあ残りは僕が貰うね」
「あなたいつもそうじゃないの。きちんとお食べなさいよ」
「僕はこれでいいんだよ」
「私が嫌なのよ! 誰か殿にきちんとしたお食事を」
「本当にいいんだってば」
「だから私が嫌なの。ほらちゃんと座って」
その時祐純の口からぷっ、と笑いがこぼれてしまった。
「…やだ、誰か居るの?」
「あ、申し訳ございません。…外で祐純さまが」
「え? 祐純さんが?」
「やだ、何してるの。ちゃんとお通しして頂戴」
「すぐ終わります!」
不躾だとは思ったが、ここで二人の話を耳にしていると笑いが止まりそうになかった。その状態でこの話題はどうだろう、と。
仲忠はのっそりと御簾の陰から出てきた。心なし顔が赤い。
「判りません。きっと騒ぎが広がったので、貴宮さまから様子を伺う様に言われたのかもしれません」
それは有り得る、と祐純も納得する。なかなか出発せず、邸内がざわついていたなら、彼女は気にしただろう。
「その間大殿さまと大宮さまは、物の怪の仕業だ、真言院の阿闍梨を呼ぶように、ともう皆てんやわんやで…」
「真言院の阿闍梨と言えば、確か今一番院のご寵愛著しい御坊であろう?」
「大殿さまは昔なじみのよしみで、と使いを飛ばして阿闍梨をお迎えなさいました。私はその場を離れる訳にはいきませんでしたから、そのままでしたが… でも、阿闍梨の御験は確かなものでした。仲純さまは到着と共にお目を覚まされたのですから!」
「ねえ、ちょっと気になるんだけど… 兵衛はそのまま居たのかい?」
「え?」
不意の問いかけに、衛門は目を見開いた。
幾度か視線を格子の方へと向けると、やがてこう言った。
「そう言えば、…いつの間にか居なくなってましたね。でもそれからすぐに大殿が今のうちだ、と大号令をお掛けになりましたから… 様子を見たらすぐに戻ったのではないですか?」
そうかもしれない。だがどうも祐純は気になった。
「ともかくその時は、仲純さまも何とか息を吹き返されたのです。ですが」
衛門はう、と目頭を押さえる。
「…正直、思い出すのも苦しいことですが」
そう前置きして。
「貴宮さま御入内の日からは、それでも少しは良くなられた様に見えました。
白湯など口にする様になりましたし、やがて薄い汁や柑子の様なものも口にする様になりました。
だから私達はほっとしていたのです。
あの日が一番悪かったのだ、とそう思おうとしたのです。
しかし。それは間違いでした。
そもそも何が原因か判らない病なのですから、安心などしてはいけなかったのです。
ですが私達は何処か気を抜いていたのでしょう。
仲純さまはある日、筆を持たせて欲しい、と仰いました。
どなたかの元へ御文を書かれる程の気力が戻ってきたのだ、と私は喜んで仲純さまのお側へと筆と硯と紙を持って行きました。
仲純さまはありがとう、と私に仰ると、しばらく下がっている様に、と命じました。
正直、筆をお持たせしたのは私ですが、その時も、何て重いんだ、と自嘲気味に仰ったものです。
紙は―――淡い色の薄様を一重ねお渡ししました。少しでも軽いものを、と思ったのですが、どうでしょう。今となっては判りません。陸奥紙の方が持ちやすかったのではないか、とか時々考えることもあります。
それから少し経って、お休みになっていらっしゃる様でしたので、使われた後の筆と硯、それに紙の残りを下げに参りました。
反故も特にありませんでしたので、誰かを呼んで、何方かへ届けさせたのでしょうか。その辺りは判りません。
ともかくそこまでは回復なされたのか、と私はうとうとと眠る仲純さまの側で、ほっと一息ついたものでした。
ですが、それが甘かったのです!」
衛門は大きく首を横に振った。
「私はあの時、どうしてその御文の相手が何方だったのか知ろうと思わなかったのかと、今でも後悔しております」
「心当たりは無いのか?」
まるで、と衛門は答えた。
「祐純さまもご存知でしょう? あの方は本当にどんな女性にもまるで関心が無い様で。では仲の御宜しい仲忠さまと、とも考えたのですが、どうやらそれも違う様で」
「ちょっと待て、仲忠に訊ねたのか?」
「はい。仲純さまが亡くなる直前に御文を受け取ってはいないか、と不躾だとは思いながらも、同じ屋根の下をいいことに、お訊ねしてしまいました。―――自分でも思い上がったことをしたと思っています。お許し下さい」
彼女はそう言って、手をついて頭を下げる。
「いやいい。それより、仲忠はそなたから問われているのだな?」
「はい」
「彼は何と?」
「そうだったらいいのにね、とあのいつもの飄々とした美しいお顔で」
らしいな、と祐純は苦笑する。
「しかし何故そこまでそなたが食い下がった? 今こうやって謝る位なら―――」
「私」
顔を上げる。
「仲純さまのお命を奪ったのは、そのお相手からの御文です」
衛門はきっぱりと断言する。
「何」
「あまりのことでしたので、自分の目が信じられなくて… 今までこのことは、誰にも喋っていません。ええ、仲忠さまにどうしてそんなことを、と逆に問われた時にも、決してその理由は言いませんでした」
「前置きはいい。何があったのか、それだけで…」
「仲純さまは、返しの御文を小さく丸めて飲み込まれたのです」
その時の衛門の表情を祐純は長く忘れられなかった。
地を這う様に低い声で彼女は続けた。
「私はその時、一体何を、と思いました。けどすぐに自分の目を疑いました。仲純さまは丸めた文をお口に入れ、そのまま白湯と共にお飲みになったのです」
「それは―――初耳だ」
「そうでしょう。私、未だ誰にも申し上げておりません。正直、自分が見たものすら、信じられない始末です。でもその時私すぐにいけない、と叫びました。すると仲純さまは咳き込まれました」
飲み込めなかったのか、それとも何処か別のところへ入ってしまったのか。
「お身体をよじられ、お涙をお流しになりながら咳こみ、ひぃひぃと喉から息をお漏らしになり… 私達が呆然とその様子を見ているうちに、ぴくりとも」
それ以上は言えない、とばかりに彼女は黙って首を大きく横に振った。
祐純は思わずぐっと目をつぶる。拳を握る。何て――― 何って最期だ!
「薬師がすぐに呼ばれました。黙って首を横に振りました。大宮さまが泣き叫ばれました。私達ももう、どうしていいのか判らず、ただもう泣くばかりで…」
その場に居なかったことがこれ程悔やまれることは無い、と彼は思う。
「薬師の言うことには、飲み込んだものが喉に引っかかり、そのせいで大きな咳を繰り返したのがいけなかったとのことです」
「それだけなのか? …咳をただ…」
「あの方の身体は、既にそれにすら、耐えられるものではなかったのです」
「―――馬鹿だ」
祐純はぽつん、とつぶやいた。
「馬鹿だよ。そんな死に方をするなんて。大馬鹿だ。…私などよりずっと東宮さまの覚えもめでたく、いつかは我が家を背負って立ってくれると――― そう思っていたのに…」
「全くでございます」
衛門は大きくうなづく。
「ですから私、あの最後の文の送り主がどうしても知りたかったのですが… ご遺体からそれを抜き取る訳にもいかず」
「それはならんだろう」
「はい。さすがにそれは堪えました。ただ、ある方にはつい訊ねてしまいました。仲純さまに最後の御文をお出ししたのは貴方様か、と」
「それは一体…」
祐純が聞くか聞かずか、という辺りで、衛門は鋭い声で言った。
「仲忠さまです」
*
その翌日、祐純の足は早々から内裏へと向かっていた。
行き先は後宮。飛香舎――― 藤壺である。
「まあ祐純さま、本日は如何致しましたか?」
「藤壺の御方さまは今日もご機嫌麗しく」
型どおりの挨拶をしてから、祐純はこの日の最初の目的を述べた。
「実は兵衛の君に用があるのだけど」
「それは少々祐純さまでも突然な。兵衛さんは只今、御方さまのお側に控えております」
「構わないさ」
「いいえこちらが構うのです。東宮さまがもうじきいらっしゃるということで、御方さまは御信任厚い兵衛さんにはいつも是非一緒に居て欲しい、と願っておいでです」
「ならいい。待たせてもらう」
そう言って祐純は簀子にどっかと腰を下ろした。
困ったわ、という表情で女房達は顔を見合わせる。しかし祐純はここは動く気は無かった。
前日の夜、彼は仲忠を再び訪問していた。彼はこの日は女一宮にちょうど夕餉を食べさせている所だった。
「…ですので少し」
廂の方で待たせてもらった。さすがに申しわけないと思ったのか、素早く円座が用意された。
まあ待つだけのことはあった、と祐純は母屋での二人の様子を御簾越しに眺めながら思った。
仲忠が作ったとおぼしい夕餉が、上座に座る女性の前に置かれている。
そして微かに可愛らしい声が。
「…わたくし唐菓子はふずくがいいと言ったのに。あの冷やしたものを甘くしたのがいいと言ったのに」
「それは明日のお楽しみ。今日はほら、さくべい…」
「明日なの…」
「ああそんな顔しないで…」
聞いている方が赤くなりそうな可愛らしい会話が繰り広げられていた。
「もういいわ」
「じゃあ残りは僕が貰うね」
「あなたいつもそうじゃないの。きちんとお食べなさいよ」
「僕はこれでいいんだよ」
「私が嫌なのよ! 誰か殿にきちんとしたお食事を」
「本当にいいんだってば」
「だから私が嫌なの。ほらちゃんと座って」
その時祐純の口からぷっ、と笑いがこぼれてしまった。
「…やだ、誰か居るの?」
「あ、申し訳ございません。…外で祐純さまが」
「え? 祐純さんが?」
「やだ、何してるの。ちゃんとお通しして頂戴」
「すぐ終わります!」
不躾だとは思ったが、ここで二人の話を耳にしていると笑いが止まりそうになかった。その状態でこの話題はどうだろう、と。
仲忠はのっそりと御簾の陰から出てきた。心なし顔が赤い。
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