14 / 14
第14話 二人の明日はたぶん明るい。
しおりを挟む
「よく進学できたわね」
歓迎会の後、多希子はハナを見つけて、その肩を思い切り掴んだ。驚きもせず、ハナはにやりと笑った。やっぱり、とつぶやくあたり、小憎らしい、と多希子は思った。
そしてそのまま、こっそりと寮の庭へと移動した。ちょうど満開の桜が、常夜灯に照らされてぼんやりと不思議な空間を作りだしていた。
「日比野さんに、出世払い、ってことで借りたんだ」
「出世払い」
「あたしが嫌だったのは、勉強のための資金を、向こうが丸ごと出してくれる、って言ったことだったんだ。それだと、その先が縛られるような気がして仕方なかったからさ」
「ああ」
そういうことか、と多希子は思う。あの頃、結局ハナは渋る気持ちの中身を話してはくれなかった。
「別に向こうはその気はなかったとしても、あたしの気持ちが承知しない。それを言ったら、日比野さんは、じゃあ、と言ってきた訳さあ」
なるほど、と多希子は感心する。
「で、あんたと会わなくなってから、切符売りも返上で、半年間勉強三昧。日比野さんとこにほとんど監禁状態でね。何せあたしは、『苦肉の策』も知らなかったくらいだからね」
「か、監禁?」
「あー、と」
照れくさそうにぽりぽり、とハナは頭をかく。何をこの「お嬢さん」が想像したのか、予想できたのだ。
「って言っても、向こうは結局、あたしのことを妹程度にしか考えていないからね。だから、強引にそんなことできたんだよ。どうせ出世払いだったら、同じだろ、ってさ。けどお屋敷ってのは嫌だね。広すぎる」
何じゃそれは、と多希子は思った。けど何かハナの様子は嬉しそうだった。照れ隠しなのだろう、と感じた。
「男爵からはお許しが出たの?」
「男爵の方は、もともと『才能には金を』というひとらしいから。何度か会わされたけど、剛胆なひとだね。息子とは大違いだ。ま、でも日比野さんがようやく帝大を卒業しようって気になっていたから、それであたしを住まわせて、ってのも平気だったのかもしれない」
「卒業、したの…… ってしたいからってできるもの?」
「あいつはね! しようと思えば余裕でできたの! ったく」
忌々しそうにハナは吐き出す。
「ただ出ても世間もつまらなさそうだから、ってんだからね。ったくもう」
しかしその口調はやっぱり楽しそうだった。
「何でも、何年か大陸のほうにある子会社へ出向してくるってことでね。その間あたしには寮に入ってみっちり勉強してこい、ってことだったけど」
「何か、いたれりつくせりじゃない」
「や、そこは出世払い、だよ。必ずあたしはあいつとあいつの家には利子つけて返してやる」
ハナはそう言って、拳を強く握りしめる。それでこそ彼女だ、と多希子は思う。
「けどそういうあんたもよく来れたね。まあ、来なかったら一生会わないつもりでいたけど」
「そこはここよ」
と頭を指さし、多希子はにやりと笑った。その笑みが自分のものと少し似ていたのに、ハナはぞく、とする。
「お父様達にはこう言ったのよ」
*
「婚約の話、お引き受けいたします」
おお、と両親はその時、露骨に嬉しそうな顔をした。
「ただ、やはり建築家の妻となるのでしたら、それなりに話ができる家庭であるほうが、円満ではないかと思うのですが」
「ふむ、それはそうかもしれないが」
宇田川に学校のことを聞いた日の夜、多希子は両親にあらためて話がある、と切り出した。
あくまで、冷静に。そしてちゃんと頭の中で組み立てて。
「ですから、N女子大学の家政学部に進学したいのです。そこには建築のことを少しは学ぶこともできるようですから」
嘘ではない。ただ、目的がやや違うだけで。
一ノ瀬氏は、そんな娘に訝しげな顔を向けた。
「そんな学問などわざわざ苦労して勉強しなくとも、お前は良き妻良き母になれると思うがな。女学校でもいい成績だった。それで充分だろう?」
父親は当然のように、そう言った。ここがふんばりどころだ、と多希子も思った。
しかしそれに反論したのは、夫人のほうだった。
「あなた、多希さんのいい様にさせてやってくれませんか」
「何だねお前まで」
一ノ瀬氏は、眉を強く寄せた。ここで妻が反論するとは思っていなかったのだ。
「悪いことでは無いと思いますのよ。ええ、お家のことでしたら、私もおいおいお教えしていきますから」
夫人の気持ちを推測することは多希子にとってそう難しくはなかった。
せっかくまとまりかけている縁談を壊したくはない。
それにさすがに母親を長くやっているだけあって、こういう所で反対されると、婚約そのものが駄目になってしまうかもしれなかった。彼女の知る多希子の性格からすれば、その可能性は大きかった。
夫人も何度か会ったあの青年が多希子の婿になるなら願ったりかなったりだった。それでまた別の、となると、それもまた厄介である。
いい縁談で、娘の気持ちも向いているのなら、数年また学校に行かせることくらい、大したことではない。そして、本当に必要なら、学校など辞めさせればいい、と思っていたのだ。
もっとも、そんな母親の気持ちまで、多希子が計算に入れていた、などと、この人のいい夫人は思わないのだが。
多希子は無論辞めさせられる可能性も考えていたし、その時にはまた闘わなくてはならないことは判っていた。しかしそれは後のことだ。とにかくは、入らないことにはお話にならない。
入るためには、母親は必ず味方になる、と踏んでいた。
両方を揃えて「お話が……」と切り出したのは、そのためだったのだ。
*
「きっとお母様はそう言って下さると思ったのよ。あの方は、私が嫁がないうちには、妹の由希子を結婚させる訳にはいかない、って思っているから。だから私の縁談が壊れてしまうことのほうを恐れると思ったわ」
くすくす、と笑う多希子。ハナは腕組をしながら目をむく。
「驚いた! 嘘一つつけそうにないあんたがねえ!」
「あら、私結構小賢しいのよ。知らなかった?」
何も言わずに、ハナは苦笑する。
「で、彼と結婚、するのかい?」
「さあぁ」
多希子は首をぐるりと回す。
「さあぁ、ってあんた」
「だって私、どうしてもそうしたかったんですもの。この学校に入って、建築を勉強したかったんですもの」
にっこりと多希子は笑う。その笑みにハナはぞくり、とする。
「別に全くの嘘でもないしね」
「じゃあ何。彼のことも、好きになってしまった訳かい?」
「あら前にも言わなかった? 宇田川さんのことは、結構好きよ。一緒に居ると楽しいし、会わないとつまらないし」
「そこまでは聞いていないよ。それって、充分『好き』じゃないか」
「でも結婚したい程かどうか、まだそれはわからないわ。まだ私達、距離置いてるし」
「そうか」
「それに結婚は生活ですもん。だから宇田川さんとはもう少しゆっくりおつきあいしてみようと思うし。それは彼も承知の上だし。その上で、どうしてもその気にならなかったら」
「ならなかったら?」
「その時は、その時よ! ねえ、その時にはあなた、私と一緒に暮らさない?」
呆れた、ハナはあははは、と笑った。その声につられて多希子も笑い出した。
あまりにもその声が大きかったので、寮舎の近くの窓から抗議が来たくらいだった。
二人はそれで、翌日から入学早々、寮内の有名人となってしまうのである。
しかしとりあえず、この日の二人には、そんなことはどうでも良かった。
やっと、足を踏み出せるのだ。
歓迎会の後、多希子はハナを見つけて、その肩を思い切り掴んだ。驚きもせず、ハナはにやりと笑った。やっぱり、とつぶやくあたり、小憎らしい、と多希子は思った。
そしてそのまま、こっそりと寮の庭へと移動した。ちょうど満開の桜が、常夜灯に照らされてぼんやりと不思議な空間を作りだしていた。
「日比野さんに、出世払い、ってことで借りたんだ」
「出世払い」
「あたしが嫌だったのは、勉強のための資金を、向こうが丸ごと出してくれる、って言ったことだったんだ。それだと、その先が縛られるような気がして仕方なかったからさ」
「ああ」
そういうことか、と多希子は思う。あの頃、結局ハナは渋る気持ちの中身を話してはくれなかった。
「別に向こうはその気はなかったとしても、あたしの気持ちが承知しない。それを言ったら、日比野さんは、じゃあ、と言ってきた訳さあ」
なるほど、と多希子は感心する。
「で、あんたと会わなくなってから、切符売りも返上で、半年間勉強三昧。日比野さんとこにほとんど監禁状態でね。何せあたしは、『苦肉の策』も知らなかったくらいだからね」
「か、監禁?」
「あー、と」
照れくさそうにぽりぽり、とハナは頭をかく。何をこの「お嬢さん」が想像したのか、予想できたのだ。
「って言っても、向こうは結局、あたしのことを妹程度にしか考えていないからね。だから、強引にそんなことできたんだよ。どうせ出世払いだったら、同じだろ、ってさ。けどお屋敷ってのは嫌だね。広すぎる」
何じゃそれは、と多希子は思った。けど何かハナの様子は嬉しそうだった。照れ隠しなのだろう、と感じた。
「男爵からはお許しが出たの?」
「男爵の方は、もともと『才能には金を』というひとらしいから。何度か会わされたけど、剛胆なひとだね。息子とは大違いだ。ま、でも日比野さんがようやく帝大を卒業しようって気になっていたから、それであたしを住まわせて、ってのも平気だったのかもしれない」
「卒業、したの…… ってしたいからってできるもの?」
「あいつはね! しようと思えば余裕でできたの! ったく」
忌々しそうにハナは吐き出す。
「ただ出ても世間もつまらなさそうだから、ってんだからね。ったくもう」
しかしその口調はやっぱり楽しそうだった。
「何でも、何年か大陸のほうにある子会社へ出向してくるってことでね。その間あたしには寮に入ってみっちり勉強してこい、ってことだったけど」
「何か、いたれりつくせりじゃない」
「や、そこは出世払い、だよ。必ずあたしはあいつとあいつの家には利子つけて返してやる」
ハナはそう言って、拳を強く握りしめる。それでこそ彼女だ、と多希子は思う。
「けどそういうあんたもよく来れたね。まあ、来なかったら一生会わないつもりでいたけど」
「そこはここよ」
と頭を指さし、多希子はにやりと笑った。その笑みが自分のものと少し似ていたのに、ハナはぞく、とする。
「お父様達にはこう言ったのよ」
*
「婚約の話、お引き受けいたします」
おお、と両親はその時、露骨に嬉しそうな顔をした。
「ただ、やはり建築家の妻となるのでしたら、それなりに話ができる家庭であるほうが、円満ではないかと思うのですが」
「ふむ、それはそうかもしれないが」
宇田川に学校のことを聞いた日の夜、多希子は両親にあらためて話がある、と切り出した。
あくまで、冷静に。そしてちゃんと頭の中で組み立てて。
「ですから、N女子大学の家政学部に進学したいのです。そこには建築のことを少しは学ぶこともできるようですから」
嘘ではない。ただ、目的がやや違うだけで。
一ノ瀬氏は、そんな娘に訝しげな顔を向けた。
「そんな学問などわざわざ苦労して勉強しなくとも、お前は良き妻良き母になれると思うがな。女学校でもいい成績だった。それで充分だろう?」
父親は当然のように、そう言った。ここがふんばりどころだ、と多希子も思った。
しかしそれに反論したのは、夫人のほうだった。
「あなた、多希さんのいい様にさせてやってくれませんか」
「何だねお前まで」
一ノ瀬氏は、眉を強く寄せた。ここで妻が反論するとは思っていなかったのだ。
「悪いことでは無いと思いますのよ。ええ、お家のことでしたら、私もおいおいお教えしていきますから」
夫人の気持ちを推測することは多希子にとってそう難しくはなかった。
せっかくまとまりかけている縁談を壊したくはない。
それにさすがに母親を長くやっているだけあって、こういう所で反対されると、婚約そのものが駄目になってしまうかもしれなかった。彼女の知る多希子の性格からすれば、その可能性は大きかった。
夫人も何度か会ったあの青年が多希子の婿になるなら願ったりかなったりだった。それでまた別の、となると、それもまた厄介である。
いい縁談で、娘の気持ちも向いているのなら、数年また学校に行かせることくらい、大したことではない。そして、本当に必要なら、学校など辞めさせればいい、と思っていたのだ。
もっとも、そんな母親の気持ちまで、多希子が計算に入れていた、などと、この人のいい夫人は思わないのだが。
多希子は無論辞めさせられる可能性も考えていたし、その時にはまた闘わなくてはならないことは判っていた。しかしそれは後のことだ。とにかくは、入らないことにはお話にならない。
入るためには、母親は必ず味方になる、と踏んでいた。
両方を揃えて「お話が……」と切り出したのは、そのためだったのだ。
*
「きっとお母様はそう言って下さると思ったのよ。あの方は、私が嫁がないうちには、妹の由希子を結婚させる訳にはいかない、って思っているから。だから私の縁談が壊れてしまうことのほうを恐れると思ったわ」
くすくす、と笑う多希子。ハナは腕組をしながら目をむく。
「驚いた! 嘘一つつけそうにないあんたがねえ!」
「あら、私結構小賢しいのよ。知らなかった?」
何も言わずに、ハナは苦笑する。
「で、彼と結婚、するのかい?」
「さあぁ」
多希子は首をぐるりと回す。
「さあぁ、ってあんた」
「だって私、どうしてもそうしたかったんですもの。この学校に入って、建築を勉強したかったんですもの」
にっこりと多希子は笑う。その笑みにハナはぞくり、とする。
「別に全くの嘘でもないしね」
「じゃあ何。彼のことも、好きになってしまった訳かい?」
「あら前にも言わなかった? 宇田川さんのことは、結構好きよ。一緒に居ると楽しいし、会わないとつまらないし」
「そこまでは聞いていないよ。それって、充分『好き』じゃないか」
「でも結婚したい程かどうか、まだそれはわからないわ。まだ私達、距離置いてるし」
「そうか」
「それに結婚は生活ですもん。だから宇田川さんとはもう少しゆっくりおつきあいしてみようと思うし。それは彼も承知の上だし。その上で、どうしてもその気にならなかったら」
「ならなかったら?」
「その時は、その時よ! ねえ、その時にはあなた、私と一緒に暮らさない?」
呆れた、ハナはあははは、と笑った。その声につられて多希子も笑い出した。
あまりにもその声が大きかったので、寮舎の近くの窓から抗議が来たくらいだった。
二人はそれで、翌日から入学早々、寮内の有名人となってしまうのである。
しかしとりあえず、この日の二人には、そんなことはどうでも良かった。
やっと、足を踏み出せるのだ。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
【架空戦記】蒲生の忠
糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。
明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。
その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。
両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。
一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。
だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。
かくなる上は、戦うより他に道はなし。
信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。
薙刀姫の純情 富田信高とその妻
もず りょう
歴史・時代
関ヶ原合戦を目前に控えた慶長五年(一六〇〇)八月、伊勢国安濃津城は西軍に包囲され、絶体絶命の状況に追い込まれていた。城主富田信高は「ほうけ者」と仇名されるほどに茫洋として、掴みどころのない若者。いくさの経験もほとんどない。はたして彼はこの窮地をどのようにして切り抜けるのか――。
華々しく活躍する女武者の伝説を主題とし、乱世に取り残された武将、取り残されまいと足掻く武将など多士済々な登場人物が織り成す一大戦国絵巻、ここに開幕!
生克五霊獣
鞍馬 榊音(くらま しおん)
歴史・時代
時は戦国時代。
人里離れた山奥に、忘れ去られた里があった。
闇に忍ぶその里の住人は、後に闇忍と呼ばれることになる。
忍と呼ばれるが、忍者に有らず。
不思議な術を使い、独自の文明を守り抜く里に災いが訪れる。
※現代風表現使用、和風ファンタジー。
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
明治仕舞屋顛末記
祐*
歴史・時代
大政奉還から十余年。年号が明治に変わってしばらく過ぎて、人々の移ろいとともに、動乱の傷跡まで忘れられようとしていた。
東京府と名を変えた江戸の片隅に、騒動を求めて動乱に留まる輩の吹き溜まり、寄場長屋が在る。
そこで、『仕舞屋』と呼ばれる裏稼業を営む一人の青年がいた。
彼の名は、手島隆二。またの名を、《鬼手》の隆二。
金払いさえ良ければ、鬼神のごとき強さで何にでも『仕舞』をつけてきた仕舞屋《鬼手》の元に舞い込んだ、やくざ者からの依頼。
破格の報酬に胸躍らせたのも束の間、調べを進めるにしたがって、その背景には旧時代の因縁が絡み合い、出会った志士《影虎》とともに、やがて《鬼手》は、己の過去に向き合いながら、新時代に生きる道を切り開いていく。
*明治初期、史実・実在した歴史上の人物を交えて描かれる 創 作 時代小説です
*登場する実在の人物、出来事などは、筆者の見解や解釈も交えており、フィクションとしてお楽しみください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/history.png?id=c54a38c2a36c3510c993)
綾衣
如月
歴史・時代
舞台は文政期の江戸。柏屋の若旦那の兵次郎は、退屈しのぎに太鼓持ちの助八を使って、江戸城に男根の絵を描くという、取り返しのつかない悪戯を行った。さらには退屈しのぎに手を出した、名代の綾衣という新造は、どうやらこの世のものではないようだ。やがて悪戯が露見しそうになって、戦々恐々とした日々を送る中、兵次郎は綾衣の幻想に悩まされることになる。岡本綺堂の「川越次郎兵衛」を題材にした作品です。
魔斬
夢酔藤山
歴史・時代
深淵なる江戸の闇には、怨霊や妖魔の類が巣食い、昼と対なす穢土があった。
その魔を斬り払う闇の稼業、魔斬。
坊主や神主の手に負えぬ退魔を金銭で請け負う江戸の元締は関東長吏頭・浅草弾左衛門。忌むべき身分を統べる弾左衛門が最後に頼るのが、武家で唯一の魔斬人・山田浅右衛門である。昼は罪人の首を斬り、夜は怨霊を斬る因果の男。
幕末。
深い闇の奥に、今日もあやかしを斬る男がいる。
2023年オール讀物中間発表止まりの作品。その先の連作を含めて、いよいよ御開帳。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる