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47 SSのヴォーカルと出会う①
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「え?」
思わず僕は問い返していた。
「SS。でも知らないよねー。まだやっとメンバーそろったばかりだし。でも、やっとそろったんだし、これからは何か、色々動けるから…… って俺の話ばかりだな」
ふむ、と彼は頬を人差し指でひっかいた。
「あんたのバンドは? 何やってるの?」
「あー、内緒」
僕ははぐらかした。
「何、教えてくれたっていいじゃないの」
「判る時には判るって」
ふうん、と彼は肩をすくめた。
「まだ高校生?」
「あ、そうやって言うってことは、あんた高校生じゃないの?」
「……ひどいなあ…… これでももう二十歳になったんだよ?」
「あ、ごめん。だけど、うーん」
まあいいけど。メイクも何もしない私服の時の僕は、だいたいそう見られるんだ。
歳より下。
高校生に見られることも時々ある。
そういえば、それを愚痴ったらナナさんあたりは逆にうらやましがってたな。
若く見られるなんて、って。そんなものだろうか。
「……あ、でも、今日ピアノ自由に弾いてて、いいの?」
僕は彼に問いかける。
「うん。ナナさん…… って知ってる?」
知ってる、と僕はうなづいた。
「彼女が、いいって言ったから」
「顔なじみなんだ?」
「まあね。と言うか、俺よっか、あいつの方が、結構前から知り合いだったから」
間違いないな、とその時僕は確信した。
「……もしかして、亡くなった人って、BELL-FIRSTのベースの人?」
まるでたった今気付いたかの様に、僕は彼に問いかける。
「やっぱり、判っちゃう?」
「うん」
「うん、そうだよねえ。だって去年のあの時は、結構ここでも噂になったし」
「うん、僕もそれは聞いた。その人に? ピアノは」
「去年は、意識して弾いてなかったから、って。だから、今年は、ちゃんと、あのひとの好きな曲を弾いてやりたい、って言ったんだ。……でも、いいことだよな」
「え?」
「そうやってさ、誰かの亡くなったことを、ちゃんと受け止められるようになった、っていうのは」
「……よく言ってる意味が、判らないけど」
「うん、これは俺の独り言。ごめん。ただ、奴もずっと沈んでたようなものだから、友達としてはね」
ふうん、と僕はうなづく。
「あんたは、ベルファは好きだったの?」
「俺?」
彼は自分自身を指さした。
僕はうなづいた。
「俺は、奴のように個人的つきあいはなかったし、音的には、ややずれてたから、何だけど」
「じゃあ、何か好きなバンドってある? ここに出てるので」
「あるよ」
「何?」
「RINGER」
心臓が止まるかと思った。
そして気付かれたか、と背中から一気に血が引く感触が。
僕はつとめて平静な声を立てる。
「へえ…… でもあそこって、結構よくヴォーカル変わるじゃない。前のヴォーカルの時から?」
「や、俺がライヴハウス通うようになったの、去年からだから…… ちょうど、今のヴォーカルが入ったあたりかなあ」
それでいて、僕に気付かないとは。
「何が好き? 曲? 音?」
「うーん」
彼は首をひねる。
「曲…… はまあまあ。だけど、音、には、うん、俺すごい、惚れてる」
「音、ねえ」
「何かね、あのバンドは、ギターがすげえ歌ってるんだ」
「ギターが、歌ってる?」
「何かね、確かにヴォーカルも面白い声だなあ、とか思うんだけど、俺には、伝わってこないの」
ぎく。
思わず僕は問い返していた。
「SS。でも知らないよねー。まだやっとメンバーそろったばかりだし。でも、やっとそろったんだし、これからは何か、色々動けるから…… って俺の話ばかりだな」
ふむ、と彼は頬を人差し指でひっかいた。
「あんたのバンドは? 何やってるの?」
「あー、内緒」
僕ははぐらかした。
「何、教えてくれたっていいじゃないの」
「判る時には判るって」
ふうん、と彼は肩をすくめた。
「まだ高校生?」
「あ、そうやって言うってことは、あんた高校生じゃないの?」
「……ひどいなあ…… これでももう二十歳になったんだよ?」
「あ、ごめん。だけど、うーん」
まあいいけど。メイクも何もしない私服の時の僕は、だいたいそう見られるんだ。
歳より下。
高校生に見られることも時々ある。
そういえば、それを愚痴ったらナナさんあたりは逆にうらやましがってたな。
若く見られるなんて、って。そんなものだろうか。
「……あ、でも、今日ピアノ自由に弾いてて、いいの?」
僕は彼に問いかける。
「うん。ナナさん…… って知ってる?」
知ってる、と僕はうなづいた。
「彼女が、いいって言ったから」
「顔なじみなんだ?」
「まあね。と言うか、俺よっか、あいつの方が、結構前から知り合いだったから」
間違いないな、とその時僕は確信した。
「……もしかして、亡くなった人って、BELL-FIRSTのベースの人?」
まるでたった今気付いたかの様に、僕は彼に問いかける。
「やっぱり、判っちゃう?」
「うん」
「うん、そうだよねえ。だって去年のあの時は、結構ここでも噂になったし」
「うん、僕もそれは聞いた。その人に? ピアノは」
「去年は、意識して弾いてなかったから、って。だから、今年は、ちゃんと、あのひとの好きな曲を弾いてやりたい、って言ったんだ。……でも、いいことだよな」
「え?」
「そうやってさ、誰かの亡くなったことを、ちゃんと受け止められるようになった、っていうのは」
「……よく言ってる意味が、判らないけど」
「うん、これは俺の独り言。ごめん。ただ、奴もずっと沈んでたようなものだから、友達としてはね」
ふうん、と僕はうなづく。
「あんたは、ベルファは好きだったの?」
「俺?」
彼は自分自身を指さした。
僕はうなづいた。
「俺は、奴のように個人的つきあいはなかったし、音的には、ややずれてたから、何だけど」
「じゃあ、何か好きなバンドってある? ここに出てるので」
「あるよ」
「何?」
「RINGER」
心臓が止まるかと思った。
そして気付かれたか、と背中から一気に血が引く感触が。
僕はつとめて平静な声を立てる。
「へえ…… でもあそこって、結構よくヴォーカル変わるじゃない。前のヴォーカルの時から?」
「や、俺がライヴハウス通うようになったの、去年からだから…… ちょうど、今のヴォーカルが入ったあたりかなあ」
それでいて、僕に気付かないとは。
「何が好き? 曲? 音?」
「うーん」
彼は首をひねる。
「曲…… はまあまあ。だけど、音、には、うん、俺すごい、惚れてる」
「音、ねえ」
「何かね、あのバンドは、ギターがすげえ歌ってるんだ」
「ギターが、歌ってる?」
「何かね、確かにヴォーカルも面白い声だなあ、とか思うんだけど、俺には、伝わってこないの」
ぎく。
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