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33 アハネとのいさかい
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翌々日、学校へ出向くと、既にアハネは最初の授業の教室に居た。
よ、と手を挙げて、奴はこっちへ来いよ、と僕に合図する。
「写真、できたの?」
「まあね。なかなかの出来だと思うけど?」
広いクリーム色のデスクの上に、奴は写真を広げる。
「わ、たくさんあるなあ」
「そらまあ。いいと思った表情がいつ出るか判らないからさあ、シャッターは数多く押さなくちゃ」
「へえ」
しかしこうやって見ると、確かに場所と時間を変えただけでずいぶんと違った写真ができてくるものだ。
「夜の場面」では、陰影が不思議な雰囲気になっている。
無論、そこにある光だけでは足りないので、アハネは小型の機材を学校から拝借してきたらしいが。
「うっわー」
僕はその中の一枚をつまみあげる。
ふふん、とアハネは笑みを浮かべる。
僕の写真。
今回は皆、ステージで着る様な衣装で決めてみた図だったので、僕もあの網あみの格好となっている。
けど、こんな顔してるのか。
今更ながら、僕は見てるうちに自分の頬が熱くなるのを覚えた。
「何赤くなってるんだよ」
目を丸くしてアハネは訊ねる。
「……だってさ、これって」
「だってお前、そういう顔してるじゃない」
「……そ…… うかな」
「すげえ色っぽいの。化粧で女は変わるっていうけど、男も変わるんだよなあ」
まあそれはそうだけど。
実際、僕のメイクも衣装もヨロイのようなものだから、そこで変わらなくては意味が無いのだけど。
「まあ後は、お前の仕事だろ? インデックスのレイアウトは」
「う…… ん」
「お前は俺と違って、CGも結構いけるからさ、高解像度でスキャンして加工してみるってのもありじゃない? ここの機材があるっていうのに、使わないのは損だぜ?」
「うーん…… そうかも」
確かにそうだろう、と思う。
ここの生徒だからこそ、できることもあるのだ。
カラーのレーザープリンターなんて、自前ではまず持てない。
「……でも何か、自分の写った写真を加工するって恥ずかしいなあ」
「あんだけ人前でがんがん歌ってて何言ってるの」
「まあそうだけどさ」
僕は肩をすくめて写真を元に戻す。
お前が持ってろよ、とアハネは戻しかけたそれを僕に押し戻す。
うん、と僕はそれを改めてかき集め、まとめてバッグに入れた。
「けどさ、お前何だかんだ言っても、結構向いてるよな。こういうの」
「……そうかなあ」
「そうじゃなくて、お前のよーな奴がどうして続くのさ」
「僕のような?」
ふとひっかかって、僕は眉を寄せた。
「……ってどういう意味?」
「正直言って、続くと思ってなかった」
率直な答え。
「お前、正気じゃ歌わないだろ?」
「人をビョーキのように……」
「でも実際そうじゃないか? だから、それができるならいいかな、と思ったけど……」
まだ何か言いたそうだ。
「何かアハネ、僕に言いたいこと、あるんじゃないの?」
「別に、無いよ」
「嘘つけ」
こいつはまっすぐ言葉を放つから、嘘をつけばすぐに判る。
ほらまたそうやって、目をそらす。
「言いたいことあるなら、言ってよ」
「聞きたいことなら、ある」
「うん」
「お前、あのケンショーって人と、どういう関係なんだ?」
え、と僕は思わず喉からそう音を出していた。
「……って」
「だから、そういう関係なのか、って聞いてるの」
「そういう関係って……」
アハネは目をそらす。ちょっと待て、よ。
「それが、気に掛かってた?」
つい語調が厳しくなる。
「それが、悪いの?」
「そう言ってるんじゃないよ」
「そう聞こえる!」
ばん、と僕はデスクを両手で叩いて立ち上がった。
「落ち着けよ、アトリ」
「落ち着かせないのはお前だろ! それとも、変だ妙だって言うの?」
「俺はまだ何も言ってないだろ!」
ああ駄目だ。
何を言われても、今の僕には、それが言い訳の用に聞こえる。
「話を聞けよ、アトリ」
「今は、聞けない」
僕はそのまま、荷物と写真を持って、教室を出てしまった。
よ、と手を挙げて、奴はこっちへ来いよ、と僕に合図する。
「写真、できたの?」
「まあね。なかなかの出来だと思うけど?」
広いクリーム色のデスクの上に、奴は写真を広げる。
「わ、たくさんあるなあ」
「そらまあ。いいと思った表情がいつ出るか判らないからさあ、シャッターは数多く押さなくちゃ」
「へえ」
しかしこうやって見ると、確かに場所と時間を変えただけでずいぶんと違った写真ができてくるものだ。
「夜の場面」では、陰影が不思議な雰囲気になっている。
無論、そこにある光だけでは足りないので、アハネは小型の機材を学校から拝借してきたらしいが。
「うっわー」
僕はその中の一枚をつまみあげる。
ふふん、とアハネは笑みを浮かべる。
僕の写真。
今回は皆、ステージで着る様な衣装で決めてみた図だったので、僕もあの網あみの格好となっている。
けど、こんな顔してるのか。
今更ながら、僕は見てるうちに自分の頬が熱くなるのを覚えた。
「何赤くなってるんだよ」
目を丸くしてアハネは訊ねる。
「……だってさ、これって」
「だってお前、そういう顔してるじゃない」
「……そ…… うかな」
「すげえ色っぽいの。化粧で女は変わるっていうけど、男も変わるんだよなあ」
まあそれはそうだけど。
実際、僕のメイクも衣装もヨロイのようなものだから、そこで変わらなくては意味が無いのだけど。
「まあ後は、お前の仕事だろ? インデックスのレイアウトは」
「う…… ん」
「お前は俺と違って、CGも結構いけるからさ、高解像度でスキャンして加工してみるってのもありじゃない? ここの機材があるっていうのに、使わないのは損だぜ?」
「うーん…… そうかも」
確かにそうだろう、と思う。
ここの生徒だからこそ、できることもあるのだ。
カラーのレーザープリンターなんて、自前ではまず持てない。
「……でも何か、自分の写った写真を加工するって恥ずかしいなあ」
「あんだけ人前でがんがん歌ってて何言ってるの」
「まあそうだけどさ」
僕は肩をすくめて写真を元に戻す。
お前が持ってろよ、とアハネは戻しかけたそれを僕に押し戻す。
うん、と僕はそれを改めてかき集め、まとめてバッグに入れた。
「けどさ、お前何だかんだ言っても、結構向いてるよな。こういうの」
「……そうかなあ」
「そうじゃなくて、お前のよーな奴がどうして続くのさ」
「僕のような?」
ふとひっかかって、僕は眉を寄せた。
「……ってどういう意味?」
「正直言って、続くと思ってなかった」
率直な答え。
「お前、正気じゃ歌わないだろ?」
「人をビョーキのように……」
「でも実際そうじゃないか? だから、それができるならいいかな、と思ったけど……」
まだ何か言いたそうだ。
「何かアハネ、僕に言いたいこと、あるんじゃないの?」
「別に、無いよ」
「嘘つけ」
こいつはまっすぐ言葉を放つから、嘘をつけばすぐに判る。
ほらまたそうやって、目をそらす。
「言いたいことあるなら、言ってよ」
「聞きたいことなら、ある」
「うん」
「お前、あのケンショーって人と、どういう関係なんだ?」
え、と僕は思わず喉からそう音を出していた。
「……って」
「だから、そういう関係なのか、って聞いてるの」
「そういう関係って……」
アハネは目をそらす。ちょっと待て、よ。
「それが、気に掛かってた?」
つい語調が厳しくなる。
「それが、悪いの?」
「そう言ってるんじゃないよ」
「そう聞こえる!」
ばん、と僕はデスクを両手で叩いて立ち上がった。
「落ち着けよ、アトリ」
「落ち着かせないのはお前だろ! それとも、変だ妙だって言うの?」
「俺はまだ何も言ってないだろ!」
ああ駄目だ。
何を言われても、今の僕には、それが言い訳の用に聞こえる。
「話を聞けよ、アトリ」
「今は、聞けない」
僕はそのまま、荷物と写真を持って、教室を出てしまった。
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