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8 金髪男との出会い
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足音が近づいてきたことに気付いたのか、その金髪の男はくわえ煙草のまま、振り向いた。
目を細めてる。
何かやーなかんじ。
そして組んだ腕のまま、首をかしげ、……明らかに、僕を見ている。
だけど金髪の奴に僕は知り合いはいない。
少なくとも、捜されるようなことをした覚えはない。
……無いと思うんだけど……
違うよね?
違うと…… 誰か言って欲しい。
だって、何か、何か、近づいてくるじゃないか!
細めた目のまま、男は僕の方に真っ直ぐ近づいてきた。
僕も、一緒にいたノゾエさんも、何か、その足取りに圧倒されて動くことも忘れていた。
「あとりめぐみ!」
「は、はい!」
反射的に返事をしてしまっていた。
「ああそうだ、やっぱりそうだ。その声だ!」
「え?」
「やっと見つけた!」
えええええええええええええっ!!
内心絶叫しながら僕は硬直した。
何が起こってるのか、正直言って、信じられなかった。
だって、そうだろう。
何だって、初対面の金髪の男に、抱きつかれなくてはならないんだ!
僕は硬直しながらも、男の肩越しに見えるノゾエさんに目で助けを訴えた。
先輩…… いや同級生…… いや年上……
そんなことはどうだっていい!
とにかく年上だろうが女性に助けを求めなくてはならないくらい、僕はどうしたものなのかさっぱり判らなくなっていた。
しかもこの男、何だってこんな、力が強いんだ!
身動き一つとれない……
ノゾエさんノゾエさん。
僕はひたすら目で訴える。
そしてやっと彼女ははっとして、男の肩を、その力のある手でぐっと掴んだ。
「ちょっとあんた、何なのよいきなり!」
「痛! 何つー力だ!」
「その子を離してよ! 何あんた、いきなり、この学校の生徒? 違うわよね! あたし見覚えないよ。こんな老けた新入生はいないでしょ!」
「老けてて悪かったなあ。ああ確かに俺ここの生徒じゃねーよ。だけどしょうがねーじゃないか。捜してた奴が、ここの生徒なんだから」
だからって。
……頼むから、手を、手を解いてくれ。
顔を上げて、彼女の方を向いてはいるというのに、何だって、いつまでもその手は僕の背中に巻き付いてるんだ!
「だからあんた、その説明をしてよ! 捜してる捜してるって……アトリ君、怖がってるじゃないの!」
「へ?」
金髪男は、驚いた様に、僕の方を改めて見る。
そしてじっと、今度は目を大きく広げた。
あ…… れ?
けっこう整った顔だ。
「……あ、すまん」
あっさりと男は手を離した。
そんなに怖がっているように…… 見えたんだろう…… な。
あははは、と乾いた笑い声を立てながら、僕はその場にずるずるとしゃがみ込んだ。
「大丈夫?」
ノゾエさんは慌てて僕のそばにしゃがみ込む。
そしてきっ、と金髪男を見上げて強くにらみつけた。
「ほらちゃんと説明なさいよ! 可哀想に……」
いやそんな、怖かった訳ではないんだけど。
ただずいぶんと突然のことに、驚いたんだ。
すごく。
目を細めてる。
何かやーなかんじ。
そして組んだ腕のまま、首をかしげ、……明らかに、僕を見ている。
だけど金髪の奴に僕は知り合いはいない。
少なくとも、捜されるようなことをした覚えはない。
……無いと思うんだけど……
違うよね?
違うと…… 誰か言って欲しい。
だって、何か、何か、近づいてくるじゃないか!
細めた目のまま、男は僕の方に真っ直ぐ近づいてきた。
僕も、一緒にいたノゾエさんも、何か、その足取りに圧倒されて動くことも忘れていた。
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「は、はい!」
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「ああそうだ、やっぱりそうだ。その声だ!」
「え?」
「やっと見つけた!」
えええええええええええええっ!!
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だって、そうだろう。
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僕は硬直しながらも、男の肩越しに見えるノゾエさんに目で助けを訴えた。
先輩…… いや同級生…… いや年上……
そんなことはどうだっていい!
とにかく年上だろうが女性に助けを求めなくてはならないくらい、僕はどうしたものなのかさっぱり判らなくなっていた。
しかもこの男、何だってこんな、力が強いんだ!
身動き一つとれない……
ノゾエさんノゾエさん。
僕はひたすら目で訴える。
そしてやっと彼女ははっとして、男の肩を、その力のある手でぐっと掴んだ。
「ちょっとあんた、何なのよいきなり!」
「痛! 何つー力だ!」
「その子を離してよ! 何あんた、いきなり、この学校の生徒? 違うわよね! あたし見覚えないよ。こんな老けた新入生はいないでしょ!」
「老けてて悪かったなあ。ああ確かに俺ここの生徒じゃねーよ。だけどしょうがねーじゃないか。捜してた奴が、ここの生徒なんだから」
だからって。
……頼むから、手を、手を解いてくれ。
顔を上げて、彼女の方を向いてはいるというのに、何だって、いつまでもその手は僕の背中に巻き付いてるんだ!
「だからあんた、その説明をしてよ! 捜してる捜してるって……アトリ君、怖がってるじゃないの!」
「へ?」
金髪男は、驚いた様に、僕の方を改めて見る。
そしてじっと、今度は目を大きく広げた。
あ…… れ?
けっこう整った顔だ。
「……あ、すまん」
あっさりと男は手を離した。
そんなに怖がっているように…… 見えたんだろう…… な。
あははは、と乾いた笑い声を立てながら、僕はその場にずるずるとしゃがみ込んだ。
「大丈夫?」
ノゾエさんは慌てて僕のそばにしゃがみ込む。
そしてきっ、と金髪男を見上げて強くにらみつけた。
「ほらちゃんと説明なさいよ! 可哀想に……」
いやそんな、怖かった訳ではないんだけど。
ただずいぶんと突然のことに、驚いたんだ。
すごく。
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