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4.並行する話①家光編の神原さと
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そういえばあちこちでずっと神崎と思い込んでいたけど神原だったわ(笑)。
あかんなー。
さて。
家光編一つとっても、その場の人々の過去だの何だのが描かれているわけだ。
たとえば原・家光。
実の母に疎まれ、春日局は口うるさい、衆道は駄目と言われ鬱屈している彼が千恵の母である女を犯して孕ませた下り。
これはこれで彼の背景が出ている訳で。
まあこれに突っ込むと言えば、「この時の御台所」である史実上の五摂家の姫は一体どうなったか? はあるんだけどな。
春日局のエピはこれまた実にしんどい。戦国の世でどういう育ちをしてきたのか、婚家でどういう扱いを受けてきたのか、というのが淡々と、だが鋭く描かれてる。
とまあ、こういう「関係者」のエピが描かれることは普通なんだが。
「神原さと」は家光が女の格好もする様になった三巻の真ん中から登場する女性なんだな。
後に家光が視察できる範囲に居ることから、江戸近郊の小作ではない農家の娘として登場する。
「神原の家」と名字もしくは屋号があり、周囲から「さと様」と言われてるあたり、人を使う方の農家である。
その神原の家の長女である彼女は農村において男が激減する中、どう女達がやっていけばいいのか、という一つのモデルケースとして存在しているのだ。
最初はまず母親の手伝いをしつつ、男が居なくなった状態の田働きに対する提案をする。
健康な女に田畑で働いてもらうため、子供を(おそらくは広いであろう)自宅に集め、働けない老人や身体の弱い者にその面倒をみてもらう、と。
ある程度それで回っていたのだろう。
彼女には好き合っている男・三平太が居る。
「この時点では」周囲もこの二人がいつか一緒になるだろうと思っているのだ。
だがその後寛永十九年の大飢饉が来ると、小作の女達が次々に「江戸に」去って行くのを彼女は止めることができない。着の身着のままで何とか歩いて行ける範囲に江戸は存在しているのだろう。
家光はその様子を視察に来た時に見ている。神原さとと家光が同じ場面に居るのはここだけだ。
次が家光が将軍の座に女の姿で就いたあたり。
この時さとは三平太と共に、新しい農具を共に見ている。
そして「女公方様は縁起がいい」と言い合って笑っている。
だがこの二人が結ばれることはない。
次に彼女が描写されるのは家光が亡くなり、家綱の治世に代わる時あたり。
この稲への虫害のために油を撒く話し合いの時点では、既にその中に若い男は居ない。
女達は「家長の代わりとして来ている」と年配の男に堂々と言い放っている。
神原さとはその中で費用を出す際に最初に発言している。
彼女が家の代表として話し合いに出て、弟は周囲の家の娘達に子供を作るための種付けに出かけていく。
そしてこの時点での彼女は「独り占めできない」と三平太とは別れたことが語られる。
そして三十二歳で彼女は血を吐いて亡くなる。
この時妹のかえが嘆きつつこう言うのだ。
「あたしは死なないよ 生きて生きて まだまだ子供を産んで たくさん働いて でも絶対に生きてやる! 生きてこの神原の家を守っていくからね!」
さてここで興味深いのは、さととかえの髪型の違いなのだ。
さとはずっと髪を下ろしたまま、男と連れ添いもせず子供も作らず(一対一の男女関係から抜け出ることがですぎ)亡くなる。
そしてこの時のかえは、というと女髷を結い、(相手が誰ということもなく)子供を沢山産むと言い放っている。
さとは前時代を引きずって亡くなり、かえは新時代に従って生き抜こうとしているという対比の図になっているのだ。
もともとこの家光編では「髪型」の移り変わりが綺麗に描かれているのが実に興味深い。
まず家光の母。及びその時点の一般女性。これは垂髪。
そして農民の女達の「玉結び」
家光の「女装時」は一つに結んだ「下げ髪」。
同時期の髷が出てくるのが、有功に女を覚えろとばかりに連れてこられた遊女達。
ポーラ文化研究所の説明がこの辺りは楽しい。
https://www.cosmetic-culture.po-holdings.co.jp/culture/nihongami/001.html
遊女達のそれは「唐輪髷」の類いじゃないかと思われ。
頭の上でぴょんと結い上げた形は当時の最先端だったんだろう。
お楽の方になる捨蔵が付き合っていた女もその形。
そこから兵庫髷、島田髷、勝山髷、笄髷と言う基本四つの髪型が生まれたということ。
そんで家光が将軍として立った時のは勝山髷じゃないか、と思うんですな。
そんでそれを女大名もするようになった、と。
さてそうやって髷を結うようになっていき、農村でも結ったり結わなかったり、となっていった訳だけど。
さとは最終的に「玉結び」で死んでいき、かえは「兵庫」の様に立ててはいないから既に「島田」だったんだと思う。
彼女達は過渡期と新時代を体現する庶民の姿として、非常に興味深いものなのだがな。
あかんなー。
さて。
家光編一つとっても、その場の人々の過去だの何だのが描かれているわけだ。
たとえば原・家光。
実の母に疎まれ、春日局は口うるさい、衆道は駄目と言われ鬱屈している彼が千恵の母である女を犯して孕ませた下り。
これはこれで彼の背景が出ている訳で。
まあこれに突っ込むと言えば、「この時の御台所」である史実上の五摂家の姫は一体どうなったか? はあるんだけどな。
春日局のエピはこれまた実にしんどい。戦国の世でどういう育ちをしてきたのか、婚家でどういう扱いを受けてきたのか、というのが淡々と、だが鋭く描かれてる。
とまあ、こういう「関係者」のエピが描かれることは普通なんだが。
「神原さと」は家光が女の格好もする様になった三巻の真ん中から登場する女性なんだな。
後に家光が視察できる範囲に居ることから、江戸近郊の小作ではない農家の娘として登場する。
「神原の家」と名字もしくは屋号があり、周囲から「さと様」と言われてるあたり、人を使う方の農家である。
その神原の家の長女である彼女は農村において男が激減する中、どう女達がやっていけばいいのか、という一つのモデルケースとして存在しているのだ。
最初はまず母親の手伝いをしつつ、男が居なくなった状態の田働きに対する提案をする。
健康な女に田畑で働いてもらうため、子供を(おそらくは広いであろう)自宅に集め、働けない老人や身体の弱い者にその面倒をみてもらう、と。
ある程度それで回っていたのだろう。
彼女には好き合っている男・三平太が居る。
「この時点では」周囲もこの二人がいつか一緒になるだろうと思っているのだ。
だがその後寛永十九年の大飢饉が来ると、小作の女達が次々に「江戸に」去って行くのを彼女は止めることができない。着の身着のままで何とか歩いて行ける範囲に江戸は存在しているのだろう。
家光はその様子を視察に来た時に見ている。神原さとと家光が同じ場面に居るのはここだけだ。
次が家光が将軍の座に女の姿で就いたあたり。
この時さとは三平太と共に、新しい農具を共に見ている。
そして「女公方様は縁起がいい」と言い合って笑っている。
だがこの二人が結ばれることはない。
次に彼女が描写されるのは家光が亡くなり、家綱の治世に代わる時あたり。
この稲への虫害のために油を撒く話し合いの時点では、既にその中に若い男は居ない。
女達は「家長の代わりとして来ている」と年配の男に堂々と言い放っている。
神原さとはその中で費用を出す際に最初に発言している。
彼女が家の代表として話し合いに出て、弟は周囲の家の娘達に子供を作るための種付けに出かけていく。
そしてこの時点での彼女は「独り占めできない」と三平太とは別れたことが語られる。
そして三十二歳で彼女は血を吐いて亡くなる。
この時妹のかえが嘆きつつこう言うのだ。
「あたしは死なないよ 生きて生きて まだまだ子供を産んで たくさん働いて でも絶対に生きてやる! 生きてこの神原の家を守っていくからね!」
さてここで興味深いのは、さととかえの髪型の違いなのだ。
さとはずっと髪を下ろしたまま、男と連れ添いもせず子供も作らず(一対一の男女関係から抜け出ることがですぎ)亡くなる。
そしてこの時のかえは、というと女髷を結い、(相手が誰ということもなく)子供を沢山産むと言い放っている。
さとは前時代を引きずって亡くなり、かえは新時代に従って生き抜こうとしているという対比の図になっているのだ。
もともとこの家光編では「髪型」の移り変わりが綺麗に描かれているのが実に興味深い。
まず家光の母。及びその時点の一般女性。これは垂髪。
そして農民の女達の「玉結び」
家光の「女装時」は一つに結んだ「下げ髪」。
同時期の髷が出てくるのが、有功に女を覚えろとばかりに連れてこられた遊女達。
ポーラ文化研究所の説明がこの辺りは楽しい。
https://www.cosmetic-culture.po-holdings.co.jp/culture/nihongami/001.html
遊女達のそれは「唐輪髷」の類いじゃないかと思われ。
頭の上でぴょんと結い上げた形は当時の最先端だったんだろう。
お楽の方になる捨蔵が付き合っていた女もその形。
そこから兵庫髷、島田髷、勝山髷、笄髷と言う基本四つの髪型が生まれたということ。
そんで家光が将軍として立った時のは勝山髷じゃないか、と思うんですな。
そんでそれを女大名もするようになった、と。
さてそうやって髷を結うようになっていき、農村でも結ったり結わなかったり、となっていった訳だけど。
さとは最終的に「玉結び」で死んでいき、かえは「兵庫」の様に立ててはいないから既に「島田」だったんだと思う。
彼女達は過渡期と新時代を体現する庶民の姿として、非常に興味深いものなのだがな。
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