〈完結〉夫を亡くした男爵夫人、実家のたかり根性の貧乏伯爵家に復讐する

江戸川ばた散歩

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男爵未亡人は語る(4)

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 ……あら、どうしたの? カップが揺れているわ。
 そう、情報部。
 貴方の旦那様も確か、そちらに属していたことがあったんじゃなくて?
 今は大使だけど、必ずしもそちらとの関係を切ったという訳ではないと思うのね。
 どうかしら。果たして北の帝国の過激派との関係を大使は掴んでいたのかしら。
 さてここで幾つかの仮定をしてみましょうか。
 貴女の旦那様が、それを知らなかった場合。
 これは単純ね。貴女はただ単純に急病の知らせを受けてこうやって走っている。
 だけどそれを知っていた場合。
 本国から遠く遠く離れて、そう簡単に連絡が取れない――
 電信はあるけど、それは深くも長くも伝えることはできない。
 そしてなおかつ、伝えてまずいことは伝えられない。
 電信は手紙と違って、中身そのものが見られることが前提なのだから。
 無論、知っていたからと言って、何かが起こるとも限らない。
 でも起こっているのかもしれない。
 何せ貴女の旦那様の任地は、場所は、向こうの過激派の本拠に近い場所。
 さてそこで、エドワーズ大使は今どうしているのか? よね。
 私ね、本当に急病、ではないとにらんでいるのよ。
 どうしてって? 
 だって、貴女が私の話をじっっくり聞いて興味まで持ってくれているから。
 だって、本当に夫が、特に貴女の話を聞く限りでは、貴女の夫は貴女にとって単に夫であるというだけでなく、大恩人でもあるでしょう? 
 自分自身を囚われの境遇から救い出してくれた。
 もしそんなひとが、本当の急病、特に向こうの地でかかってわざわざ連絡してくるならば、それこそ死病よね。
 移動の時点で死んでいてもおかしくはない様な。
 しかも、子供達は置いてたった一人。
 大使夫人がたった一人!
 そして夫の病状に対して震えることもなく、私の話を聞いてお茶をのんびりとすすっている。
 私がそう仕向けたとしても、本当にそうなら、何処か上の空になってもおかしくはない?
 だから、急病が嘘ではないかと思ったの。
 で、そこから逆に考えられないかと思ってみたの。
 大使が過激派のことを知ってしまった。
 そして彼等が大使を脅している。
 命も含めてね。
 その上で、貴女を動かしたかったのではないかしら?
 何故貴女って?
 だって、貴女の話は嘘は語っていないでしょう?
 東の国から売られてきた娘が、砂漠の国で仕事を覚えさせられる。

 貴女、暗殺者なんでしょう?。
 私を殺すための。
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