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三日目の夜の個室にて
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「ただ、その暴動が結果を求めてなのか、その行動そのものが目的なのか、そこで変わってきます」
「と言うと?」
アイリーンはぐっ、と身体を乗り出してきた。
「表の目的と真の目的は違うという場合です」
「そうね。その意味では、宿舎が襲われた時の表の目的は、アリッサ達、上層部の官舎は自分達と何って違うんだ! 許せない! というアレね。それで襲って火を点けるなんてどうかしているとは思うけど。でもその裏、真の目的は、要するに義妹達を殺してしまうことだったのよ。実に単純な話!」
「え、それじゃ、そのために他の人々も」
「そう。周囲の宿舎、そこに住んでいる中間管理職な社員、そこの家族達は、そのとばっちりを受けた訳。そして不思議なことに、死者はアリッサとその子供達、そしてその子供達の友人、アリッサの友人…… よく見ると、選んでいるのよ」
「襲った側が、弱い者を選んだ、というのは?」
「彼等のお題目からしたら、女子供を殺すというのは、違っていると思わない? 弱者救済ができていない! というスローガンを掲げるのだったら、女子供を選んで殺すのはおかしいでしょう。要するに、はじめっからアリッサとその子供を消したかったということなのよ」
「旦那さんは」
「彼もケガや火傷は負ったけど、命は取り留めたわ。だけど家族全てを失ってしまったことで、彼の気持ちが壊れてしまったのよ。ケガや火傷が治っても、自分から動く気になれない、という。当然よね。そもそもアリッサの様なタイプを愛した男が、そうそう亡くなったからって、他の女性に心変わりするとかできる訳がない。加えて子供よ。彼言っていたわ。自分みたいな研究馬鹿が結婚して子供を授かるなんて、学生時代には考えたこともなかったって。だからこそ人一倍子煩悩だったのよ。それが皆一気に。で、彼はどうしたと思う?
「……復讐?」
「さすがすぐその言葉が浮かぶのね」
ぱちぱち、と小さく指の先だけで彼女は拍手をする。
「無論犯人は捕まったわ。ただ、彼は研究者であり、経営者とか軍人とか政治家のタイプではなかったから、復讐の相手を単純に実行犯にだけ置いてしまったの」
「行ったんですか」
ええ、とアイリーンはうなづいた。
「犯人集団が裁判のために護送される、という記事が新聞にすっぱ抜かれたのね。全く、そういうことはこっそりやらないとまずいというのに。義弟はまだ本調子では無い身体で、研究室でニトログリセリンを合成したの。彼にとっては造作も無いことだったわ」
「でも持ち運びが」
「酒瓶に綿を詰めたものに染みこませてルンペンの様な格好でそれを持ったままふらふらと近づいたって話。護送馬車が来たところで、まず車輪にそれを一つ投げ、足止めしたところで扉を壊して開け、懐に入れた大瓶を中に叩きつけたのよ」
「……それじゃ」
「彼は元々生きて行く希望が無かったから。酷い爆発で、遺体がどれがどれだか状態だったと聞くわ」
淡々と話す辺りに、重みを感じた。
「と言うと?」
アイリーンはぐっ、と身体を乗り出してきた。
「表の目的と真の目的は違うという場合です」
「そうね。その意味では、宿舎が襲われた時の表の目的は、アリッサ達、上層部の官舎は自分達と何って違うんだ! 許せない! というアレね。それで襲って火を点けるなんてどうかしているとは思うけど。でもその裏、真の目的は、要するに義妹達を殺してしまうことだったのよ。実に単純な話!」
「え、それじゃ、そのために他の人々も」
「そう。周囲の宿舎、そこに住んでいる中間管理職な社員、そこの家族達は、そのとばっちりを受けた訳。そして不思議なことに、死者はアリッサとその子供達、そしてその子供達の友人、アリッサの友人…… よく見ると、選んでいるのよ」
「襲った側が、弱い者を選んだ、というのは?」
「彼等のお題目からしたら、女子供を殺すというのは、違っていると思わない? 弱者救済ができていない! というスローガンを掲げるのだったら、女子供を選んで殺すのはおかしいでしょう。要するに、はじめっからアリッサとその子供を消したかったということなのよ」
「旦那さんは」
「彼もケガや火傷は負ったけど、命は取り留めたわ。だけど家族全てを失ってしまったことで、彼の気持ちが壊れてしまったのよ。ケガや火傷が治っても、自分から動く気になれない、という。当然よね。そもそもアリッサの様なタイプを愛した男が、そうそう亡くなったからって、他の女性に心変わりするとかできる訳がない。加えて子供よ。彼言っていたわ。自分みたいな研究馬鹿が結婚して子供を授かるなんて、学生時代には考えたこともなかったって。だからこそ人一倍子煩悩だったのよ。それが皆一気に。で、彼はどうしたと思う?
「……復讐?」
「さすがすぐその言葉が浮かぶのね」
ぱちぱち、と小さく指の先だけで彼女は拍手をする。
「無論犯人は捕まったわ。ただ、彼は研究者であり、経営者とか軍人とか政治家のタイプではなかったから、復讐の相手を単純に実行犯にだけ置いてしまったの」
「行ったんですか」
ええ、とアイリーンはうなづいた。
「犯人集団が裁判のために護送される、という記事が新聞にすっぱ抜かれたのね。全く、そういうことはこっそりやらないとまずいというのに。義弟はまだ本調子では無い身体で、研究室でニトログリセリンを合成したの。彼にとっては造作も無いことだったわ」
「でも持ち運びが」
「酒瓶に綿を詰めたものに染みこませてルンペンの様な格好でそれを持ったままふらふらと近づいたって話。護送馬車が来たところで、まず車輪にそれを一つ投げ、足止めしたところで扉を壊して開け、懐に入れた大瓶を中に叩きつけたのよ」
「……それじゃ」
「彼は元々生きて行く希望が無かったから。酷い爆発で、遺体がどれがどれだか状態だったと聞くわ」
淡々と話す辺りに、重みを感じた。
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