〈完結〉夫を亡くした男爵夫人、実家のたかり根性の貧乏伯爵家に復讐する

江戸川ばた散歩

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男爵未亡人は語る(3)

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 そんな訳で、私はアリッサに教える以上に、自分も勉強することになったのね。
 ただ私には化学は向かないと思ったわ。
 そこで兄君に相談してみたの。
 共に勉強することは妹のためになる! と力説してくださったからね。
 そこで彼は私の好みとか適性を考えて、合った方面を紹介してくれたの。
 時には、自分の母校へ案内してくれて、様々な学科を見せてくれたりね。
 結果、私は彼が一番熱を込めて話す経営学に興味を持ったわ。
 ただ、後になって思えば、経営学に、というよりは、彼の熱を持った話しぶりで興味を持ったのね。
 つまり彼が説明したからということで……
 私達は、そうやってあちこちの学校を回ることでだんだん距離が近くなっていったの。
 本当に家庭教師の分際でこれでいいのか、と思ったけど。
 何しろ彼のお母様が後押ししてくれたのね。それにアリッサも。
 で、私は経営学、アリッサは化学の聴講生として、何とか合格したのよ。
 ただ期間は私の方が短かったのね。
 化学の方は、聴講だけでなく、研究室への出入りをアリッサは認められる様になったから。
 私は二年通って、彼の見ている世界がどんなものなのか、その一部がようやく判ったような気がしたわ。
 そしてそれがとても嬉しかったの。
 彼が担当している事業の見通しについての話を一緒にできる。
 それがもの凄く楽しくて。
 そうこうしているうちに、彼が私に求婚してきたわ。
 私も彼のことはとても好きだった。
 だから嬉しかった。
 ただ、所詮家庭教師が…… という気持ちが、私をなかなか踏み切らせなかったのね。
 ところがあちこちから援護射撃が来たのよ。

 一つは彼のお母様が。
 当初から私のことを気に入って下さったあの方は、ずっとそうなればいいと思っていたんですって。
 息子があまりにも女性に縁が無いのを気にしていた、というのも後で聞いたけど……

 もう一つが、……私の実家だったの。
 これは援護、というより命令に近かったわ。
 そう、ぜひ結婚しろ、そしてうちへの送金をもっと増やせ、使える金が増えるんだろう!
 という。
 私は実家のこの態度で、逆に結婚を躊躇したわ。
 そこで頼りになったのが当時の旦那様、義父になる方だったのね。
 私の心配ごとを聞いて下さって。もともと奥様から私が不当に実家から金を取られているということを聞いていたの。
 だから、一度伯爵家から抜けて、別の家の養女ということになればどうか、と提案してくれたの。
 それだけでなく、うちの実家が何か言ってきたところで屋台骨が揺らぐものではない。そもそもそちらから領地を買い受けたのはうちなのだから、と。
 不安は多少残ったけど、私は結婚を了承したの。
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