17 / 47
三日目の夕方の停車駅にて
1
しおりを挟む
これで停車駅は四つ目だ。
昨日は昼頃、乗客の入れ替わりが激しい北の大国の首都だった。ここからがこの列車の本腰の入るところだ。
北の大国に下りる人々も多ければ、これから東に向かうべく乗り込む人々も多い。
特に、四等には大量の客が乗り込んできた。
「詰め込んでいますね」
窓から身を乗り出して私達はその様子を眺めていた。
確かにアイリーンの言った通り、ホームに下りて何やかんややっていると、人混みに押されてしまいそうだった。
二等客車にも多少の入れ替わりがあった。
それと同時に、掃除人がざっと入ってきて、シーツを交換したり、床を掃いたりしていた。
三等ならそれで終わりだ。
二等ではテーブルが出るので、それを拭いたり、ポットの回収もある。
三等の場合は、椅子とベッドの区別がない。
乗客はずっとベッドに座っているということになる。しかも上下段。
私達は二等で最高二人までの個室なのだが、三等は上下左右で四人。一室の広さは同じだ。
「だけどこの列車はまだ良い方なのよ。鉄道会社によっては、三等一室に六人詰め込んだりもする様だし」
アイリーンはそう言った。
「詳しいですね」
「まあね」
どう詳しいのか、と聞こうと思ったが。
「ジャム入りピローグ~ クッキーは如何ですか~」
と少年の高い声に腕を大きく振りだしてしまったので、それ以上は聞けなかった。
「結構大きいわね」
ジャム入りのピローグを二つと、クッキーを一袋買うと、早速お茶を、と彼女は自分の荷を開く。
「揚げ菓子に合うお茶は、と」
「色んなお茶を持ってきているんですね」
「ええ。うちでは色んなお茶も扱っていたから。どんなお菓子に合うのか、というのも結構皆で探したものよ」
ね、と言いながら彼女は小さな缶をいくつか取り出す。
小さな色とりどりの、丸い蓋のついた缶はそれだけでも可愛らしい。
それが赤、黄色、薄緑、クリーム色、水色、紺、臙脂、ピンクと次々とテーブルに置かれる。
「向こうに着いてからは、まあ何かしらあるでしょうけど、時々故郷のものが欲しくなることがあるでしょうから、ちょっとずつね」
そうして私達は軽い昼食代わりにジャム入りピローグとクッキーをつまんだ。
昨日は昼頃、乗客の入れ替わりが激しい北の大国の首都だった。ここからがこの列車の本腰の入るところだ。
北の大国に下りる人々も多ければ、これから東に向かうべく乗り込む人々も多い。
特に、四等には大量の客が乗り込んできた。
「詰め込んでいますね」
窓から身を乗り出して私達はその様子を眺めていた。
確かにアイリーンの言った通り、ホームに下りて何やかんややっていると、人混みに押されてしまいそうだった。
二等客車にも多少の入れ替わりがあった。
それと同時に、掃除人がざっと入ってきて、シーツを交換したり、床を掃いたりしていた。
三等ならそれで終わりだ。
二等ではテーブルが出るので、それを拭いたり、ポットの回収もある。
三等の場合は、椅子とベッドの区別がない。
乗客はずっとベッドに座っているということになる。しかも上下段。
私達は二等で最高二人までの個室なのだが、三等は上下左右で四人。一室の広さは同じだ。
「だけどこの列車はまだ良い方なのよ。鉄道会社によっては、三等一室に六人詰め込んだりもする様だし」
アイリーンはそう言った。
「詳しいですね」
「まあね」
どう詳しいのか、と聞こうと思ったが。
「ジャム入りピローグ~ クッキーは如何ですか~」
と少年の高い声に腕を大きく振りだしてしまったので、それ以上は聞けなかった。
「結構大きいわね」
ジャム入りのピローグを二つと、クッキーを一袋買うと、早速お茶を、と彼女は自分の荷を開く。
「揚げ菓子に合うお茶は、と」
「色んなお茶を持ってきているんですね」
「ええ。うちでは色んなお茶も扱っていたから。どんなお菓子に合うのか、というのも結構皆で探したものよ」
ね、と言いながら彼女は小さな缶をいくつか取り出す。
小さな色とりどりの、丸い蓋のついた缶はそれだけでも可愛らしい。
それが赤、黄色、薄緑、クリーム色、水色、紺、臙脂、ピンクと次々とテーブルに置かれる。
「向こうに着いてからは、まあ何かしらあるでしょうけど、時々故郷のものが欲しくなることがあるでしょうから、ちょっとずつね」
そうして私達は軽い昼食代わりにジャム入りピローグとクッキーをつまんだ。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます
天宮有
恋愛
水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。
それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。
私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。
それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。
家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。
お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。
私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる