13 / 47
男爵未亡人は語る(2)
2
しおりを挟む
二等に何故乗っているかって?
そうね。二等が一番しっくり来るからかしら。
私は男爵家に住み込みで働く様になった時、他の貴族のお屋敷よりずっと心地よいな、と思ったのよ。
というのも、今の義母、当時の奥様は、先に話したかもしれないけど、ダンスや刺繍やお喋りやピアノと言ったものより、花壇や温室の花の世話をするのが好きだったの。
庭師に任せることも多かったけど、何より自分で花を選んで植えたり、南国の変わった植物を温室でむ育てるのが楽しかったらしいの。
皆で馬車に乗ってピクニックに行ったりね。
時には日帰りではなく、大きな天幕を用意して野営することもあったわ。
貴女も野営はしたことがあって?
砂漠の国や草原の国を見たことがあるならば。
まあ別にそういう国のそれを真似た訳ではないけれど、お義母様は自然と戯れるのがお好きな方なのよ。
私もそれは好きだったし、アリッサがそこでは私に花輪の作り方とか教えてくれたわ。
ここでは自分が先生だって笑ってね。
そう、お義父様も野営はお好きで。
狩りの趣味があったので、何日か一箇所に留まってこれという獲物を仕留めるのがお好きだったということよ。
そのお義父様が、野営の際の道具の使い方を私にも教えてくれたものよ。
それこそ召使い任せに普通はすることを、わざわざ自分の手でするの。
それが本当の贅沢だ、とお義父様はおっしゃってたわ。
そう、貴女の旦那様も調査研究の際に、野営のために小さな道具を持っていたのではなくて?
そういうものを作るにも、実際野営してみないことには欲しいものが判らない、とばかりに何でもやってらしたわ。
おかげで私自身、こう、鉈で薪を割るとか、ある程度の板状にしたものをナイフでフォークとか作れるくらいになったわ。
アリッサができるのに私ができない、というのも悔しいから、ってね。
そんな風にこの家での家庭教師生活はとっても楽しかったのよ。
大学に通っていた当時の夫も、休みになると一緒にね。
そこでお義母様がおっしゃるのよ。
私が来てから息子は休みに自宅に寄りつくようになった、って。
それが他のお宅だったら、息子をたぶらかす悪い女、みたいな目で見られることが多いと私も聞いていたのね。
実家ではそういう話ばかり耳にしていたから。
そう、実家の方では、常にそんな話ばかりだったわ。
お母様はお父様が繁華街の窓越しの女に夢中になっているんじゃないか、って常にぴりぴりしていたし。
弟は学校で上級生から悪い遊びを教えてもらったとか何とか。
実際当時、弟は家に滅多に帰らなかったわ。
まあ、居心地が悪かったのか、羽目を外せて楽しかったのか、それとも悪い先輩の使いっぱしりをさせられていたのか、その辺りは判らないけれど。
そうね。二等が一番しっくり来るからかしら。
私は男爵家に住み込みで働く様になった時、他の貴族のお屋敷よりずっと心地よいな、と思ったのよ。
というのも、今の義母、当時の奥様は、先に話したかもしれないけど、ダンスや刺繍やお喋りやピアノと言ったものより、花壇や温室の花の世話をするのが好きだったの。
庭師に任せることも多かったけど、何より自分で花を選んで植えたり、南国の変わった植物を温室でむ育てるのが楽しかったらしいの。
皆で馬車に乗ってピクニックに行ったりね。
時には日帰りではなく、大きな天幕を用意して野営することもあったわ。
貴女も野営はしたことがあって?
砂漠の国や草原の国を見たことがあるならば。
まあ別にそういう国のそれを真似た訳ではないけれど、お義母様は自然と戯れるのがお好きな方なのよ。
私もそれは好きだったし、アリッサがそこでは私に花輪の作り方とか教えてくれたわ。
ここでは自分が先生だって笑ってね。
そう、お義父様も野営はお好きで。
狩りの趣味があったので、何日か一箇所に留まってこれという獲物を仕留めるのがお好きだったということよ。
そのお義父様が、野営の際の道具の使い方を私にも教えてくれたものよ。
それこそ召使い任せに普通はすることを、わざわざ自分の手でするの。
それが本当の贅沢だ、とお義父様はおっしゃってたわ。
そう、貴女の旦那様も調査研究の際に、野営のために小さな道具を持っていたのではなくて?
そういうものを作るにも、実際野営してみないことには欲しいものが判らない、とばかりに何でもやってらしたわ。
おかげで私自身、こう、鉈で薪を割るとか、ある程度の板状にしたものをナイフでフォークとか作れるくらいになったわ。
アリッサができるのに私ができない、というのも悔しいから、ってね。
そんな風にこの家での家庭教師生活はとっても楽しかったのよ。
大学に通っていた当時の夫も、休みになると一緒にね。
そこでお義母様がおっしゃるのよ。
私が来てから息子は休みに自宅に寄りつくようになった、って。
それが他のお宅だったら、息子をたぶらかす悪い女、みたいな目で見られることが多いと私も聞いていたのね。
実家ではそういう話ばかり耳にしていたから。
そう、実家の方では、常にそんな話ばかりだったわ。
お母様はお父様が繁華街の窓越しの女に夢中になっているんじゃないか、って常にぴりぴりしていたし。
弟は学校で上級生から悪い遊びを教えてもらったとか何とか。
実際当時、弟は家に滅多に帰らなかったわ。
まあ、居心地が悪かったのか、羽目を外せて楽しかったのか、それとも悪い先輩の使いっぱしりをさせられていたのか、その辺りは判らないけれど。
8
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる