〈完結〉夫を亡くした男爵夫人、実家のたかり根性の貧乏伯爵家に復讐する

江戸川ばた散歩

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男爵未亡人は語る(2)

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 二等に何故乗っているかって?
 そうね。二等が一番しっくり来るからかしら。

 私は男爵家に住み込みで働く様になった時、他の貴族のお屋敷よりずっと心地よいな、と思ったのよ。
 というのも、今の義母、当時の奥様は、先に話したかもしれないけど、ダンスや刺繍やお喋りやピアノと言ったものより、花壇や温室の花の世話をするのが好きだったの。
 庭師に任せることも多かったけど、何より自分で花を選んで植えたり、南国の変わった植物を温室でむ育てるのが楽しかったらしいの。
 皆で馬車に乗ってピクニックに行ったりね。
 時には日帰りではなく、大きな天幕を用意して野営することもあったわ。
 貴女も野営はしたことがあって? 
 砂漠の国や草原の国を見たことがあるならば。
 まあ別にそういう国のそれを真似た訳ではないけれど、お義母様は自然と戯れるのがお好きな方なのよ。
 私もそれは好きだったし、アリッサがそこでは私に花輪の作り方とか教えてくれたわ。
 ここでは自分が先生だって笑ってね。
 そう、お義父様も野営はお好きで。
 狩りの趣味があったので、何日か一箇所に留まってこれという獲物を仕留めるのがお好きだったということよ。
 そのお義父様が、野営の際の道具の使い方を私にも教えてくれたものよ。
 それこそ召使い任せに普通はすることを、わざわざ自分の手でするの。
 それが本当の贅沢だ、とお義父様はおっしゃってたわ。
 そう、貴女の旦那様も調査研究の際に、野営のために小さな道具を持っていたのではなくて?
 そういうものを作るにも、実際野営してみないことには欲しいものが判らない、とばかりに何でもやってらしたわ。
 おかげで私自身、こう、鉈で薪を割るとか、ある程度の板状にしたものをナイフでフォークとか作れるくらいになったわ。
 アリッサができるのに私ができない、というのも悔しいから、ってね。
 そんな風にこの家での家庭教師生活はとっても楽しかったのよ。
 大学に通っていた当時の夫も、休みになると一緒にね。
 そこでお義母様がおっしゃるのよ。
 私が来てから息子は休みに自宅に寄りつくようになった、って。
 それが他のお宅だったら、息子をたぶらかす悪い女、みたいな目で見られることが多いと私も聞いていたのね。
 実家ではそういう話ばかり耳にしていたから。
 そう、実家の方では、常にそんな話ばかりだったわ。
 お母様はお父様が繁華街の窓越しの女に夢中になっているんじゃないか、って常にぴりぴりしていたし。
 弟は学校で上級生から悪い遊びを教えてもらったとか何とか。
 実際当時、弟は家に滅多に帰らなかったわ。
 まあ、居心地が悪かったのか、羽目を外せて楽しかったのか、それとも悪い先輩の使いっぱしりをさせられていたのか、その辺りは判らないけれど。
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