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ということで語ってみた。
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くらもちふさこの70年代後半~80年代初頭までに連作で描かれたバンドもの「蘭丸団シリーズ」の話をちょいと。
現在電子で再編集版が出ております。
収録作品は
・わずか5センチのロック
・わずか1/4の冗談
・わずか一小節のラララ
・わずか45回転のイブ
紙の単行本の時には「イブ」が無くて、他の短編が収録されてました。
ええ無論持ってましたよ。
たぶんウチのどっかにあります(笑)。
1976年~79年で一年一回掲載、というくらもちふさこにしては珍しい、同じキャラを数年掛けて書き続けるというシリーズ。
この「ラララ」の後に、初の半年連載「おしゃべり階段」があったんですが、この辺りで結構作風に変化があったんじゃないかな、と。
まあそんなわけで解説。
最初の「わずか5センチのロック」は、まあ基本単発作品だったんだと思う。
「ミスでくのぼう」と陰口たたかれてた高身長で三つ編み眼鏡の倫子の唯一の楽しみはピアノ。
ただ何故か女生徒にもててる。何故か。
それは学校で人気のバンド「蘭丸団」のギター・佐藤ちゃんにそっくりだからだったのだ!
そっくりだから、なので本物がくれば取り巻きは消えていくんですな。
諦めモードの青春、と言ってた時、当の蘭丸団は佐藤ちゃんがコンテスト出場の他バンドに手の骨折られるという大ピンチ。
時代がまだ時代ですから! こういうのはよくあることで!
さあどうしよう、というメンバー達。
そこでたまたまばったり会った倫子と佐藤ちゃんがそっくりということに気付き、「身代わりやって!」と。
実際三つ編みも切られてしまって(時代だ)、周囲がまじ見分けつかないくらいになりまして。
違うのは身長。倫子の方が5センチ低い、それだけという。
要するに相当女子としては身長あるんですな。
で、キーボード褒めてくれたり、代役するなら気をつけろという佐藤ちゃんのために、と倫子もだんだん身代わりやろうって気になってくんですな。
演奏はどうでもいい、佐藤ちゃんにそっくりな審査員の娘がいるから、と。
だけどその審査員の娘に「背が縮んだみたいね」と言われたので5㎝ヒールのブーツを履いて出て、テープレコーダー(これもたぶんリール式のいい奴)のスイッチを足で入れた時…… 転ぶんですよ。
さあ大変、という時に「キーボードの譜覚えてるか!?」と佐藤ちゃん。
そこでギターはボーカルの今井くんにやらせ、演奏し、まあ当然だが落ちると。
だけどここで倫子がバンドの一員になるってことで大団円。
次の「冗談」はバンドに入ってしばらく経ってから。
今度はドラムの甘利くんが入院した、という知らせ。
この情報がいい加減で、「足の骨折」が本当なのに、飛び込んできた倫子は「ぎっくり腰」佐藤ちゃんは「だっちょ(脱腸)」と言ってる始末。
前作に比べて完全にコメディ。全体を「冗談」が覆っている笑い溢れるバンドに蘭丸団がなっている印象。
で、コンテストに向かってはりきってる佐藤ちゃんに「(ドラマーの)足の骨折→コンテストに甘利くんはでられない」とは三人とも言えなくてだね。
とりあえずは甘利くんの知り合いのパーカッション(今思うとこれはブラスに居た、という表現じゃないかと思う)の大河内くんという人を紹介される。
なおこの彼、女嫌いということで倫子が男子の制服みたいなもの(この学校自体は私服)「佐藤ちゃんの弟」ということで紹介。
ともかく助っ人ということで頼むんだけど、一万円のバイト費を要求。
皆単発バイトでかき集めるんだけど(70年代後半の1万円だぞ!)そこにも苦労のドラマがちょいと。
で、合わせてみたら倫子の演奏に大河内くん感激。ぜひ自分のグループに、と勧誘。
すると今井くんが冗談で「ダメでしょ結婚でもしなくちゃ」と言うと「許されるなら結婚します」と真っ向から。冗談の通じない人でした。
それで佐藤ちゃんが呆れて行方くらましてしまい。大河内くんは倫子に花束渡したり。
仕方ないので校内放送で「足の骨折」ということを倫子が言う訳だ。
そんで次の日、わざと女の子っぽいワンピースで待ってると佐藤ちゃん戻ってくるんだな。謝って、皆抱きつき合って~なんだけど。
そこで「お、おんな……けがらわしい」となった大河内くんに、今井くんが冗談で自分達は狙われているという話をしちゃうんだな、すると「すぐにでも逃げなくては!」と。
だけど裏の戸が鍵掛かってる。「爆破でもしなきゃ」とまた言うと、大河内くん「理科室の薬品で作りましょう」おい。
でまじ壊して「では大河内一等兵参ります」と初めて冗談を言って去ってく。とポケットから一万円が。どうやって分けよう~じゃ、とった者のものと紙飛行機にすると、甘利くんが取る。
驚くメンバーに言うには「足の小指」だったと。
そんで無事コンテストには出られましたとさ、という。
この話では倫子が皆のノリに合わせて明るく冗談に乗ったり協力したり積極的になってるのが前作との差。もう完全に馴染んでる。
佐藤ちゃんも前作の「不器用だけど格好いい優しい人」に「冗談」要素が入ってくるので、「架空の男の子」から人間になりつつあるというか。
他の三人は次第にキャラが立ってきているという感じ。
三作目は前後編大作。
当時前後編を毎月やってたんですよ、別冊マーガレット。
初夏頃のやつ。
巻頭見開きカラーでバンドが最後の決めをする場面とかめっちゃ格好いいのですよ。
でもな!
たぶんこの時点が高校三年。ええ、この話ずっと高校生の話ですよ!
時代が時代ですから。
そんでたぶん、自由な東京の高校の話だから。
で、この話はテーマが結構明確で「バンドにおける紅一点」問題なんだよ。
巻頭カラーの部分で、予選にレディースバンドも出ていたんだよな。彼女達が蘭丸団メンツを品定めしている訳。
ええ、ここでは倫子も男と思われてます。何せ結果を待っている時の客席で、上着がはだけて下着が見えた時「やっぱり女?」と囁く声がするくらいだから。
で、そこで「大事な写真」を落としたので取りに行ったら、その写真の男と再会。
そいつが関西代表「風狂」のリーダーだったんだわな。
二つ挿しても大丈夫、感電絶対しないアンプの話を倫子にしていくと。
そして彼はどうしても倫子がバンドやってるということを想像だにしていない、という。ただの蘭丸団の知り合い、としか思えないという。
一方で他の四人は関西の演奏のビデオ(金持ちの今井くんの家にはある!)を見て、風狂のライバルバンドが感電した場面を見るんだな。ここで風狂を倫子が見ていないというのがミソ。
その後コンテストに向けて合宿をするという話に。
こいつらが高三じゃないか、というのはこの話を倫子が母親にする時に、「予備校のお勉強会でしょ?」というあたり。
実際は米軍ハウスの一つを借りて泊まり込んで自炊して~というのなんだが。
どんだけやってんだお前ら的な雑魚寝。ええ、倫子もホントに雑魚寝!
そこで関西の助っ人に行っていた大河内くんからの手紙。感電した話を倫子はそこで初めて聞くんだよな。
そこへレディースバンドのキーボードの子が佐藤ちゃんを追っかけてくるんだが、今井くんは土手を上がる時に手を貸してやり、倫子は一人で上がってく。
練習の時に、その前で洗濯で指をケガしてたのである「ラ」の部分で必ずずれてしまう。
……まあ、後になれば、ラでなくA音と言うだろうなとは思うんだが、時代が時代だからな。
そこで写真の男のこと考えていたからだろ、などと今井くんにからかわれ、飛び出す倫子。
だけど戻ってくると「いない間代わりやってましょうか」と女の子(名前は最後まで出てこない)がキーボード弾いてる。そのことにショックを受けて倫子は帰宅。
一方その事態で、佐藤ちゃんはキーボード無しの曲に書き換えることに。女の子のことを言うと「そこ一音違ってるよも言えなかったくせに」と今井くんに。
「俺達のバンドに『女の子』はだめなんだ」と。
実際彼女が居る中では男子達、気になって眠れてないんだわな。倫子の場合は全く平気。この辺りが男女関係ない仲間感。
ただ、「それでも」当事者の倫子としては微妙な気分になるわけだ。
で、コンテスト当日、風狂のリーダーに頼まれて「絶対に感電しない」アンプを渡す倫子。内心では絶対使う訳はないと思いつつ。
そこでとうとう風狂のリーダーということを知る訳だ。
で、とりあえず客席で見るんだけど、中学時代の自分の立ち位置/ピアノの伴奏役ということで踊る女子の中に含まれない――を思い出したり、風狂の歌詞を聴いて「彼の詞かしら」と思ったり。
そこで大河内くんと再会。感電の原因が、特定の音を弾くと感電する様になっていると知る。
で、蘭丸団の登場なんだけど、「あのアンプ」を使おうとする佐藤ちゃん。
さすがにもう、と思った彼は「ラの音を弾くと感電する」と白状。
それを聞いた倫子は何処にラ音があったか考えながら舞台袖に。
ところがそれは自分がつっかえたあの音。それでも純粋なギター音でなくキーボードが混ざれば? ということで、勝負する。
さあここで一ページまるまる、これが良い。圧巻。
ギターのフレットを右上から下に描き、押さえる指と、左真ん中からの鍵盤で低音から高音にだんだん動く指が一点で合うんだよ。
このページのレイアウトがまじたまらん。
で、次のページで「できた!」。
アンプ切り替えて演奏成功。
再会できて今井くんとも握手。
「女の子に差し伸べられる手ではなく握手だったこと」が嬉しい。「蘭丸団の倫子」に戻れた気がして。
なおコンテストは優勝でした。
で、「イブ」なんだが。
チャリティーショーに出ることになった蘭丸団。
さあここまで来ると皆ホントに人間くさくなってくるんだよな。
特に佐藤ちゃん!
話自体は、「プロになるのかどうなのかで割れるメンバー」「解散の危機」。
で、前回仲間とトラブった倫子が今回は仲裁役になるという。
蘭丸団は基本それぞれの家だの親だのどうでもよかった、ということになっておりまして。今井くんの家が金持ちだとはあっても、「医者の息子」ということはここでクローズアップ。
「おれはスターになりたいのにスターになれない」。
普通の家の息子達とは違って、家を継がなければならない、というのが彼が今すぐにでもデビューしたい、と急ぐ理由。
他のメンバーはゆっくりやっていけば、という考えも。
そこで佐藤ちゃん曰く「とりあえずそれぞれ抜きでやると両方に言っておいて、後で何とかする」。
無論失敗ですよ(笑)。
今井くん本気で怒って姿くらます。
そこで倫子が門の前で待ってると雪が。そのまま寝てしまって! 佐藤ちゃんにぶん殴られて起きたら熱が。
ええ、もう本番当日。
色々あった末、会場に着くと、甘利くんが手を骨折!
仕方ないのでとりあえず時間稼ぎにキーボードだけでも出て演奏するけど、さすがにブーイング。
熱にうかされながらも、どうしようかな、と考えた倫子は賛美歌を演奏して歌い出す。観客もそれに応えてくれる。
と。
そこにサンタの扮装をした警備員の一人が飛び出してきて歌い出す。聞き覚えのある声、今井くんだった。
つられるように皆やってきて、演奏が始まる――んだけど、倫子はさすがにダウン。後ろに倒れ込もうとするとこを佐藤ちゃんが支えてセーフ。「そのまま寝てろ」。
……ここだけだぞ、この話で彼が格好良いのは。
そんでまあこの時の様子が45インチEP盤になって後で冒頭と同じ、甘利くん宅八百屋の二階で聞くんだけど、またそこで諍いが。
歩いてやってきた佐藤ちゃんと病み上がりで半纏着た倫子が来た時、「出てけーっ!」と再来して終わる。
この話のおかしいポイントの一つに、佐藤ちゃんの完全な人間化というのがあってだな。
最初の登場は水もしたたるいい男が車で颯爽と登場なんだよ。
だがそれ、母親の車だと。自分のは買って一週間、兄貴のも壊してその後だと。
ところがまた次で車が違う。弟のだと。
その弟の車を熱出た倫子乗せて病院に行こうとした時に、標識見ずに警察に追われるわ、電柱にぶつかるわ。
最後には同じ行先なのに、もう徒歩という(笑)。
いやまあ、基本蘭丸団の連中ってのは何だかんだ言って裕福なんだよな。倫子もピアノ教室の娘でおかーさんもおっとりしているし。70年代後半で皆遊んでいるように見えるのに大学行ってるわけだし。
佐藤ちゃんも都内住みなのに家に車何台あるんだよ、と。
今井くんが医大に行っていないよな、というのは突っ込んではいかんな……
ともかくこの連作は濃かった。ともかく情報の抜けが全くない。
そんで、くらもちふさこという作家がこの四年間でどう変化したか、というのを見るいい指針になるんだよなー。
だからこそ、今でもこれ、電子で下ろしているし、今でも好きなんだよ。
現在電子で再編集版が出ております。
収録作品は
・わずか5センチのロック
・わずか1/4の冗談
・わずか一小節のラララ
・わずか45回転のイブ
紙の単行本の時には「イブ」が無くて、他の短編が収録されてました。
ええ無論持ってましたよ。
たぶんウチのどっかにあります(笑)。
1976年~79年で一年一回掲載、というくらもちふさこにしては珍しい、同じキャラを数年掛けて書き続けるというシリーズ。
この「ラララ」の後に、初の半年連載「おしゃべり階段」があったんですが、この辺りで結構作風に変化があったんじゃないかな、と。
まあそんなわけで解説。
最初の「わずか5センチのロック」は、まあ基本単発作品だったんだと思う。
「ミスでくのぼう」と陰口たたかれてた高身長で三つ編み眼鏡の倫子の唯一の楽しみはピアノ。
ただ何故か女生徒にもててる。何故か。
それは学校で人気のバンド「蘭丸団」のギター・佐藤ちゃんにそっくりだからだったのだ!
そっくりだから、なので本物がくれば取り巻きは消えていくんですな。
諦めモードの青春、と言ってた時、当の蘭丸団は佐藤ちゃんがコンテスト出場の他バンドに手の骨折られるという大ピンチ。
時代がまだ時代ですから! こういうのはよくあることで!
さあどうしよう、というメンバー達。
そこでたまたまばったり会った倫子と佐藤ちゃんがそっくりということに気付き、「身代わりやって!」と。
実際三つ編みも切られてしまって(時代だ)、周囲がまじ見分けつかないくらいになりまして。
違うのは身長。倫子の方が5センチ低い、それだけという。
要するに相当女子としては身長あるんですな。
で、キーボード褒めてくれたり、代役するなら気をつけろという佐藤ちゃんのために、と倫子もだんだん身代わりやろうって気になってくんですな。
演奏はどうでもいい、佐藤ちゃんにそっくりな審査員の娘がいるから、と。
だけどその審査員の娘に「背が縮んだみたいね」と言われたので5㎝ヒールのブーツを履いて出て、テープレコーダー(これもたぶんリール式のいい奴)のスイッチを足で入れた時…… 転ぶんですよ。
さあ大変、という時に「キーボードの譜覚えてるか!?」と佐藤ちゃん。
そこでギターはボーカルの今井くんにやらせ、演奏し、まあ当然だが落ちると。
だけどここで倫子がバンドの一員になるってことで大団円。
次の「冗談」はバンドに入ってしばらく経ってから。
今度はドラムの甘利くんが入院した、という知らせ。
この情報がいい加減で、「足の骨折」が本当なのに、飛び込んできた倫子は「ぎっくり腰」佐藤ちゃんは「だっちょ(脱腸)」と言ってる始末。
前作に比べて完全にコメディ。全体を「冗談」が覆っている笑い溢れるバンドに蘭丸団がなっている印象。
で、コンテストに向かってはりきってる佐藤ちゃんに「(ドラマーの)足の骨折→コンテストに甘利くんはでられない」とは三人とも言えなくてだね。
とりあえずは甘利くんの知り合いのパーカッション(今思うとこれはブラスに居た、という表現じゃないかと思う)の大河内くんという人を紹介される。
なおこの彼、女嫌いということで倫子が男子の制服みたいなもの(この学校自体は私服)「佐藤ちゃんの弟」ということで紹介。
ともかく助っ人ということで頼むんだけど、一万円のバイト費を要求。
皆単発バイトでかき集めるんだけど(70年代後半の1万円だぞ!)そこにも苦労のドラマがちょいと。
で、合わせてみたら倫子の演奏に大河内くん感激。ぜひ自分のグループに、と勧誘。
すると今井くんが冗談で「ダメでしょ結婚でもしなくちゃ」と言うと「許されるなら結婚します」と真っ向から。冗談の通じない人でした。
それで佐藤ちゃんが呆れて行方くらましてしまい。大河内くんは倫子に花束渡したり。
仕方ないので校内放送で「足の骨折」ということを倫子が言う訳だ。
そんで次の日、わざと女の子っぽいワンピースで待ってると佐藤ちゃん戻ってくるんだな。謝って、皆抱きつき合って~なんだけど。
そこで「お、おんな……けがらわしい」となった大河内くんに、今井くんが冗談で自分達は狙われているという話をしちゃうんだな、すると「すぐにでも逃げなくては!」と。
だけど裏の戸が鍵掛かってる。「爆破でもしなきゃ」とまた言うと、大河内くん「理科室の薬品で作りましょう」おい。
でまじ壊して「では大河内一等兵参ります」と初めて冗談を言って去ってく。とポケットから一万円が。どうやって分けよう~じゃ、とった者のものと紙飛行機にすると、甘利くんが取る。
驚くメンバーに言うには「足の小指」だったと。
そんで無事コンテストには出られましたとさ、という。
この話では倫子が皆のノリに合わせて明るく冗談に乗ったり協力したり積極的になってるのが前作との差。もう完全に馴染んでる。
佐藤ちゃんも前作の「不器用だけど格好いい優しい人」に「冗談」要素が入ってくるので、「架空の男の子」から人間になりつつあるというか。
他の三人は次第にキャラが立ってきているという感じ。
三作目は前後編大作。
当時前後編を毎月やってたんですよ、別冊マーガレット。
初夏頃のやつ。
巻頭見開きカラーでバンドが最後の決めをする場面とかめっちゃ格好いいのですよ。
でもな!
たぶんこの時点が高校三年。ええ、この話ずっと高校生の話ですよ!
時代が時代ですから。
そんでたぶん、自由な東京の高校の話だから。
で、この話はテーマが結構明確で「バンドにおける紅一点」問題なんだよ。
巻頭カラーの部分で、予選にレディースバンドも出ていたんだよな。彼女達が蘭丸団メンツを品定めしている訳。
ええ、ここでは倫子も男と思われてます。何せ結果を待っている時の客席で、上着がはだけて下着が見えた時「やっぱり女?」と囁く声がするくらいだから。
で、そこで「大事な写真」を落としたので取りに行ったら、その写真の男と再会。
そいつが関西代表「風狂」のリーダーだったんだわな。
二つ挿しても大丈夫、感電絶対しないアンプの話を倫子にしていくと。
そして彼はどうしても倫子がバンドやってるということを想像だにしていない、という。ただの蘭丸団の知り合い、としか思えないという。
一方で他の四人は関西の演奏のビデオ(金持ちの今井くんの家にはある!)を見て、風狂のライバルバンドが感電した場面を見るんだな。ここで風狂を倫子が見ていないというのがミソ。
その後コンテストに向けて合宿をするという話に。
こいつらが高三じゃないか、というのはこの話を倫子が母親にする時に、「予備校のお勉強会でしょ?」というあたり。
実際は米軍ハウスの一つを借りて泊まり込んで自炊して~というのなんだが。
どんだけやってんだお前ら的な雑魚寝。ええ、倫子もホントに雑魚寝!
そこで関西の助っ人に行っていた大河内くんからの手紙。感電した話を倫子はそこで初めて聞くんだよな。
そこへレディースバンドのキーボードの子が佐藤ちゃんを追っかけてくるんだが、今井くんは土手を上がる時に手を貸してやり、倫子は一人で上がってく。
練習の時に、その前で洗濯で指をケガしてたのである「ラ」の部分で必ずずれてしまう。
……まあ、後になれば、ラでなくA音と言うだろうなとは思うんだが、時代が時代だからな。
そこで写真の男のこと考えていたからだろ、などと今井くんにからかわれ、飛び出す倫子。
だけど戻ってくると「いない間代わりやってましょうか」と女の子(名前は最後まで出てこない)がキーボード弾いてる。そのことにショックを受けて倫子は帰宅。
一方その事態で、佐藤ちゃんはキーボード無しの曲に書き換えることに。女の子のことを言うと「そこ一音違ってるよも言えなかったくせに」と今井くんに。
「俺達のバンドに『女の子』はだめなんだ」と。
実際彼女が居る中では男子達、気になって眠れてないんだわな。倫子の場合は全く平気。この辺りが男女関係ない仲間感。
ただ、「それでも」当事者の倫子としては微妙な気分になるわけだ。
で、コンテスト当日、風狂のリーダーに頼まれて「絶対に感電しない」アンプを渡す倫子。内心では絶対使う訳はないと思いつつ。
そこでとうとう風狂のリーダーということを知る訳だ。
で、とりあえず客席で見るんだけど、中学時代の自分の立ち位置/ピアノの伴奏役ということで踊る女子の中に含まれない――を思い出したり、風狂の歌詞を聴いて「彼の詞かしら」と思ったり。
そこで大河内くんと再会。感電の原因が、特定の音を弾くと感電する様になっていると知る。
で、蘭丸団の登場なんだけど、「あのアンプ」を使おうとする佐藤ちゃん。
さすがにもう、と思った彼は「ラの音を弾くと感電する」と白状。
それを聞いた倫子は何処にラ音があったか考えながら舞台袖に。
ところがそれは自分がつっかえたあの音。それでも純粋なギター音でなくキーボードが混ざれば? ということで、勝負する。
さあここで一ページまるまる、これが良い。圧巻。
ギターのフレットを右上から下に描き、押さえる指と、左真ん中からの鍵盤で低音から高音にだんだん動く指が一点で合うんだよ。
このページのレイアウトがまじたまらん。
で、次のページで「できた!」。
アンプ切り替えて演奏成功。
再会できて今井くんとも握手。
「女の子に差し伸べられる手ではなく握手だったこと」が嬉しい。「蘭丸団の倫子」に戻れた気がして。
なおコンテストは優勝でした。
で、「イブ」なんだが。
チャリティーショーに出ることになった蘭丸団。
さあここまで来ると皆ホントに人間くさくなってくるんだよな。
特に佐藤ちゃん!
話自体は、「プロになるのかどうなのかで割れるメンバー」「解散の危機」。
で、前回仲間とトラブった倫子が今回は仲裁役になるという。
蘭丸団は基本それぞれの家だの親だのどうでもよかった、ということになっておりまして。今井くんの家が金持ちだとはあっても、「医者の息子」ということはここでクローズアップ。
「おれはスターになりたいのにスターになれない」。
普通の家の息子達とは違って、家を継がなければならない、というのが彼が今すぐにでもデビューしたい、と急ぐ理由。
他のメンバーはゆっくりやっていけば、という考えも。
そこで佐藤ちゃん曰く「とりあえずそれぞれ抜きでやると両方に言っておいて、後で何とかする」。
無論失敗ですよ(笑)。
今井くん本気で怒って姿くらます。
そこで倫子が門の前で待ってると雪が。そのまま寝てしまって! 佐藤ちゃんにぶん殴られて起きたら熱が。
ええ、もう本番当日。
色々あった末、会場に着くと、甘利くんが手を骨折!
仕方ないのでとりあえず時間稼ぎにキーボードだけでも出て演奏するけど、さすがにブーイング。
熱にうかされながらも、どうしようかな、と考えた倫子は賛美歌を演奏して歌い出す。観客もそれに応えてくれる。
と。
そこにサンタの扮装をした警備員の一人が飛び出してきて歌い出す。聞き覚えのある声、今井くんだった。
つられるように皆やってきて、演奏が始まる――んだけど、倫子はさすがにダウン。後ろに倒れ込もうとするとこを佐藤ちゃんが支えてセーフ。「そのまま寝てろ」。
……ここだけだぞ、この話で彼が格好良いのは。
そんでまあこの時の様子が45インチEP盤になって後で冒頭と同じ、甘利くん宅八百屋の二階で聞くんだけど、またそこで諍いが。
歩いてやってきた佐藤ちゃんと病み上がりで半纏着た倫子が来た時、「出てけーっ!」と再来して終わる。
この話のおかしいポイントの一つに、佐藤ちゃんの完全な人間化というのがあってだな。
最初の登場は水もしたたるいい男が車で颯爽と登場なんだよ。
だがそれ、母親の車だと。自分のは買って一週間、兄貴のも壊してその後だと。
ところがまた次で車が違う。弟のだと。
その弟の車を熱出た倫子乗せて病院に行こうとした時に、標識見ずに警察に追われるわ、電柱にぶつかるわ。
最後には同じ行先なのに、もう徒歩という(笑)。
いやまあ、基本蘭丸団の連中ってのは何だかんだ言って裕福なんだよな。倫子もピアノ教室の娘でおかーさんもおっとりしているし。70年代後半で皆遊んでいるように見えるのに大学行ってるわけだし。
佐藤ちゃんも都内住みなのに家に車何台あるんだよ、と。
今井くんが医大に行っていないよな、というのは突っ込んではいかんな……
ともかくこの連作は濃かった。ともかく情報の抜けが全くない。
そんで、くらもちふさこという作家がこの四年間でどう変化したか、というのを見るいい指針になるんだよなー。
だからこそ、今でもこれ、電子で下ろしているし、今でも好きなんだよ。
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ついつい懐かしくて乱入致しました。
更新が続くなら是非拝見したいです。
ご考察、とても面白かったです。掲載してくださって有難うございました。
ありがとうございます😊
もらった別マのおかげでくらもち作品はデビュー作から読んでいるのです。
蘭丸団の紹介はこれだけなんですが、くらもち作品は「ショパン」までなら語れますな。
ただ蘭丸団シリーズはその中でも異質なんですよね。
そしてやはり当時のバンドものの中でも音楽愛に満ち溢れてる作品なんですわ。
もしまだ語るなら、くらもち作品の中での特異性とか、当時のバンド扱った話の中でどうかとか切り口はあるんですがね。