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エピローグ

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 あれから、二ヶ月。

 花壇には、チューリップを中心とした春の花が満開だった。
 ただ、二人きりの部員だった中里もよし野も既に居ない今、「園芸部」は存在が保留のままになっている。後期部に進級したばかりの四年生が興味を持ってくれない限りは、廃部扱いだ。
 そうしたらこの花壇は、やはり自分が世話するべきなのだろうな。
 ふう、と岩室は手紙を丁寧に折り畳むと、元の様に封筒に入れて、引き出しの中に入れた。

 この二ヶ月というもの、岩室は彼らに対して自分達がやっていることが、結局一時しのぎに過ぎないのではないか、と思うことが多々あった。
 中里に渡すことができた「R」は、せいぜいがところ、一年分程度だ。その後については、まるで予想ができない。
 いや、それ以前に、学校生活よりも緊張する日々の中、二人を守りながら、彼の身体がその時まで保つのか、という心配もある。
 逆に「R」を切らした彼が、あの親子を捨て、凶暴性をまき散らしてしまう可能性だってある。
 だが、それでも。
 中里の言った、「彼」と上手くやって行きたい、という言葉を信じるしかなかった。
 それは他のこれから手を貸したいもの達に対しても同様だ。自分達にできることは、結局、不完全なものを、少しづつでしか、ない。
 だがそれも、無駄な努力なのかもしれない。
 そんな思いが、ここ二ヶ月の間、ずっと渦巻いていた。
 それだけに、中里からの手紙は、正直、岩室にとって嬉しかったのだ。
 中里は「彼」と上手くやっていけるだろう。
 三枚目を見た時、そんな確信が、彼女の中にじわり、とわいてきた。

 さて、とそろそろ換気時間も終わりだ、と窓を閉めようとした時、四年生のネクタイをした男子が一人と、女子が二人、花壇の所に集まっていた。

「お前ら何だ? 花は好きか?」
「好きです。ここ、先生がお世話してるんですか?」
「いや、私は最近は水やりしてるだけだ。転校してった奴が、園芸部だったんだが……」
「あ、園芸部、あるんだって」
「どうする?」

 こそこそ、と少女達は顔を寄せる。おいおい、と男子はその二人に向かって何か言おうとする。

「先生、園芸部があるんなら、入りたいんですけど、どうすればいいんですか?」

 そうだな、と岩室は外側の扉を開けた。

「まあちょっと中に来い。カルピスでも呑んでけ」


 その朝、花壇のチューリップが一斉に花を開いていた。
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