上 下
20 / 58

第19話 のこり6日1 使用人達の素晴らしい連携プレイ

しおりを挟む
 幼なじみは疑問をぽんと私に投げると、明日離れに来て、と言って去っていった。
 久しぶりだというのに嵐のようだ。
 ああもう、色々ありすぎだ。

 私はその晩はそれからすぐにベッドに入ったけど、色々と訳のわからない夢にうなされた。
 夢の中ではマンダリンが大鍋で何やらかき回し、煮出していた。
 布で鼻と口を覆い、目にはガラス箱のようなものを取り付けて。
 近寄っちゃ駄目よ、と私とシリア姉様に言っていた。
 近寄ったらどうなるの、と私は遠くから大声で問いかけていた。
 彼女は黙って大きく腕を広げていた。
 他にも色々断片的に妙に色鮮やかな夢を見ていたんだと思うけど、うまく思い出せない。
 ただ夢の中のマンダリンが妙に鮮やかに思い出せることで、私は何となく今でも彼女を懐かしく思ってるんだなあ、会いたいんだなあ、と思った。

 起き出すと、いつもより髪がしっちゃかめっちゃかになっていた。

「おはようございますー! ああらまだそんな格好で!」
「おはようイレーナ…… ううううううう眠いよぅまだ……」
「そんなことおっしゃって。今日はまた離れに呼び出されてるって言ってませんでした?」

 あれ? 言ったっけ? はて。言ったかもしれない。

「イレーナも一緒に来るんだっけ?」
「私も行かないと怒られますよ」



 そんな訳で朝食を部屋で摂った後、イレーナと離れに向かった。

「遅いぞー」

 そう言ってイルドが手を振っていた。そしてその周囲には、離れの使用人達。

「おはようございますマリア様」

 メルダがいつもとは違う服―― 使用人のお仕着せではない、私服でそこにいた。

「さ」

 メルダは離れの中へと私をうながした。イレーナがさあさあ、と離れの中へと私を押し込んだ。

「ちょ、ちょっと」
「お話はついてます。ここはお急ぎで」

 そう言いつつ、二人は手際よく姉様のクロゼットを開けると、見たことの無い服を取り出した。

「マリア様は少しシリア様よりお小さいから」
「そうですね、少し前のものが」

 え、何の話?
 身体に服を当てられて、この辺りですね、とかうなづきあっている二人に唖然としつつ、私はいつの間にか着替えさせられていた。

「髪もふわふわさせたままではいけませんね」

 そう言って二つに分けた三つ編みらさせられ、なおかつそれを耳の横で巻き巻きにされた。

「リボンとかないですか?」
「シリアお嬢様はリボンというよりは止め紐の方でしたから……」

 それでもその中で太いものを見つけ出しては可愛くまとめてくれるあたり、私のイレーナは優秀だと思う。
 しかしやっぱりここで言ってやりたい。

「ねえ一生懸命なのは判るんだけど、一体私はこれからどうしろって言うの?」

 何となく予想がつかないではないが。
 するとメルダが言った。

「街へ出ます。今日はマリア様にお会いになってもらいたい方がいらっしゃるのです」

 まあそんなことだと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

悪役令嬢のわたしが婚約破棄されるのはしかたないことだと思うので、べつに復讐したりしませんが、どうも向こうがかってに破滅してしまったようです。

草部昴流
ファンタジー
 公爵令嬢モニカは、たくさんの人々が集まった広間で、婚約者である王子から婚約破棄を宣言された。王子はその場で次々と捏造された彼女の「罪状」を読み上げていく。どうやら、その背後には異世界からやって来た少女の策謀があるらしい。モニカはここで彼らに復讐してやることもできたのだが――あえてそうはしなかった。なぜなら、彼女は誇り高い悪役令嬢なのだから。しかし、王子たちは自分たちでかってに破滅していったようで? 悪役令嬢の美しいあり方を問い直す、ざまぁネタの新境地!!!

天使の行きつく場所を幸せになった彼女は知らない。

ぷり
恋愛
孤児院で育った茶髪茶瞳の『ミューラ』は11歳になる頃、両親が見つかった。 しかし、迎えにきた両親は、自分を見て喜ぶ様子もなく、連れて行かれた男爵家の屋敷には金髪碧眼の天使のような姉『エレナ』がいた。 エレナとミューラは赤子のときに産院で取り違えられたという。エレナは男爵家の血は一滴も入っていない赤の他人の子にも関わらず、両親に溺愛され、男爵家の跡目も彼女が継ぐという。 両親が見つかったその日から――ミューラの耐え忍ぶ日々が始まった。 ■※※R15範囲内かとは思いますが、残酷な表現や腐った男女関係の表現が有りますので苦手な方はご注意下さい。※※■ ※なろう小説で完結済です。 ※IFルートは、33話からのルート分岐で、ほぼギャグとなっております。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...