〈完結〉お前等に奪われたものは、何倍にして返してやろうか?

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
上 下
14 / 28

13 父子は同じ目的を持つ

しおりを挟む
「ただ、お前が向こうに引き取られていたことで、直接手を出すことは控えていた」

 そこで俺は、昔から思っていた疑問を吐き出した。
「何故あそこで、俺を向こうにやったのです?」
「……それに関しては、私の弱さでしかない。お前を見るとメアリのことを思い出して辛くなって仕方が無かったんだ。それに、その時の私によってぼろぼろになりかけた男爵家に居るより、子爵家で教育を受けた方がいいと思ったんだが――お前の顔を見る限り、そうではないようだな」
「父さんに悪意が無いことが判って良かったです。そして伯母さんが悪意の人というのも」

 俺はにやりと笑った。

「そもそも出来が悪いからって娘達を自分の両親に押しつけて弟のこを引き取って出来がいいからと連れ回して見世物にする…… 俺はいつもあの香水臭い女達の中で、何って馬鹿馬鹿しい競り合いしてるんだ、と思ってましたよ」
「そんなことをされていたのか?」
「それでいてネイリアとトラディアは『あんたのせいで居られなくなったのよ』とばかりに俺を殴る蹴るしてきたし。三度森に放って置かれた時、さすがに来ない方がいい、とお祖父様達に言われましたし」
「性格の悪さが似たのか」

 くっ、と父は笑った。

「そこに恨みも入ってくるんですよ。けど、……父さん、これで俺のやることがだいたい決定しました」
「やること?」
「伯母夫婦への復讐です。父さんもしたかったんでしょう?」
「……ああ! 特に姉には! 自分の見えているものが判別できなくなってもう嫌だ嫌だと泣き叫んでいたメアリの姿が今でも私の脳裏から去らないんだ。忘れられない」
「だったら父さん、俺達の利害は一致する。父さんは俺のことも考えて抑えてくれたんだろう? でもあの連中が学校に行かせてくれたおかげで俺にはいい抜け道もできたし、それに医師になるべく勉強もしている。――何処に行っても、それでやっていくことは可能だと思う」
「お前……」
「それにあの家にずっと居たならば、俺は俺の好きな娘と結婚できない」
「好きな娘」
「その辺りも父さんに似たんだね、貴族同士の結婚とか家同士の何とやらというのに残念ながら俺は興味は無い。むしろあの連中を見てきたせいで、醜悪にしか感じられない。そうでない連中も学校で見てきたから、その限りではないし、きちんとノブレス・オブリージを守っている連中が大半だ。だけど伯母夫婦の子爵家はどうですか? 元々伯母さんが爵位狙いで男爵家からの援助で釣ったのでは?」
「……確かに持参金がずいぶんな額だ、と父は言っていた」
「碌な経営が出来ていないってことですよ。……そんな家、俺は継ぎたくも何ともない」
「だがお前がいなくなったら跡取りは」
「そこですよ」

 俺は再びにやりと笑った。

「先に娘達を嫁にやってしまったのがまずかったですね」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月10日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング2位 2020年11月13日「カクヨム」週間異世界ファンタジーランキング3位 2020年11月20日「カクヨム」月間異世界ファンタジーランキング5位 2021年1月6日「カクヨム」年間異世界ファンタジーランキング87位

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

妹に全てを奪われた私は、隣国の第二王子が口遊む歌に咲む

雨花 まる
恋愛
スタジッグ伯爵家には、二人の姉妹がいる。 両親によく似た妹オリヴィアは両親の愛を一身に受け、姉アイリスは我慢の日々を過ごした。それでも、いつかは愛されると信じて。しかし、妹はアイリスの婚約者までもを奪っていった。 絶望したアイリスは全てを諦め池へと向かったのだが……。そこで、意図せず隣国の第二王子と知り合うことになり日々が変わっていく。 奪われ続けた姉が隣国の第二王子に希望を貰うお話。 ※この作品は、小説家になろう様にも投稿しております。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】婚約破棄されたので国を滅ぼします

雪井しい
恋愛
「エスメラルダ・ログネンコ。お前との婚約破棄を破棄させてもらう」王太子アルノーは公衆の面前で公爵家令嬢であるエスメラルダとの婚約を破棄することと、彼女の今までの悪行を糾弾した。エスメラルダとの婚約破棄によってこの国が滅ぶということをしらないまま。 【全3話完結しました】 ※カクヨムでも公開中

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

処理中です...