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エピローグ

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 数日後、都市へ戻る代車が手配されたということで、私は東府を出ることにした。
 出る前に、トオエの案内で、受精卵を託す係への登録をも済ませた。本当にいいのか、と彼は言ったが、いいのさ、と私はうなづいた。
 「協力者」の特権を利用して、私は局へ二つのケースを委託した。二つだ。



 あの時。呆然としたまま、局の車に連れ込まれた私の上着のポケットには、二つの受精卵のケースが入っていた。気付いたのは、トオエの部屋に着いて、椅子の背にそれを掛けようとした時だったが。
 いつの間に、と思ったが、すぐに予想はできた。ミルは私をマシンガンで脅しながら、自分のベルトポーチの中から取り出し、ポケットの中に滑り込ませたのだろう。
 ただそれを、区別している余裕がなかった。自分達のなのか、あんへる達のなのか。
 私はそれを見つけた時、どうしたものか、と思った。一瞬それを床に叩き付けようかとも思った。

 でもできなかった。

 都市の友人の名を出して、本人でなくて申し訳ないけど、と付け加えて、自分のものとして、それを託した。

「それじゃ、色々世話になりました」
「本当に、その気になったらいつでも連絡をくれよ。願いが叶ったからって……」
「トオエさん」

 私は車の窓から乗り出す様にして、世話になった人の顔をまっすぐ見据えた。

「考えたことはないですか? あのタマゴの中から、あの連中の社会を思い切り破壊してくれるような子供が産まれて来ないか、って」
「君……」

 何を言っているのか、という表情になる。私は冗談ですよ、と笑う。そうか冗談だな、とトオエも笑った。

「妻と相談して…… まとまったら、すぐにでも、そちらへうかがいますよ。その時はよろしく、お願いします」
「ああ、それまで君も元気で」

 彼は手を伸ばした。私もその手を取って、強く握り返した。

 冗談ではないのだが。

 いつか、遠い未来、彼等の遺伝子を持った子供達が、反旗を翻すだろう。
 いや、遠くはないかもしれない。でも私は既にこの世にはいないかもしれない。
 それはそれでいい。
 私はとりあえずこの地球の大地の上で、精一杯、あがいてやる。
 うなだれて、ただ死を待つだけなんて、ごめんだ。
 彼等の様に、銃は持たないけれど。



 それじゃまた、と私は手を振り、アクセルを踏んだ。
 さて、何処から話そう? ねおんには。
 彼女はきっと、賛成してくれるだろう。
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