〈完結〉ごめんなさい、自分の居た場所のしていたことが判らなかった。

江戸川ばた散歩

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プロローグ

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 尾原真理子おはらまりこは園長室の扉を叩いた。
 この児童施設「向日葵園」に就職して三年。
 ここまでの道のりは決して平坦ではなかったのに。
 どうぞ、と園長の声がし、彼女は扉を開いた。

「どうかしましたか、尾原先生」

 穏やかな微笑を浮かべ、園長は仕事の手を止めた。
 そう、何故疑ったことすらなかったのだろう。
 彼女は園長の他の表情を知らない。
 あの時もそうだった。
 面接の時だ。
 履歴書を見ながら、園長はこう言った。

「色々あったのですね。頼もしいですよ」

 それまでにも「真面目」とか「一生懸命」は言われて来た。
 だがそれ以上のことは無かった。

「あなたの様な意思の強いひとなら、強い子供を育ててくれそうだ」

 信用と期待。
 それは真理子にとって初めてのものだった。
 それまでの苦労が報われた思いだった。
 真っ直ぐ自分を見ながら、にっこりと笑ったあの顔が真理子の脳裏に未だに焼き付いている。
 それ以来、彼女はこの園で「先生」と呼ばれる身分と高額の給料と、日々を暮らして行く場所が手に入ったのだ。
 ブライヴェイトは減ったが、―――それでも、自分が施設で育てられていた頃に比べれば、ずっとましだった。
 彼女自身、施設の出身だったのだ。
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