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21 瓶は何処からやってきたのか

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「そうなんだよ。うちの御主人は最近愛人を連れ込んでさ。奥様はいいとこの出だから、追い出すこともできないんだよ」

 ……こんなにあからさまに言ってしまっていいんだろうか。
 使用人用のお茶と、形がいびつな菓子を前に、私とハッティはこの大きな屋敷のメイドと話していた。

「いやそれ言ったら、うちだって、後妻の夫人がペット連れ込んでいるからね。まあ何処でもある話って言えばそうだろうけどさ」
「ペットかあ。奥様が欲しいならそれでいいかもしれないけど、あれ、高いんだろう?」

 話が私に振られる。

「さ、さあ…… でも、一緒に来た瓶はずいぶん上等でしたから」
「あー、だったらその瓶の数倍はするねえ」
「そうなのかい? 相場は」
「うん。その辺りは、うちより、サブスル家辺りが詳しいんじゃないかね」
「サブスル家?」

 貴族じゃないのか。

「って言うか、だいたいその手の瓶だのなんだのってのは、サブスル商会が扱うだろ? 書いてなかったかい?」
「書いて――なかったわ」 

 あの瓶は送り主の名は書いてなかった。
 けど、当然の様に、事故にも遭うことなく届いていた。

「あ、それだと送り主と受け取り主が一緒ということが考えられるねえ」
「え?」
「あんたのとこのハイロール男爵様は結構あっちこっちの商会に出資しているじゃないか。サブスル商会にも出資しているんだったら、そういう送られ方するのもありだよ」
「そうなんですか……」

 何か今、ちょっとつながった気がした。



 それからあちこちで細々としたものをきちんと買い、私達はまた戻ってきた。
 その頃には既にとっぷりと日も暮れていた。

「ただいま帰りましたあ」

 そう言って使用人口へまたもや戻ると、皆がどっと押し寄せてきた。

「私らの茶缶! 持ってよぉ」
「チョコレート!」

 ……まあ、寄り道もしたのだ。
 夫人用のクッキーだけでなく、板チョコレートとか、バニラエッセンスとか、ハンドクリームとか。
 仕事以外で欲しいものも頼まれていたので、使用人達は待ち構えていたのだ。

「あ、嬢さん、ミュゼットから手紙が来てますよ」

 ファデットがそう言って渡してくる。
 だがいつもよりやや厚い。
 というか、大きい。
 一体何を送ってきたのだろう。
 ともかくそれはエプロンのポケットに根性で押し込み、夕食を摂った。
 途中でお茶はできたけど、それだけではさすがに育ち盛りの身体には厳しい。

「今日はよく食べるねえ」

 ドロイデはそう言ってはねじった形の悪いパンを私にほいほいと渡してきた。
 私もそのみっしりとしたパンをがしがしと噛み締めた。
 もの凄く久しぶりの外、ということもあってやっぱり相当興奮していたのかもしれない。
 それから片付け物の続きをして、屋根裏へと戻って行く。
 その途中、奇妙に甘い香りを鼻に感じた。
 二階を通る時だったことから、私は少しばかり嫌な気持ちになった。
 そしてそのまま廊下を渡り、屋根裏への階段へと向かっていった。
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