11 / 43
11 母の友人その1からの証言
しおりを挟む
一方、ミュゼットの方からは着実に報告が来つつあった。
「例の、先の奥様、貴女のお母様のお友達ですが。
オラルフ弁護士さんの紹介で、お会いできた順番に訪問することができました。
まずはサムサ夫人ジュリエール様です。
三人とも皆子爵家や男爵家の出身で、それぞれ相応の家に嫁したということです。
この方にしても、一見貴族ではない実業家に見えますが、男爵家の三男の方に嫁した訳です。
そしてその方がたまたま商才に長けていたと。
ジュリエール様は、その夫君の仕事を手伝う忙しい日々の間を縫って、私と会って下さいました。
貴女のお母様のことを聞きたい、と言う内容が相当効いた様でした。
一時間でも! とばかりに予定を詰めに詰めたそうです。
そしてまず、いつ亡くなったのか、どうして亡くなったのか、そこからでした。
私はまずそこで驚きました。
葬儀に来なかったのか、と。
するとジュリエール様は大きく首を横に振りました。
何でも、悲しすぎるので身内だけで、と拒まれたそうです。
そう言えば確かに子爵も似たことを言っていました。
『でも私達、結婚するまではよく見舞いに行って、何かと彼女が知りたがっている外の話をしたものよ。そういう親友三人皆よそに置かれて、一体ハイロール男爵もロルカ子爵もどうしたの、って思っていたのよ』
ということです。
確かに子爵も、悲しすぎて全て葬儀に関しては男爵に任せた、と言ってました。嫁に出すのではなかった、婿を取るべきだった、そうすれば最後の最後まで看取ることができたのに、と。
……と、そこで思ったのですが、子爵は確かに何故貴女のお母様を嫁に出したのでしょう。
一人娘だとしたら、それは無いのではないかと思うのですね。
『ああ、それね。当時は居たのよ。跡取り息子が』
それはさすがに初耳でした。
子爵は貴女にとっての伯父様のことなど、一度も私に話したことは無いのです」
いや、私も初耳だ。
そもそも伯父が居たならば、祖父は蟄居が解けたら私に子爵を継がせる、なんて言わないだろう。
だがその謎も、ジュリエール様が簡単に解いてくれたそうだ。
「その点について驚いた顔をすると、ジュリエール様もまたびっくりした顔になり、こう言いました。
『あー…… そのね、子爵にはフレドリックという息子とカミーリアという娘が居てね。まあ要するに、カミーリアが、男爵に嫁した私達の親友なんだけど、彼女が嫁ぐ前はまだ、フレデリックが居たのよ』
居た、ということはどういうことか、と聞きました。
すると。
『いや、それがね。インドに出奔しちゃったのね。それで向こうの女と真面目に結婚をしてしまったことで、子爵は
もう勘当する! って。うちのひとはフレドと今でも細々と付き合いはあるんだけどね。年に一回か二回程度の手紙だけど。相手は確かに現地のひとだけど、良いところのお嬢さんだし、学もあるのよ。向こうでは珍しいくらいに』
「例の、先の奥様、貴女のお母様のお友達ですが。
オラルフ弁護士さんの紹介で、お会いできた順番に訪問することができました。
まずはサムサ夫人ジュリエール様です。
三人とも皆子爵家や男爵家の出身で、それぞれ相応の家に嫁したということです。
この方にしても、一見貴族ではない実業家に見えますが、男爵家の三男の方に嫁した訳です。
そしてその方がたまたま商才に長けていたと。
ジュリエール様は、その夫君の仕事を手伝う忙しい日々の間を縫って、私と会って下さいました。
貴女のお母様のことを聞きたい、と言う内容が相当効いた様でした。
一時間でも! とばかりに予定を詰めに詰めたそうです。
そしてまず、いつ亡くなったのか、どうして亡くなったのか、そこからでした。
私はまずそこで驚きました。
葬儀に来なかったのか、と。
するとジュリエール様は大きく首を横に振りました。
何でも、悲しすぎるので身内だけで、と拒まれたそうです。
そう言えば確かに子爵も似たことを言っていました。
『でも私達、結婚するまではよく見舞いに行って、何かと彼女が知りたがっている外の話をしたものよ。そういう親友三人皆よそに置かれて、一体ハイロール男爵もロルカ子爵もどうしたの、って思っていたのよ』
ということです。
確かに子爵も、悲しすぎて全て葬儀に関しては男爵に任せた、と言ってました。嫁に出すのではなかった、婿を取るべきだった、そうすれば最後の最後まで看取ることができたのに、と。
……と、そこで思ったのですが、子爵は確かに何故貴女のお母様を嫁に出したのでしょう。
一人娘だとしたら、それは無いのではないかと思うのですね。
『ああ、それね。当時は居たのよ。跡取り息子が』
それはさすがに初耳でした。
子爵は貴女にとっての伯父様のことなど、一度も私に話したことは無いのです」
いや、私も初耳だ。
そもそも伯父が居たならば、祖父は蟄居が解けたら私に子爵を継がせる、なんて言わないだろう。
だがその謎も、ジュリエール様が簡単に解いてくれたそうだ。
「その点について驚いた顔をすると、ジュリエール様もまたびっくりした顔になり、こう言いました。
『あー…… そのね、子爵にはフレドリックという息子とカミーリアという娘が居てね。まあ要するに、カミーリアが、男爵に嫁した私達の親友なんだけど、彼女が嫁ぐ前はまだ、フレデリックが居たのよ』
居た、ということはどういうことか、と聞きました。
すると。
『いや、それがね。インドに出奔しちゃったのね。それで向こうの女と真面目に結婚をしてしまったことで、子爵は
もう勘当する! って。うちのひとはフレドと今でも細々と付き合いはあるんだけどね。年に一回か二回程度の手紙だけど。相手は確かに現地のひとだけど、良いところのお嬢さんだし、学もあるのよ。向こうでは珍しいくらいに』
160
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
押し付けられた仕事は致しません。
章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。
書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。
『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
地味で結婚できないと言われた私が、婚約破棄の席で全員に勝った話
といとい
ファンタジー
「地味で結婚できない」と蔑まれてきた伯爵令嬢クラリス・アーデン。公の場で婚約者から一方的に婚約破棄を言い渡され、妹との比較で笑い者にされるが、クラリスは静かに反撃を始める――。周到に集めた証拠と知略を武器に、貴族社会の表と裏を暴き、見下してきた者たちを鮮やかに逆転。冷静さと気品で場を支配する姿に、やがて誰もが喝采を送る。痛快“ざまぁ”逆転劇!
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる