〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩

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11 母の友人その1からの証言

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 一方、ミュゼットの方からは着実に報告が来つつあった。

「例の、先の奥様、貴女のお母様のお友達ですが。
 オラルフ弁護士さんの紹介で、お会いできた順番に訪問することができました。
 まずはサムサ夫人ジュリエール様です。
 三人とも皆子爵家や男爵家の出身で、それぞれ相応の家に嫁したということです。
 この方にしても、一見貴族ではない実業家に見えますが、男爵家の三男の方に嫁した訳です。
 そしてその方がたまたま商才に長けていたと。
 ジュリエール様は、その夫君の仕事を手伝う忙しい日々の間を縫って、私と会って下さいました。
 貴女のお母様のことを聞きたい、と言う内容が相当効いた様でした。
 一時間でも! とばかりに予定を詰めに詰めたそうです。
 そしてまず、いつ亡くなったのか、どうして亡くなったのか、そこからでした。
 私はまずそこで驚きました。
 葬儀に来なかったのか、と。
 するとジュリエール様は大きく首を横に振りました。
 何でも、悲しすぎるので身内だけで、と拒まれたそうです。
 そう言えば確かに子爵も似たことを言っていました。

『でも私達、結婚するまではよく見舞いに行って、何かと彼女が知りたがっている外の話をしたものよ。そういう親友三人皆よそに置かれて、一体ハイロール男爵もロルカ子爵もどうしたの、って思っていたのよ』

ということです。
 確かに子爵も、悲しすぎて全て葬儀に関しては男爵に任せた、と言ってました。嫁に出すのではなかった、婿を取るべきだった、そうすれば最後の最後まで看取ることができたのに、と。
 ……と、そこで思ったのですが、子爵は確かに何故貴女のお母様を嫁に出したのでしょう。
 一人娘だとしたら、それは無いのではないかと思うのですね。

『ああ、それね。当時は居たのよ。跡取り息子が』

 それはさすがに初耳でした。
 子爵は貴女にとっての伯父様のことなど、一度も私に話したことは無いのです」

 いや、私も初耳だ。
 そもそも伯父が居たならば、祖父は蟄居が解けたら私に子爵を継がせる、なんて言わないだろう。
 だがその謎も、ジュリエール様が簡単に解いてくれたそうだ。

「その点について驚いた顔をすると、ジュリエール様もまたびっくりした顔になり、こう言いました。

『あー…… そのね、子爵にはフレドリックという息子とカミーリアという娘が居てね。まあ要するに、カミーリアが、男爵に嫁した私達の親友なんだけど、彼女が嫁ぐ前はまだ、フレデリックが居たのよ』
 居た、ということはどういうことか、と聞きました。

 すると。

『いや、それがね。インドに出奔しちゃったのね。それで向こうの女と真面目に結婚をしてしまったことで、子爵は
もう勘当する! って。うちのひとはフレドと今でも細々と付き合いはあるんだけどね。年に一回か二回程度の手紙だけど。相手は確かに現地のひとだけど、良いところのお嬢さんだし、学もあるのよ。向こうでは珍しいくらいに』
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