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10 夫人の元に届けられたもの
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羨ましい、か。
確かに。
あの母親とあの父親らしき男を持っていた、と思わざるを得なかったのだから。
私は一応お母様が「身体が弱いにも関わらず私を産んでくれた」という一点だけで、悪い気持ちはしない。
感謝できる。
父に関してはある程度「仕方ないよな」という気分もあった。
「母を愛していたならば」という前提つきならば。
それに比べると、ミュゼットの方が捨てられた感は強かっただろう。
ともかく現在の疑問が全て解決した暁には、私も彼女も確実に重荷が消えることになる。
たぶん私がしたいのは、復讐というよりは、「排除」だ。
この家において、私は使用人達の中では受け容れられている。
確かに男爵令嬢としての立場で扱われてはいないが、生きていく術は皆に教わっている。
では何をしたいのか、と言えば。
やはり父と義母という、自分の生存に危険な要素を排除したい。
そういうことなんだと思う。
ミュゼットの方がよほど「復讐」感は強いのではないだろうか?
そんなことを夜、つらつらと考えていたら、ファデットがまだ起きていたのか、と部屋にやってきた。
「なるほど、アリサ嬢さんはそう思うと」
「それで勢いが無くなってしまうという訳ではないんだけど。だって、何だかんだ言って一応雇い人としての契約を結んでいて、家族がちゃんと他に居る皆より、私の方がいつ消されても判らない立場なんだもの」
「うん、まあ、だったらもうちょっと危機意識を持ちましょうよ。それこそアリサ嬢さんは、それでも一応男爵令嬢なので、いきなり何処かに嫁がされるって可能性もあるんだし!」
「あ、それは嫌」
「でしょう! だったら気合い入れていきましょう!」
そうね、と私はファデットと背中を叩き合った。
*
そんなある日、家に大きな荷物がやってきた。
業者が運び込むと、階上から夫人が既に気付いていたのか、軽やかな足取りで下りてきた。
「まあ! やっと来たのね!」
窓掃除をしながら、その様子をうかがっていた私達は、夫人のあまりに浮かれた様子が気になった。
自ら受け取りをし、その上で、すぐに開けてもらう様に業者に指示する。
どうやら壊れ物の様で、開けるにも手順が要るらしい。
木箱の釘をいちいち外し、その中の詰め物を広げ……
「これよ」
ふふふ、と彼女は露骨な笑みを浮かべる。
そこに現れたのは、腹の高さほどある極彩色の壺だった。
人一人すっぽり入っていてもおかしくない程の。
私は他のメイドにこそっとつぶやく。
「……そんなに壺がお好きだったかしら」
「少なくとも私は知らないけど……」
この家にも特にそんなものは今まで無かった。
何故だろう?
確かに。
あの母親とあの父親らしき男を持っていた、と思わざるを得なかったのだから。
私は一応お母様が「身体が弱いにも関わらず私を産んでくれた」という一点だけで、悪い気持ちはしない。
感謝できる。
父に関してはある程度「仕方ないよな」という気分もあった。
「母を愛していたならば」という前提つきならば。
それに比べると、ミュゼットの方が捨てられた感は強かっただろう。
ともかく現在の疑問が全て解決した暁には、私も彼女も確実に重荷が消えることになる。
たぶん私がしたいのは、復讐というよりは、「排除」だ。
この家において、私は使用人達の中では受け容れられている。
確かに男爵令嬢としての立場で扱われてはいないが、生きていく術は皆に教わっている。
では何をしたいのか、と言えば。
やはり父と義母という、自分の生存に危険な要素を排除したい。
そういうことなんだと思う。
ミュゼットの方がよほど「復讐」感は強いのではないだろうか?
そんなことを夜、つらつらと考えていたら、ファデットがまだ起きていたのか、と部屋にやってきた。
「なるほど、アリサ嬢さんはそう思うと」
「それで勢いが無くなってしまうという訳ではないんだけど。だって、何だかんだ言って一応雇い人としての契約を結んでいて、家族がちゃんと他に居る皆より、私の方がいつ消されても判らない立場なんだもの」
「うん、まあ、だったらもうちょっと危機意識を持ちましょうよ。それこそアリサ嬢さんは、それでも一応男爵令嬢なので、いきなり何処かに嫁がされるって可能性もあるんだし!」
「あ、それは嫌」
「でしょう! だったら気合い入れていきましょう!」
そうね、と私はファデットと背中を叩き合った。
*
そんなある日、家に大きな荷物がやってきた。
業者が運び込むと、階上から夫人が既に気付いていたのか、軽やかな足取りで下りてきた。
「まあ! やっと来たのね!」
窓掃除をしながら、その様子をうかがっていた私達は、夫人のあまりに浮かれた様子が気になった。
自ら受け取りをし、その上で、すぐに開けてもらう様に業者に指示する。
どうやら壊れ物の様で、開けるにも手順が要るらしい。
木箱の釘をいちいち外し、その中の詰め物を広げ……
「これよ」
ふふふ、と彼女は露骨な笑みを浮かべる。
そこに現れたのは、腹の高さほどある極彩色の壺だった。
人一人すっぽり入っていてもおかしくない程の。
私は他のメイドにこそっとつぶやく。
「……そんなに壺がお好きだったかしら」
「少なくとも私は知らないけど……」
この家にも特にそんなものは今まで無かった。
何故だろう?
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