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62 無意識の共依存
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えーと。
私は言われたことの意味を何度か自分の中で整頓する。
整頓、という程整頓するものもない。
サラダが言っていたのは、一つのことだけなのだ。
私のことが好きだから、私が傷つくのを見たくない。
それは判る。
判るのだが。
私にどう反応しろ、というのだろう。
くたくた、とそのまま玄関に座り込む。
冷静になれ、と自分に命令する。
サラダが言っているのは、別にややこしいことではないのだ。
友達だから、心配しているのだ。
それ以上のことじゃない。ないはずだ。
だけど彼女は私がのよりさんとしばらくそういう仲だったことを知っている。
そういう私であることを知っていた上で、あんなことを言うのだろうか。
どうしよう、と思った。
しばらく頭の中がまっ白になった。
ぼうっとしたまま、Pタイルのマス目を数えていた。
数えているのだが、それが幾つなのか、どうしてもまとまらない。
12を十五回ほど数えた時に、ぴんぽん、とチャイムが鳴った。
私ははっとして立ち上がる。
のぞき穴から見ると、めぐみ君が立っていた。
彼には合い鍵を渡していない。
所在なげに立っている彼をそのままにはしておけない。
私は鍵を開けた。
「ただいま、帰りました」
ほうっ、と私は自分の表情が緩むのを感じる。
彼はここからバイトに通っていた。
ずいぶんとその仕事ぶりは熱心で、私から見ても感心するくらいだった。
何か目的がある時、皆仕事の内容になど全く関係なく熱心になる。
彼にも何か目的があるのだろう。それはサラダが言うように、いつか私のこの部屋を出ていくことであることは、まず間違いはない。
いつまでもここに居ることはできない、と彼もきっと言うのだ。
そして私は置いて行かれる。
それは判っている。
判っているというのに。
疲れて帰ってきたのに、それでも笑顔を見せようとするこの子に、食事を作ってやったり、一緒にお茶を呑んだり、時には抱きしめたり抱きしめられたりすることから、離れられない。
向こうがそれを必要としていることが判るから、余計に、私はそれを利用してしまう。
自分の中の、ぽっかりと空いた部分を、それで埋めようとしてしまうのだ。
少なくとも、彼が目の前で必要としているのは私なのだ。
私しか、いないのだ。
他の誰でもない。
私が兄貴と似た部分があろうが無かろうが、とにかく、私なのだ。
私が彼に必要とされているのだ。
その目で。
その手で。
そこに関係は必要無いのかもしれない。
たぶん必要は無い。
少なくとも私は必要としていない。
抱きしめたり抱きしめられたりすることは欲しいが、それ以上である必要は無い。
ただ、それ以上で無いと、何となく落ち着かないから、そうしている時もあるが、―――それだけだ。
無くて済むなら、セックスなんて要らない。
私は言われたことの意味を何度か自分の中で整頓する。
整頓、という程整頓するものもない。
サラダが言っていたのは、一つのことだけなのだ。
私のことが好きだから、私が傷つくのを見たくない。
それは判る。
判るのだが。
私にどう反応しろ、というのだろう。
くたくた、とそのまま玄関に座り込む。
冷静になれ、と自分に命令する。
サラダが言っているのは、別にややこしいことではないのだ。
友達だから、心配しているのだ。
それ以上のことじゃない。ないはずだ。
だけど彼女は私がのよりさんとしばらくそういう仲だったことを知っている。
そういう私であることを知っていた上で、あんなことを言うのだろうか。
どうしよう、と思った。
しばらく頭の中がまっ白になった。
ぼうっとしたまま、Pタイルのマス目を数えていた。
数えているのだが、それが幾つなのか、どうしてもまとまらない。
12を十五回ほど数えた時に、ぴんぽん、とチャイムが鳴った。
私ははっとして立ち上がる。
のぞき穴から見ると、めぐみ君が立っていた。
彼には合い鍵を渡していない。
所在なげに立っている彼をそのままにはしておけない。
私は鍵を開けた。
「ただいま、帰りました」
ほうっ、と私は自分の表情が緩むのを感じる。
彼はここからバイトに通っていた。
ずいぶんとその仕事ぶりは熱心で、私から見ても感心するくらいだった。
何か目的がある時、皆仕事の内容になど全く関係なく熱心になる。
彼にも何か目的があるのだろう。それはサラダが言うように、いつか私のこの部屋を出ていくことであることは、まず間違いはない。
いつまでもここに居ることはできない、と彼もきっと言うのだ。
そして私は置いて行かれる。
それは判っている。
判っているというのに。
疲れて帰ってきたのに、それでも笑顔を見せようとするこの子に、食事を作ってやったり、一緒にお茶を呑んだり、時には抱きしめたり抱きしめられたりすることから、離れられない。
向こうがそれを必要としていることが判るから、余計に、私はそれを利用してしまう。
自分の中の、ぽっかりと空いた部分を、それで埋めようとしてしまうのだ。
少なくとも、彼が目の前で必要としているのは私なのだ。
私しか、いないのだ。
他の誰でもない。
私が兄貴と似た部分があろうが無かろうが、とにかく、私なのだ。
私が彼に必要とされているのだ。
その目で。
その手で。
そこに関係は必要無いのかもしれない。
たぶん必要は無い。
少なくとも私は必要としていない。
抱きしめたり抱きしめられたりすることは欲しいが、それ以上である必要は無い。
ただ、それ以上で無いと、何となく落ち着かないから、そうしている時もあるが、―――それだけだ。
無くて済むなら、セックスなんて要らない。
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