どうせなら日々のごはんは貴女と一緒に

江戸川ばた散歩

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53 楽しい夢と結婚というものと

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 こうやって彼女と話を進めていくことが最近本当に多い。
 何処までが夢想で、何処までが実現可能な夢なのか、境目が最近は判らなくなってきている。
 できるのではないか、という気持ちも、実は最近、ふつふつと自分の中で湧きつつあるのだ。
 ただ、何が必要なのか、どんな資格が必要なのか、そんなことがまだぼんやりとしている。
 見ようとしていない。
 そんな気持ちの時には、始めてはいけないのだ。
 自分の経験がそう言っている。そんな状態で始めたら、失敗するのは目に見えている。
 確かに夢は夢だし、失敗する可能性もあるだが、夢であるだけに、絶対に失敗するような状態で始めてはいけないのだ。
 だからまだ、サラダがどんなに熱心に言おうと、私の中ではそれはあくまで夢なのだ。
 だがそれは、どんなに楽しい夢だろう。
 時々、もしかして自分は結婚したいのではないだろうか、という疑問が湧くことすらある。
 それは誰か好きなひとと一緒になる、という意味ではない。
 正確に言えば、「家庭に入る」だ。
 台所という自分の城で、好きな料理をしたり、部屋の中を自由に作り替えたり、そんなことばかりひねもすやっているような。
 確かにそれを望んでいる自分が無くもない。
 上司は鬱陶しい訳だし。
 ただ、その状態のために、誰か男と結婚することを考えると―――

 それは面倒だ、と思ってしまう自分が居るのだ。

 好きな男が居れば、その考えは現実味を帯びてくるが、私にとってはそうではない。
 別に男が嫌い、という訳ではない。
 だがそれならサラダと暮らしている方がずっといいのではないか。
 そう、よく考えてみると、私には結婚願望はない。
 別に恋愛に失望しているとか、男が嫌いという訳ではないのだが、何でそういう形を取らなくてはならないのか、理解しにくいのだ。
 考えてみれば、小さな頃から、それに夢は持っていなかった。
 周りの女の子が口にするような、結婚「式」に対する憧れは無かった。
 結婚の身近な手本は、両親だ。
 「式」のあとは、結局はああいう日常になってしまうのかなあ、と思ってしまうと、夢もへったくれもない。
 だからそこまで普通は子供は予測しないものだ、と言われてしまえばそれまでだが、あいにく私はそういう所に妙に見通しがたってしまう子供だったのだ。
 ふとそんなことを考えてたことを思い出したので、サラダにもついでに聞いてみた。

「けっこんー?」

 何でまた、という顔を彼女はする。

「まあ、その時にしたかったらねー」
「その時?」
「だから、たまたまその時付き合ってる男と、その気になったら、というとこかなあ」
「ふうん」

 彼女にもそういう願望はあるんだ、と私は少し不思議だった。
 と同時に軽い失望のようなものも心をよぎる。

「でもやっぱ、どっちでもいいかなあ。そういう時は来ないかもしれないし、だいたいあたしの付き合う奴って結婚なんて考えてない奴がほとんどだし」
「そう?」
「うん。だいたい自分の好きなことでみんな生きてるから、家庭持つってこと、考えられないみたいなの。やっぱり何か、家庭持ちになってしまうと、フットワーク重くなるんじゃないかなあ」

 それはそうかもしれない。

「ミサキさんはどうなの?」
「あたし? あたしはまあ……」
「まあミサキさんは、あんまり結婚できるひとと出会わないもんね」

 私は黙って肩をすくめた。
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