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51 幻想の中の「可愛らしい女の子」
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「花?」
ああ、と兄貴が電話の向こうでうなづく気配があった。
『花と、ケーキ。お前どういうのがいいと思う?』
「何兄貴、いつから甘いもの食べられるようになったのよ」
そんな単語が彼から出ることあたり、私にはひどく不思議だったのだけど。
『や、めぐみの誕生日だし』
ああ、と私は大きくうなづいた。
この男がそんなことを几帳面に覚えているとは!
何せ先日聞いた私すら忘れていたというのに。
しかし確かに彼は、その時付き合っていたひとには、それなりのことをしてはいたようだ。
記念日好き、という訳ではないが、付き合ってた期間に誕生日だのクリスマスだのバレンタインだの、国民的行事が存在する時には、意外にもそれにならったりしているらしい。
まあ確かに、押さえておけば関係がスムーズに行くことではあるが、兄貴の性格を考えると非常に不思議ではある。
だいたい預金通帳をちゃんと保管しているのだ。
しかもその中には、ちゃんと定期で預金がされている!
それはいずれ出そうと思っているインディーズの音源の為の資金なのだろうが……
その貯め方がちゃんと毎月毎月こつこつしているあたり、不思議と言えば不思議なのだ。
もしかして、音楽ではなくビジネスに才能が向いていたら、とてつもなく女にもてるばりばりのやり手になっているのかもしれない。
今でももてることはもてるのだが、それはあくまで「バンド好き」の女の子の範疇に過ぎない。
そうではなく、もっと広範囲な。
たまたまそれが音楽という、決して大多数の人間がするものではないことから、世間から外れた存在になっているが、……もしかして……
「花は店で適当に選んでもらったら? 女の子にあげるとか何とか言えば、選んでくれるでしょ。ケーキは」
私はふと、この間のクリスマスにサラダと食べた「CUTPLATE」のケーキのことを思い出した。
「ああそう、兄貴、あまり甘くない奴だったら食べられるよね?」
ああ、と電話の向こうの声は答える。
「CUTPLATEってカフェで出してるケーキが、あんまり甘くない…… って言うか、甘いことは甘いんだけど、果物のとのバランスがいいから、兄貴でも食えそうな奴だったけど」
教えてくれ、と彼は言った。
あそこなら、兄貴達の部屋からも歩いて行けないこともない。
夜遅くまで開いてもいるから、彼がバイトから帰ってきた時に取りに行っても大丈夫だろう。
「めぐみちゃんは甘いもの好きだった?」
『あいつは好きだよ』
だろうね、と私はうなづいた。
そういうイメージだ。「女の子」のような。
それは実際の女の子がどうの、というのではなく、幻想の中の「女の子」のイメージだ。
私がめぐみ君に対して「可愛らしい」と思った部分でもある。
だけどそれは、いつまでも続くものだろうか。
兄貴はきっと今までの相手より大事にしているだろう。
そうでなくて、こんな長く続くはずがない。
もう一年にもなるのだ。
バンドは順調だった。
めぐみ君もどんどんヴォーカルに磨きが掛かっているらしい。
最近見に行かないので何だが。
何となく、歌っている彼の姿はひどく私の目から見て、痛々しかったのだ。
ああ、と兄貴が電話の向こうでうなづく気配があった。
『花と、ケーキ。お前どういうのがいいと思う?』
「何兄貴、いつから甘いもの食べられるようになったのよ」
そんな単語が彼から出ることあたり、私にはひどく不思議だったのだけど。
『や、めぐみの誕生日だし』
ああ、と私は大きくうなづいた。
この男がそんなことを几帳面に覚えているとは!
何せ先日聞いた私すら忘れていたというのに。
しかし確かに彼は、その時付き合っていたひとには、それなりのことをしてはいたようだ。
記念日好き、という訳ではないが、付き合ってた期間に誕生日だのクリスマスだのバレンタインだの、国民的行事が存在する時には、意外にもそれにならったりしているらしい。
まあ確かに、押さえておけば関係がスムーズに行くことではあるが、兄貴の性格を考えると非常に不思議ではある。
だいたい預金通帳をちゃんと保管しているのだ。
しかもその中には、ちゃんと定期で預金がされている!
それはいずれ出そうと思っているインディーズの音源の為の資金なのだろうが……
その貯め方がちゃんと毎月毎月こつこつしているあたり、不思議と言えば不思議なのだ。
もしかして、音楽ではなくビジネスに才能が向いていたら、とてつもなく女にもてるばりばりのやり手になっているのかもしれない。
今でももてることはもてるのだが、それはあくまで「バンド好き」の女の子の範疇に過ぎない。
そうではなく、もっと広範囲な。
たまたまそれが音楽という、決して大多数の人間がするものではないことから、世間から外れた存在になっているが、……もしかして……
「花は店で適当に選んでもらったら? 女の子にあげるとか何とか言えば、選んでくれるでしょ。ケーキは」
私はふと、この間のクリスマスにサラダと食べた「CUTPLATE」のケーキのことを思い出した。
「ああそう、兄貴、あまり甘くない奴だったら食べられるよね?」
ああ、と電話の向こうの声は答える。
「CUTPLATEってカフェで出してるケーキが、あんまり甘くない…… って言うか、甘いことは甘いんだけど、果物のとのバランスがいいから、兄貴でも食えそうな奴だったけど」
教えてくれ、と彼は言った。
あそこなら、兄貴達の部屋からも歩いて行けないこともない。
夜遅くまで開いてもいるから、彼がバイトから帰ってきた時に取りに行っても大丈夫だろう。
「めぐみちゃんは甘いもの好きだった?」
『あいつは好きだよ』
だろうね、と私はうなづいた。
そういうイメージだ。「女の子」のような。
それは実際の女の子がどうの、というのではなく、幻想の中の「女の子」のイメージだ。
私がめぐみ君に対して「可愛らしい」と思った部分でもある。
だけどそれは、いつまでも続くものだろうか。
兄貴はきっと今までの相手より大事にしているだろう。
そうでなくて、こんな長く続くはずがない。
もう一年にもなるのだ。
バンドは順調だった。
めぐみ君もどんどんヴォーカルに磨きが掛かっているらしい。
最近見に行かないので何だが。
何となく、歌っている彼の姿はひどく私の目から見て、痛々しかったのだ。
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