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44 サラダとだらだらと②
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言っておくが、OLというのは決して安定した地位ではない。
結婚をほのめかせば、相変わらずそれは「近いうちの退社」につながる。
ボス的存在の彼女程になってしまえば別だが、私にはその意欲は無い。
意欲が無くても、ある程度は居られる。
それがこの不安定さの代わりに手に入れられる地位なのだ。
男にはない、女の奇妙な特権だ。
男でこの位置を手に入れようと思えば、間違いなくフリーターだろう。
男も女も、こんな曖昧な位置をキープしようと思うと、必ず周囲から横やりが入るらしい。ふう。
「どしたの?」
「んー? どうして楽しく暮らしてくだけじゃ駄目なのかな、って」
こうやって、高価でなくても、美味しい食事をして、友達と一緒に、お気に入りの空間で、ゆったりと過ごす。
私にとっては、それが一番の時間。
サラダは何やら、それ以上に何かを「作る」ことが好きらしいが、私の場合はそれで充分だ。
それ以上のことは要らない。
それを得るためにに必死になるのも嫌だ。
何でそれではいけないんだろう?
「ダメじゃないでしょ。やり方次第」
「やり方?」
「っーか、考え方次第」
もう一杯お茶ちょうだい、とサラダはカップを突き出す。
「考え方の根っこが違うんだもの。あのひと達は、そういう根性とか何とやらが好きで、そーゆーので疲れることが好きなんだよ。そうゆうのを快感だって思うんだよね。だから人にもそれをやって欲しいんだよね。その方法で上手く行くと、それで安心するんだよ。まあそれは、あたし等も変わらないんだけどさあ」
「ふうん?」
「あのひと達はあたし達のような楽しむポイントはわかんないと思うもん。それにああゆー人達が、雑貨ショップに居るのも変じゃん」
「それは」
私は吹き出した。
TVに出ていたのは結構ごついおじさん達だったのだ。
「あたし達はまだ若くて、女の子で、ふわふわしたものが好きなものが似合うって特権があるんだよ。特権はせいぜい利用させてもらわなくちゃ」
なるほど、と私は思う。
「なるほど、あの立て直しのおじさんには無い特権があたし達にはあるって訳ね」
「そういう社会だからねー」
しゃらっ、と彼女は言う。
「レッテルを貼って安心してるんだよ。だからこのひとは自分の知ってるこうゆうタイプ、って貼れないひとが出てくると、追い出したくなるんだよ。まーね、そりゃあ、仕事には好みと適性ってのがあるからさー、それが合って楽しんでできれば一番いいよね。それだったら、それが戦場だって構わないと思うもん。あんたの兄貴も、そうなんじゃない?」
「兄貴はね。うん、奴は、バンドが仕事にできたら、きっとそれに全部かけるよ。っーか、今だって全部かけてるけどね」
それは確かだ。
そしてうらやましい部分だ。
彼はもしどれだけバイト先でその長い金髪を悪趣味だ時代遅れだ、と思われようが、バンドが忙しくて休みを入れようが、そのせいで何日間か、便所そうじの当番が回ってこようが、何の意にも介さないのである。
他のフリーター達にとっては、嫌なことで回避したいことだろうが、兄貴には他の仕事と何の比重も変わらないのだ。
正確に言えば、彼は、ギターと音楽以外のものは、全部同じなのだ。
それをうらやましい、と思う反面、のよりさんの言ったことが少し思い出された。
可哀相な、ひと。
結婚をほのめかせば、相変わらずそれは「近いうちの退社」につながる。
ボス的存在の彼女程になってしまえば別だが、私にはその意欲は無い。
意欲が無くても、ある程度は居られる。
それがこの不安定さの代わりに手に入れられる地位なのだ。
男にはない、女の奇妙な特権だ。
男でこの位置を手に入れようと思えば、間違いなくフリーターだろう。
男も女も、こんな曖昧な位置をキープしようと思うと、必ず周囲から横やりが入るらしい。ふう。
「どしたの?」
「んー? どうして楽しく暮らしてくだけじゃ駄目なのかな、って」
こうやって、高価でなくても、美味しい食事をして、友達と一緒に、お気に入りの空間で、ゆったりと過ごす。
私にとっては、それが一番の時間。
サラダは何やら、それ以上に何かを「作る」ことが好きらしいが、私の場合はそれで充分だ。
それ以上のことは要らない。
それを得るためにに必死になるのも嫌だ。
何でそれではいけないんだろう?
「ダメじゃないでしょ。やり方次第」
「やり方?」
「っーか、考え方次第」
もう一杯お茶ちょうだい、とサラダはカップを突き出す。
「考え方の根っこが違うんだもの。あのひと達は、そういう根性とか何とやらが好きで、そーゆーので疲れることが好きなんだよ。そうゆうのを快感だって思うんだよね。だから人にもそれをやって欲しいんだよね。その方法で上手く行くと、それで安心するんだよ。まあそれは、あたし等も変わらないんだけどさあ」
「ふうん?」
「あのひと達はあたし達のような楽しむポイントはわかんないと思うもん。それにああゆー人達が、雑貨ショップに居るのも変じゃん」
「それは」
私は吹き出した。
TVに出ていたのは結構ごついおじさん達だったのだ。
「あたし達はまだ若くて、女の子で、ふわふわしたものが好きなものが似合うって特権があるんだよ。特権はせいぜい利用させてもらわなくちゃ」
なるほど、と私は思う。
「なるほど、あの立て直しのおじさんには無い特権があたし達にはあるって訳ね」
「そういう社会だからねー」
しゃらっ、と彼女は言う。
「レッテルを貼って安心してるんだよ。だからこのひとは自分の知ってるこうゆうタイプ、って貼れないひとが出てくると、追い出したくなるんだよ。まーね、そりゃあ、仕事には好みと適性ってのがあるからさー、それが合って楽しんでできれば一番いいよね。それだったら、それが戦場だって構わないと思うもん。あんたの兄貴も、そうなんじゃない?」
「兄貴はね。うん、奴は、バンドが仕事にできたら、きっとそれに全部かけるよ。っーか、今だって全部かけてるけどね」
それは確かだ。
そしてうらやましい部分だ。
彼はもしどれだけバイト先でその長い金髪を悪趣味だ時代遅れだ、と思われようが、バンドが忙しくて休みを入れようが、そのせいで何日間か、便所そうじの当番が回ってこようが、何の意にも介さないのである。
他のフリーター達にとっては、嫌なことで回避したいことだろうが、兄貴には他の仕事と何の比重も変わらないのだ。
正確に言えば、彼は、ギターと音楽以外のものは、全部同じなのだ。
それをうらやましい、と思う反面、のよりさんの言ったことが少し思い出された。
可哀相な、ひと。
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