どうせなら日々のごはんは貴女と一緒に

江戸川ばた散歩

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27 ハコザキ君は分析する

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 自分の部屋に戻ると、TVの音が聞こえてきた。
 音量が上がっている。

「お帰り」
「ただいま…… じゃなくて」

 六畳の方で、ハコザキ君はぼんやりとTVを眺めていた。
 土曜の朝の番組は、ローカルな情報番組が多い。
 そんな他愛もないローカルな名所やらショップを、けたたましい女性アナウンサーが紹介している。
 彼はそれを見ているのか見ていないのか、――ぼんやりと眺めていた。

「ねえ、ハコザキ君お腹空かない?」
「え?」
「もう少しして、隣の子が来るから、そしたらちょっと、朝ご飯食べに行こうよ」
「って俺、お金」
「だからあなた、借りに来たんでしょ? ついでよ。駅近くのコーヒーショップだから、ついでにそこから帰ればいいわ」

 ありがとう、と彼は言った。

「電車代だけ? 足りる?」
「うん。うちの最寄りの駅からは歩いてそう掛からないからね」
「なら良かった」

 本当に。

「で、ハコザキ君、兄貴には今日はもう、会わない気?」
「今日、というか」

 彼は苦笑する。

「俺はクビになったんだよ。ようするに。だったら、そうそう簡単に顔を合わさない方がいいよね」

 あっさりと言う。

「でも昨日そういうことがあったばかりじゃない」
「彼が俺をバンドに連れ込んだのも唐突だったよ。同じ勢いがあったもの。俺には予想がつく。のよりがどう出るかは判らないけれど…… ケンショーの勢いに、あいつが呑まれないなんて保証はないんだ」
「勢い、でそうなってしまうの?」
「美咲ちゃんは、あいつの勢いが絶対に掛からないひとだからさ、そう言えるんだよ」

 私は眉をしかめた。

「ケンショーにとってはさ、声なんだ。結局全部。声さえ気に入ったら、外見も性別も何も関係ないだろ。その声が欲しくてこれでもかとばかりに迫るんだ。だけど、手に入れられないのは困るから、無理強いはしない。手に入れることが、何よりも大切だから、それが駄目になってしまうようなことはしないんだ。あれは天性だよね」

 ……そう…… なんだろうか。
 私はそんな兄貴の姿は知らない。

「で、結局、ほだされてしまうのは、こっちなんだ。俺が、そうなってしまったんだぜ? のよりは女だ。男の俺すらそうなってしまう勢いだっていうのにさ、のよりがそれを拒めるとは思わないよ。別にケンショーは嫌いなタイプじゃないんだ。あいつ」
「そうなの?」
「だから、美咲ちゃんには絶対に掛からないから」

 だから判らないんだよ、とハコザキ君は続けた。
 それは、私が彼の妹だから、ということだろうか。
 それとも声が対象外、ということだろうか。
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