どうせなら日々のごはんは貴女と一緒に

江戸川ばた散歩

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50 めぐみ君はのよりさんに会いに行くらしい。

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 数日後、今度はそのめぐみ君の方が、私にのよりさんやハコザキ君のことを聞いてきた。
 私は彼をミスドに誘った。
 人前に立つことをやってる割に、彼は上京した頃とあまり変わらずにおしゃれなカフェとかは苦手らしい。
 どうやら彼はのよりさんに直接会うつもりらしい。
 だからその前に、どういう人か私に聞いてみたかったのだ、という。

「どういう人って、一口では言い表せないけれど」

 私は言葉を選んだ。
 無論彼女と私が多少なりとも関係があったなんてことは言わない。
 それは私のプライヴェイトなことで、彼にわざわざ聞かせることではない。

「だけどどうして、のよりさんに会いたいの? 確かに彼女、昔兄貴と付き合ってたこともあるんでしょうけど、もう過去のことよ」 
「うん、それは判ってるんだけど」

 彼は言葉を濁した。

「めぐみちゃん、そんなに兄貴のことが、好き?」

 少し声をひそめて言う。
 春先の休日のミスドには、彼のような可愛い男の子に目を付けて聞き耳を立てる女の子というのが必ず居るのだ。

「うん」

 めぐみ君はうなづいた。

「何で?」

 そして首をかしげた。
 何でだろう、と言いたげに。
 いいわごめん、と私は口にする。

「そういうのって、理由らしい理由ってないものだもんね」

 言っていて、そらぞらしいと思う。
 自分で納得していない台詞というのは、どうしてこんなに言っていて嫌な気分がするんだろう。

「あのさ、美咲さん」

 アメリカンコーヒーのお代わりを店員からもらってから、彼は口を開いた。

「何かね、引き込まれるんだ」
「引き込まれる?」
「うん。すごく、強引でしょ、ケンショーは」
「そう…… よね」
「僕はこうゆう性格だから、人に引っ張ってもらえて、ようやく新しい景色が見えるんだよね。だから何って言うんだろ。奴に引っ張ってもらって、見せてもらった世界が、思いの他楽しかったって言うか……」

 何って言えばいいんだろう、と彼は言葉を探す。

「何か、鮮やかなんだ。奴に引っ張られて、見える世界が」

 ふと、のよりさんが部屋に居た時の自分の視界を思い出す。
 何故なのか判らないままに、部屋の中が、通勤の道ばたが、空が、木々が、ひどく明るく感じられた。

「ごめん、やっぱり上手く言えない」
「ううんこっちこそ」

 それは私にしたって同じなのだから。

「もうじき二十歳になるって言うのに、何かいつまでも子供みたいで、ごめんね」
「あら、もうじき誕生日?」

 うん、と彼はそう遠くない日を口にした。
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