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19 兄貴のアパート来襲
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しかしよく考えてみれば、そんな私達より、もっと極端な奴が居た。
私の住むマンションから、小さな公園をはさんだ向こう側に兄貴の住むアパートがある。
確か家賃が5万足らずとか言っていた。
よく見つけたものだ、と私は思ったものだ。
外付けの、二階に向かう階段を上ると、がんがん、と音がする。
風向きによっては雨が吹き込む通路を抜けて、彼の部屋の前に立った。
はて一体私は何しに来たんだっけ。
確たる理由というものは無い。
別に無くても、様子を見に来たとか何とか言えばいいのだろうが。
ただ実際、私がやってきたのは出歯亀的な興味なのだから。
ともかくチャイムを鳴らした。
ぴんぽんぴんぽん。
居れば一分足らずで彼は出てくる。
出なければ居ない。
それでいい。
一分経って、出て来ない。
じゃあ居ないのか、と思って私は引き返そうとした。
ん? 気配はある。
首を傾げて、もう一度チャレンジする。ぴんぽんぴんぽん。
「どなたですかー?」
おお、この声は。
「美咲です。留守番ですか?」
わざとらしいが、あえて言ってみる。
案の定、扉は開いた。
小柄な青年が、そこには居た。
「ああ美咲ちゃん。ケンショーは……」
「まだ寝てる?」
にっこり、と私は笑顔を作る。
「あ、昨日ちょっと皆で呑んでて」
「でしょうね。あれ、じゃあ他の人達も?」
白々しい。
「や、別にここで呑んだ訳じゃあないから」
うんうんうん、と私は大きくうなづく。
ちょっと失礼、と私は中に入り込んだ。
確かにそうだ。
散らばっている靴も、兄貴と、ハコザキ君のものしか無かった。
「おい誰か来たのかよ?」
狭い部屋というものは、こういう時に不便だ。
ベッドが部屋の奥にある、と言ったところで丸見えなのだ。
「はあい」
ベッドの上には、上半身を起こした兄貴が居た。
頼むからそのままの姿勢を崩すなよ、と内心つぶやく。
上半身は裸で、その下も何となく予想がついた。
まあよくある光景だ。
だから驚かない。
今更兄貴の裸なんぞ見たところでどうってことは無い。
ただ朝っぱらから、そんな露骨なものは見たくないだけだ。
女の子のふわふわした胸とかだったらともかく、何がかなしゅーで。
「その声…… 美咲か?」
兄貴は目を細めてこちらを向く。
彼の視力では、六畳間の向こうに居る私の判別はできない。
「おはよー兄貴。また、なの?」
「……またとは何だよまたとは……」
ぶるん、と彼は頭を振る。
低血圧なのだ。
起き抜けはこれでもか、とばかりに機嫌が悪い。
長い金髪が顔の前と言わず後ろと言わず、少し間違えば絡まってしまいそうな程だ。
基本的にはさらさらヘアであるのが救いと言えば救いだ。
猫っ毛が入ってでもいたら、直すのに一苦労である。
「え、ええと、美咲ちゃん、お茶でもどう?」
「ありがと」
私は再びにっこりと笑った。
私の住むマンションから、小さな公園をはさんだ向こう側に兄貴の住むアパートがある。
確か家賃が5万足らずとか言っていた。
よく見つけたものだ、と私は思ったものだ。
外付けの、二階に向かう階段を上ると、がんがん、と音がする。
風向きによっては雨が吹き込む通路を抜けて、彼の部屋の前に立った。
はて一体私は何しに来たんだっけ。
確たる理由というものは無い。
別に無くても、様子を見に来たとか何とか言えばいいのだろうが。
ただ実際、私がやってきたのは出歯亀的な興味なのだから。
ともかくチャイムを鳴らした。
ぴんぽんぴんぽん。
居れば一分足らずで彼は出てくる。
出なければ居ない。
それでいい。
一分経って、出て来ない。
じゃあ居ないのか、と思って私は引き返そうとした。
ん? 気配はある。
首を傾げて、もう一度チャレンジする。ぴんぽんぴんぽん。
「どなたですかー?」
おお、この声は。
「美咲です。留守番ですか?」
わざとらしいが、あえて言ってみる。
案の定、扉は開いた。
小柄な青年が、そこには居た。
「ああ美咲ちゃん。ケンショーは……」
「まだ寝てる?」
にっこり、と私は笑顔を作る。
「あ、昨日ちょっと皆で呑んでて」
「でしょうね。あれ、じゃあ他の人達も?」
白々しい。
「や、別にここで呑んだ訳じゃあないから」
うんうんうん、と私は大きくうなづく。
ちょっと失礼、と私は中に入り込んだ。
確かにそうだ。
散らばっている靴も、兄貴と、ハコザキ君のものしか無かった。
「おい誰か来たのかよ?」
狭い部屋というものは、こういう時に不便だ。
ベッドが部屋の奥にある、と言ったところで丸見えなのだ。
「はあい」
ベッドの上には、上半身を起こした兄貴が居た。
頼むからそのままの姿勢を崩すなよ、と内心つぶやく。
上半身は裸で、その下も何となく予想がついた。
まあよくある光景だ。
だから驚かない。
今更兄貴の裸なんぞ見たところでどうってことは無い。
ただ朝っぱらから、そんな露骨なものは見たくないだけだ。
女の子のふわふわした胸とかだったらともかく、何がかなしゅーで。
「その声…… 美咲か?」
兄貴は目を細めてこちらを向く。
彼の視力では、六畳間の向こうに居る私の判別はできない。
「おはよー兄貴。また、なの?」
「……またとは何だよまたとは……」
ぶるん、と彼は頭を振る。
低血圧なのだ。
起き抜けはこれでもか、とばかりに機嫌が悪い。
長い金髪が顔の前と言わず後ろと言わず、少し間違えば絡まってしまいそうな程だ。
基本的にはさらさらヘアであるのが救いと言えば救いだ。
猫っ毛が入ってでもいたら、直すのに一苦労である。
「え、ええと、美咲ちゃん、お茶でもどう?」
「ありがと」
私は再びにっこりと笑った。
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