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6 バンドのギタリストをやっている兄という男
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昨日ではなく、その前の土曜日、ライヴハウスに彼女を連れて行った。
私は滅多に行かない。
ただ、兄貴からチケットを押しつけられていたのだから仕方がない。
兄貴はRINGERというバンドでギターを弾いている。
いや、自分がギターを弾くためのバンドを作った、という方が正しいのかもしれない。
奴は中学高校と音楽にはまっていた。
だけどここまで行くとはさすがに私は思っていなかった。
奴は高校卒業と同時に、家を飛び出した。
それから約四年、音信不通。
行方が知れなかった。
当初は怒って焦った両親も、私が短大を卒業したあたりには、既に何も言わなくなっていた。
仕方ない、と思ったのかもしれない。
しかし私には仕方なくなんてなかった。
だから東京に出たらすぐに奴を捜した。
音楽を、バンドをするために家を飛び出した訳だから、探す方向は限られてくる。
昔、聞いていた音楽から、方向性は何となく判っていた。
そこからだんだんと捜索の輪を縮めていったのだ。
伊達に高校時代、学年で毎度ベスト5の成績を取っていた訳ではない。
四大ではななく、短大に行くと言ったら担任に嘆かれたものだ。
そしてある春の日、ライヴハウスから突き止めた奴の部屋を訪ねた。
驚いたことに、私の今のこの部屋とそう遠くなかった。
ちなみに私が今の部屋を選んだのは、駅からの距離と、家賃と広さの関係、それに日当たりだった。
奴の部屋は、私より、サラダの部屋よりも小さい。
1Kは1Kなのだが、マンションではなく、アパートの1Kだ。
鉄筋ではなく鉄骨なのだ。
隣の部屋の音が露骨に響いてくるような。
気を付けないと、扉の木の端で棘をさしてしまうとか。
開けたら部屋が丸見え、とか。
六畳にそのままキッチンがくっついているような。
そんな部屋だった。
さすがに扉を開けた時、奴は驚いた。
もっとも私も驚いた。
記憶の中の奴も髪は長かったが、少なくとも腰まであるような男ではなかったはずだ。
しかも金髪だ。
悪趣味だ。
もう少し何とかしようがないのか、と思ったが、子供の頃から彼が私のいうことに本当の意味で耳を貸したことなんて無いので、言わなかった。
代わりに私の口から出たのは、こんな言葉だった。
「何とかまだ生きてるじゃない」
本音だった。
死んでいて欲しい、と思っていた訳ではない。
けどロクでもない生活をしているだろう、とは思っていた。
そして、そうしていて欲しい、と思っていた。
私は滅多に行かない。
ただ、兄貴からチケットを押しつけられていたのだから仕方がない。
兄貴はRINGERというバンドでギターを弾いている。
いや、自分がギターを弾くためのバンドを作った、という方が正しいのかもしれない。
奴は中学高校と音楽にはまっていた。
だけどここまで行くとはさすがに私は思っていなかった。
奴は高校卒業と同時に、家を飛び出した。
それから約四年、音信不通。
行方が知れなかった。
当初は怒って焦った両親も、私が短大を卒業したあたりには、既に何も言わなくなっていた。
仕方ない、と思ったのかもしれない。
しかし私には仕方なくなんてなかった。
だから東京に出たらすぐに奴を捜した。
音楽を、バンドをするために家を飛び出した訳だから、探す方向は限られてくる。
昔、聞いていた音楽から、方向性は何となく判っていた。
そこからだんだんと捜索の輪を縮めていったのだ。
伊達に高校時代、学年で毎度ベスト5の成績を取っていた訳ではない。
四大ではななく、短大に行くと言ったら担任に嘆かれたものだ。
そしてある春の日、ライヴハウスから突き止めた奴の部屋を訪ねた。
驚いたことに、私の今のこの部屋とそう遠くなかった。
ちなみに私が今の部屋を選んだのは、駅からの距離と、家賃と広さの関係、それに日当たりだった。
奴の部屋は、私より、サラダの部屋よりも小さい。
1Kは1Kなのだが、マンションではなく、アパートの1Kだ。
鉄筋ではなく鉄骨なのだ。
隣の部屋の音が露骨に響いてくるような。
気を付けないと、扉の木の端で棘をさしてしまうとか。
開けたら部屋が丸見え、とか。
六畳にそのままキッチンがくっついているような。
そんな部屋だった。
さすがに扉を開けた時、奴は驚いた。
もっとも私も驚いた。
記憶の中の奴も髪は長かったが、少なくとも腰まであるような男ではなかったはずだ。
しかも金髪だ。
悪趣味だ。
もう少し何とかしようがないのか、と思ったが、子供の頃から彼が私のいうことに本当の意味で耳を貸したことなんて無いので、言わなかった。
代わりに私の口から出たのは、こんな言葉だった。
「何とかまだ生きてるじゃない」
本音だった。
死んでいて欲しい、と思っていた訳ではない。
けどロクでもない生活をしているだろう、とは思っていた。
そして、そうしていて欲しい、と思っていた。
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