どうせなら日々のごはんは貴女と一緒に

江戸川ばた散歩

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4 サラダとの出会い

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 この東南の角部屋に越してきてひと月くらい経った頃。
 ゴールデンウイークで少しだけ地元に行き、戻ってきたら、人が増えていた。
 このマンションは築二十年。
 決して新しくはない建物だ。
 だが壁の塗り直しなど、見える所の改修は定期的にやっているので、外から見れば生クリームケーキのごとく、なかなか小綺麗だ。
 少し古いので、間取りがゆったりしている。
 それでも地方出身の私からしたら、何でこの家賃なの、と時々思う。
 二十三区内の1DKで7万だったらいい方だ、とは聞いている。
 でも地元でその値段だったら、3DKが楽々借りられる。
 早々と結婚した友人など、一軒家をそれ以下の値段で借りていたと思う。
 ちなみにその1DKと、彼女の住む1Kでは、家賃が1万違う。
 彼女の部屋は、キッチンが3畳だ。
 戻ってきてしばらくは、ああ人が増えたな~という印象だけだった。
 洩れ聞こえてくる音楽、テレビの音、窓を開ける音、風呂の水を流す音、そんなものが日常になる。

 その日常が一ヶ月くらい続き、ある風の強い朝、何か窓の外でばさばさと音がした。
 何だろうと思ってベランダを見ると、シーツが落ちていた。
 まっ白なシーツだったが、真ん中あたりに少しだけ落としきれない染みがあった。
 隣から飛んできたのか、と思ってのぞき込んだ時、ショートカットの彼女と目が合った。
 彼女は私の手に握られているシーツを見て大声を上げた。
 驚いた。
 数分後、部屋のチャイムが威勢良く鳴った。
 彼女の手には、何故か赤いチェックのクッキーの缶があった。
 すいませんすいません、と呆然とする私の手からシーツを取ると、クッキーの缶を渡してすぐに扉を閉めた。
 よく見ると、そのクッキーの缶は開封済みで、既に半分近く無くなっていた。
 私は思わず耳の後ろをひっかいた。
 どうしようかな、とその時私は思った。
 缶は大きかった。
 クッキーを一人でぼりぼりと食いまくるという趣味は無い。
 私は少し考えると、今度は彼女の部屋のチャイムを鳴らした。そして言った。

「せっかくだからあなたのくれたクッキーでお茶でもどう?」

 何でそんなこと言ってしまったのか。
 私は本来人見知りなのだ。
 外面がいいので、あまりそれがばれたことは無いのだが。
 それ以来、彼女は時々私の部屋でお茶をしたり食事をとったりしていく。
 土曜の夜か日曜の昼に。
 今日は土曜の夜だった。
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