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3 地方都市から出てくるということ
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私がサラダと食事を時々するようになってから半年も経っていない。
春先に私はこの首都圏の街に就職のために越してきた。
それまで住んでいたのは地方都市。
公共交通機関と言えばバス。
列車や駅と言えばJRのことを指す。
だから移動には自家用車。
大きな買い物、と言えば郊外のモール。
高校の卒業間際には皆揃って免許を取りに自動車学校に通うような所なのだ。
私もこの例に漏れず、車の普通免許は持っている。
だけど今は乗っていない。
乗る必要が無い。
私の住むマンションも、歩いて7分程度で最寄りの駅に着くことができる。
住みだした頃は、ぱっと見ただけでは判らない、いやじっくり見てもなかなか判らない、この色とりどりの列車のネットワークに頭がぐらぐらしたものだ。
けど慣れてしまえば、この公共交通機関と徒歩、時には自転車を交えれば何処へでも行けるような環境が私は好きになっていた。
地方都市だと、少し遠くへ行こうと思ったら、確実に車が必要になる。
遊びに行こうと言えば、それは車に乗って行くことと同義語だ。
それが嫌だと言っても、多数派には叶わない。
大学の頃、時々そんな風潮に反抗するかの様に、少し遠くからでも、雨が降ろうが風が吹こうが自転車で通っていた強者が居た。
だが感心する顔の裏で、何やってるんだ馬鹿だなあ、と周囲は感じていたらしい。
かく言う私も思っていなかった訳ではない。
免許を持っていなかった訳ではないし、実家に乗ることができる車が無かった訳でもない。
本人に言わせると、ただ好きだから、だそうだ。
実際雨の日も風の日も、それはそんなものだ、と教室に来る前にトイレで髪を直していたものだ。
そして乗っていたのも、スポーツバイクではなくただのシティサイクルだった。
いつもへらへら、とそれに乗って通していた彼女の様子に、私はいつも居心地の悪いものを感じていた。
おそらく彼女の言動の中には正しいものもあった。
それが私を苛立たせたのだと思う。
正しいことはイコール楽なことではない。
私達はつい楽なことを選びたがる。それが悪いとは言わないが。
話が逸れた。
そんな地方都市に私は育った。
そして出てきた。
ようやく。
そして彼女―――サラダもまた、何処かの地方都市から出てきている。
本当は菜野、という名前だ。
ひっくり返すと野菜。
そこから転じてサラダ、らしい。
誰がつけたのだかもう忘れた、と彼女は言う。
そのくらい小さな頃から馴染んでいる名前なのだ、と。
職業はフリーターで、私より二つ下だ。
何のバイトをしているのかも知らない。仕事に出る時間も、朝早いこともあったり、夜遅くまでかかることもあった。
コンビニの店員はやっているらしいが、もう一つ二つ掛け持ちでやっているようなことも言っていた。
けど何なのか、やっぱり判らない。
部屋の中を見ても、予想がつかない。
聞く必要も無いだろうので、それ以上追求したこともない。
ただ、土曜日の夜と日曜日を空けていることは確かだった。
一番の稼ぎ時だとは思うのだが、そのあたりはポリシーなのだろうか。
おかげでこうやって、一緒に食事をすることも多くなった。
春先に私はこの首都圏の街に就職のために越してきた。
それまで住んでいたのは地方都市。
公共交通機関と言えばバス。
列車や駅と言えばJRのことを指す。
だから移動には自家用車。
大きな買い物、と言えば郊外のモール。
高校の卒業間際には皆揃って免許を取りに自動車学校に通うような所なのだ。
私もこの例に漏れず、車の普通免許は持っている。
だけど今は乗っていない。
乗る必要が無い。
私の住むマンションも、歩いて7分程度で最寄りの駅に着くことができる。
住みだした頃は、ぱっと見ただけでは判らない、いやじっくり見てもなかなか判らない、この色とりどりの列車のネットワークに頭がぐらぐらしたものだ。
けど慣れてしまえば、この公共交通機関と徒歩、時には自転車を交えれば何処へでも行けるような環境が私は好きになっていた。
地方都市だと、少し遠くへ行こうと思ったら、確実に車が必要になる。
遊びに行こうと言えば、それは車に乗って行くことと同義語だ。
それが嫌だと言っても、多数派には叶わない。
大学の頃、時々そんな風潮に反抗するかの様に、少し遠くからでも、雨が降ろうが風が吹こうが自転車で通っていた強者が居た。
だが感心する顔の裏で、何やってるんだ馬鹿だなあ、と周囲は感じていたらしい。
かく言う私も思っていなかった訳ではない。
免許を持っていなかった訳ではないし、実家に乗ることができる車が無かった訳でもない。
本人に言わせると、ただ好きだから、だそうだ。
実際雨の日も風の日も、それはそんなものだ、と教室に来る前にトイレで髪を直していたものだ。
そして乗っていたのも、スポーツバイクではなくただのシティサイクルだった。
いつもへらへら、とそれに乗って通していた彼女の様子に、私はいつも居心地の悪いものを感じていた。
おそらく彼女の言動の中には正しいものもあった。
それが私を苛立たせたのだと思う。
正しいことはイコール楽なことではない。
私達はつい楽なことを選びたがる。それが悪いとは言わないが。
話が逸れた。
そんな地方都市に私は育った。
そして出てきた。
ようやく。
そして彼女―――サラダもまた、何処かの地方都市から出てきている。
本当は菜野、という名前だ。
ひっくり返すと野菜。
そこから転じてサラダ、らしい。
誰がつけたのだかもう忘れた、と彼女は言う。
そのくらい小さな頃から馴染んでいる名前なのだ、と。
職業はフリーターで、私より二つ下だ。
何のバイトをしているのかも知らない。仕事に出る時間も、朝早いこともあったり、夜遅くまでかかることもあった。
コンビニの店員はやっているらしいが、もう一つ二つ掛け持ちでやっているようなことも言っていた。
けど何なのか、やっぱり判らない。
部屋の中を見ても、予想がつかない。
聞く必要も無いだろうので、それ以上追求したこともない。
ただ、土曜日の夜と日曜日を空けていることは確かだった。
一番の稼ぎ時だとは思うのだが、そのあたりはポリシーなのだろうか。
おかげでこうやって、一緒に食事をすることも多くなった。
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