上 下
103 / 110
2部 光希と夏向のそれから

危険

しおりを挟む
(side光希)
「紅葉、君はいつから……」
『あ~。ごめん。すっかり没頭してしまってたんや。さっき起きたところ。ほら』

画面が切り替えられて、紅葉の顔が映る。
眠たげな目をこすりながら、紅葉がこちらを見ている。
『ふぁあ』と欠伸をして、腕を伸ばしていた。

『それより、七世どうしたん?奨学金とか、特待生とか調べて……お金がないん、破産?』

マウスをカチ、カチと動かす紅葉は瞬きを繰り返しながら尋ねてくる。
そういえば、紅葉のパソコンと生徒会のパソコンは連動していて、履歴が見れるようになっているのだ。隠し事にしたい訳では無いし、別にいいのだが……早速気づくとは目敏いな。

『学費も払えへん位お金が無いんやったら、俺が出したろか?まあ、その代わり解剖させて貰うけど』
「……別に俺は破産していないし、君が言うと洒落にならないからやめておくよ」

やんわり断った俺の横で、藍がパソコンを覗き込み、紅葉に話しかける。

『あ、海上~。チョコレートありがとう~。アレ新商品だよね。甘党の心、分かってる~』
「ええねん、ええねん。月ヶ瀬はいつも世話になってるからな。あ、七世の番さんも気に入ってた?」
「って夏向のチョコレートもやっぱり君か」

そういえば貢物の中でもやたらと夏向が好んでいた貢物は、例のチョコレートだ。
紅葉は趣味嗜好の分析が得意だから、予測は出来ていたが……藍も手駒にされていたとは。彼はやっぱり危険人物だ。やっぱり夏向には近づけない方が得策だろう。

藍はまだいい。αだが、蓮叶くんという番がいるから安心だ。でも紅葉はαで……更に番がいない。それも心配だし、直ぐ人を研究対象にしようとするから心配だ。

「あ、そうだみっくん。かなたんの学費について相談したら?」

嫌すぎて露骨に顔を歪ませたら、藍の口から『あはは~』と乾いた笑いが零れた。

『あ、な~るほどなぁ。七世じゃなくて番さんの学費か』
「君も大概察しがいいな、紅葉」
『いやいや、今のは誰でも分かるやろ。せやな……俺がお金出したろか?』
「断る」
『ええ!?即答やん!!もうちょい話聞いてや』
「夏向に何かあったら一生恨んでやる」

俺が画面越しに睨むと、『こっわぁ~』と紅葉が言う。でも顔は怖がってなかった。むしろ笑っていた。偏屈な変人はこれだから面倒臭い。夏向については放っておいてくれ。うっかり夏向が好物につられて、大事になったらどうするんだ。
夏向が解剖されて彼の玩具になるのも許せないし、恋愛になるのも勿論許せない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

壊れた番の直し方

おはぎのあんこ
BL
Ωである栗栖灯(くりす あかり)は訳もわからず、山の中の邸宅の檻に入れられ、複数のαと性行為をする。 顔に火傷をしたΩの男の指示のままに…… やがて、灯は真実を知る。 火傷のΩの男の正体は、2年前に死んだはずの元番だったのだ。 番が解消されたのは響一郎が死んだからではなく、Ωの体に変わっていたからだった。 ある理由でαからΩになった元番の男、上天神響一郎(かみてんじん きょういちろう)と灯は暮らし始める。 しかし、2年前とは色々なことが違っている。 そのため、灯と険悪な雰囲気になることも… それでも、2人はαとΩとは違う、2人の関係を深めていく。 発情期のときには、お互いに慰め合う。 灯は響一郎を抱くことで、見たことのない一面を知る。 日本にいれば、2人は敵対者に追われる運命… 2人は安住の地を探す。 ☆前半はホラー風味、中盤〜後半は壊れた番である2人の関係修復メインの地味な話になります。 注意点 ①序盤、主人公が元番ではないαたちとセックスします。元番の男も、別の女とセックスします ②レイプ、近親相姦の描写があります ③リバ描写があります ④独自解釈ありのオメガバースです。薬でα→Ωの性転換ができる世界観です。 表紙のイラストは、なと様(@tatatatawawawaw)に描いていただきました。

安心快適!監禁生活

キザキ ケイ
BL
ぼくは監禁されている。痛みも苦しみもないこの安全な部屋に────。   気がつくと知らない部屋にいたオメガの御影。 部屋の主であるアルファの響己は優しくて、親切で、なんの役にも立たない御影をたくさん甘やかしてくれる。 どうしてこんなに良くしてくれるんだろう。ふしぎに思いながらも、少しずつ平穏な生活に馴染んでいく御影が、幸せになるまでのお話。

後天性オメガの合理的な番契約

キザキ ケイ
BL
平凡なベータの男として二十六年間生きてきた山本は、ある日突然バースが変わったと診断される。 世界でも珍しい後天性バース転換を起こした山本は、突然変異のオメガになってしまった。 しかも診断が下ったその日、同僚の久我と病院で遭遇してしまう。 オメガへと変化した自分にショックを隠しきれない山本は、久我に不安を打ち明ける。そんな山本に久我はとんでもないことを提案した。 「先輩、俺と番になりませんか!」 いや、久我はベータのはず。まさか…おまえも後天性!?

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

処理中です...