【完結】記憶喪失の男の人を助けたら私のストーカーでした!?

十六原

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ストーカー被害

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無事にバイトが終わり、家まで彼と帰る途中。彼は何度も大丈夫か聞いてきた。私はその都度大丈夫だよと答えていたが、本当はまだ少しだけ怖かった。それでも彼が隣にいるだけで安心できた。

「付きまとわれたりって、本当に今はないんですか?」

歩きながら、ふと思い出したように彼は尋ねてきた。私はうん、と答えた後、 念のためにスマホのカメラを起動させて自撮りモードにして、背後を確認する。もちろん、そこには誰もいなかった。
私は彼に向き直って微笑む。

「そもそも、最近はなるべく夜に外を歩かないようにしてるしね。それに、今は黒太郎くんがいるから変な人も来ないと思うよ」
「そう……ですか? あ、じゃあ手紙とかは? もう来てないんですか?」

彼はまだ心配だというように私の顔を覗き込んでくる。黒太郎くんって、結構心配性なのかもしれない。私は少しだけ考えた後に答える。

「うん。最近はほんとに何もないから大丈夫だと思うよ。もう一年近くは何も起きてない」
「それならいいんですけど。ちなみに……その手紙って、どうしたんですか?」
「どうしたって……すぐ捨てたよ。気持ち悪いじゃん、そんなの取っておいたって。……あ、でも取っといたら証拠になったのかな?」

私は冗談っぽく笑って見せた。
でも、今そう言ってみて初めて気がついた。もし万が一何かあった時のための証拠として残しておくべきだったのかも。でも、当時は気味が悪くてすぐにゴミ箱に放ってしまったのだ。なんだか特徴的な……というか結構下手くそな字だったから、今でもなんとなくは覚えているけど。
手紙以外にも、ネックレスとか指輪とかが送られて来ていたことはあったけど、それも全て処分してしまった。今となっては少しもったいないような気もするけど、そんなものを手元に置いておく勇気はなかったし、仕方がない。
私の言葉を聞くと、彼は黙って俯いてしまった。

(さっきまであんなに質問してきたのに、どうしたんだろう……)

そう思っているうちに、家に着いてしまった。
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