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最終章
最終章-4
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そうして、裏稼業で生きていた三宮の前に、ランが現れた。
借金を踏み倒して逃げたアバズレのガキは、綺麗な西洋人形のような少年だった。
自分と似た境遇であるが、その子は全く違う。
その子はとても綺麗で、近所の住人からも可愛がられていた子供だった。
――オレは、生き地獄のような境遇だったのに。
オレと同じような――このガキは、それ以上の地獄に落とさねば気が済まない。
そう、三宮は思ってしまったのか?
「そんなの、許されるか!」
蔵は激高し、ドンっとベッドを叩いた。
「おいおい、あまり暴れるな。傷が開くぞ」
「冗談じゃねぇよ! あの鬼畜野郎、ランの養父を名乗っておきながらまだガキだったあいつをレイプしたんだぞ!? 言っておくが、オレは三宮に同情する気は1mmも無いからな。とにかく、一番大事なのはランだ。なぁ、あんた。腕のいい医者を探して、もっとよく診てもらえないのか?」
「いや、こればっかりは――とにかく、目覚めるのを気長に待つしかないようだ。何せ、頭の病気だからね。ランくんが入院している脳神経内科は、ここの病棟の七階だ。彼はそこで眠っているよ。……事情は通しておくから、あとでお見舞いにでも行ってやりなよ。僕はまだまだ手続きが残っているから、ここで失礼させてもらうとしよう」
糸川はそう言うと、ヨッコイショと言いながら立ち上がった。
その背中に、蔵は深々と頭を下げる。
「――本当に、何から何までありがとうございました。この恩は一生忘れません」
初めて蔵から言われた感謝の言葉に、一瞬だけ糸川は足を止めた。
そうして、背中越しにニッと笑う。
「いいさ。僕は結構、君達みたいな奴等が好きなんだよ」
そう言うと、今度こそ糸川は病室を出ていった。
◇
蔵は、考えていた。
糸川が言うには、蔵が用意した凶器で犯行に及んでいたら、事態は危うかったと。
借金を踏み倒して逃げたアバズレのガキは、綺麗な西洋人形のような少年だった。
自分と似た境遇であるが、その子は全く違う。
その子はとても綺麗で、近所の住人からも可愛がられていた子供だった。
――オレは、生き地獄のような境遇だったのに。
オレと同じような――このガキは、それ以上の地獄に落とさねば気が済まない。
そう、三宮は思ってしまったのか?
「そんなの、許されるか!」
蔵は激高し、ドンっとベッドを叩いた。
「おいおい、あまり暴れるな。傷が開くぞ」
「冗談じゃねぇよ! あの鬼畜野郎、ランの養父を名乗っておきながらまだガキだったあいつをレイプしたんだぞ!? 言っておくが、オレは三宮に同情する気は1mmも無いからな。とにかく、一番大事なのはランだ。なぁ、あんた。腕のいい医者を探して、もっとよく診てもらえないのか?」
「いや、こればっかりは――とにかく、目覚めるのを気長に待つしかないようだ。何せ、頭の病気だからね。ランくんが入院している脳神経内科は、ここの病棟の七階だ。彼はそこで眠っているよ。……事情は通しておくから、あとでお見舞いにでも行ってやりなよ。僕はまだまだ手続きが残っているから、ここで失礼させてもらうとしよう」
糸川はそう言うと、ヨッコイショと言いながら立ち上がった。
その背中に、蔵は深々と頭を下げる。
「――本当に、何から何までありがとうございました。この恩は一生忘れません」
初めて蔵から言われた感謝の言葉に、一瞬だけ糸川は足を止めた。
そうして、背中越しにニッと笑う。
「いいさ。僕は結構、君達みたいな奴等が好きなんだよ」
そう言うと、今度こそ糸川は病室を出ていった。
◇
蔵は、考えていた。
糸川が言うには、蔵が用意した凶器で犯行に及んでいたら、事態は危うかったと。
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