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最終章
最終章-1
しおりを挟む結果だけ見れば、良い方向に解決したと言っても良いだろう。
さすがに路上で人が刺されるような騒ぎが起きては、普段は無関心を貫く近隣住民も通報せずにはいられなかったようで、10分と経たずに警察と消防が駆けつける事態になった。
三宮は銃刀法違反と傷害の現行犯でその場で逮捕されたが、自身が重傷を負っていた事もあり、そのまま医療刑務所へ送致され。三宮が引き連れていたヤクザたちも、逃げる間もなく皆逮捕された。
蔵は三宮によって複数の切傷を負っていたので、入院する運びとなった。
ナイフで抉られた太腿の傷が一番深かったが、幸いにも神経は傷付いていなかったので、本人の意思次第で直ぐにでも退院出来るとの事だ。
全ては、蔵にとって理想通りの結末と言っていいだろう。
だが、もしも、犯行に使われた凶器が蔵の用意していたナイフであったなら、立場はかなり悪くなっていたかもしれない。
逮捕されていたのは蔵の方だったかもしれない、かなり際どい場面だったと。
そう糸川弁護士から告げられ、蔵は「そうか」とだけ小さく呟いた。
心当たりは十分ある。
それまで、傷害で何度も出たり入ったりを繰り返していた蔵だ。
当然だが、蔵に対する警察の心象は悪い。
病院で調書を受けている時も、蔵に対する警察官の態度はあまりいいものではなかった。
しかし、糸川弁護士に連絡を取って間に入ってもらってからは、一気に状況は変わった。
「僕の名前を出したのは正解だったね。君は不起訴になるから安心しなさい。犯行に使われたダガ―ナイフを、三宮が普段から持ち歩いているという証拠も証言も山程出ている。それに、君の頬と胸部、それと太腿に残されている傷は、そのナイフで付けられた切傷だ。これだけ立派な証拠があれば、もうヤクザの話に耳を貸すような警察官などいないさ」
「……じゃあ、ランも大丈夫なんだな?」
蔵は目に力を込めて、ジッと糸川の顔を見た。
ランは、三宮の隙をついてその得物を奪い取り、殺意を込めてその切っ先を三宮の脇腹にぶち込んだ。
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