路傍の石

亜衣藍

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 そんなランの様子を見ていると、ますます腹が立ってくる。
 体中傷だらけにしてまで暴力に耐えているランを、こいつはどう思ってんだ!?

「何もかも全部、お前が借金したのが原因だろうが! ランに押し付けないで、男なら自分でどうにかしろよ!」

 するとタカシは、自分を掴んでいる蔵ではなくランの方へと目線を向けた。

「おい、何だよこの野郎は? さては、テメェの新しい男か?」
「ち、違う! 蔵とは、さっき会ったばっかりだ。新しい男だなんて――」
「どうだかな」

 タカシはランの言い分などろくに聞く様子もなく、次に蔵へと目線を戻した。
 そうして、荒んだ様子で嘲るように嗤う。

「ハハハハ、馬鹿力のにいちゃん、あんた、さてはこいつに惚れてんな?」

 ズバリ指摘され、蔵は思わず動揺する。

「はぁ!? オレがランに惚れてるだって? な、何を根拠にっ」

「見てりゃあ分かんだよ。これでも、少し前まではclub kingでナンバーワンだったホスト様だ。誰が誰に気があるかなんて、こっちはお見通しだぁよ」

 呂律の回らない口調で言うと、次にタカシは蔵を睨みつけた。

「こいつに惚れてんなら、にいちゃんがこいつの代わりに借金を返してやれよ」

 このセリフに、ランが即座に反応する。

「タカシ!」
「うっせーな。お前がいつまでもグズグズしてっから、全然借金が減らねーんだろが! だったら他のヤツも巻き込んで返すしかねぇだろうがよ!」
「ダメだ、そんなの。蔵は本当にオレと関係ない人なんだから」
「お前の稼ぎが悪いから、こっちは親切に色々考えてやってんだろうが」

 この自分勝手な言い分に、蔵の中で何かがプチっと切れた。
 多分それは、堪忍袋の緒というヤツだったのだろう。
 気が付いたら、左の拳がタカシの脇腹に突き刺さっていた。

 ボクシングで言うところの、リバーブローだ。

「ウヴっ!!」

 その一発に、タカシは悶絶して膝を折った。
 そして蔵は、封じていたハズの拳を他人に振るってしまった事に、唖然とする。
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