彼が恋した華の名は

亜衣藍

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「オレは、今もお前を――――」

 だが、その言葉は、途中で途切れた。

 聖が、史郎の唇を塞いだからだ。

「ふぅ――んんっ」

 ヂュっと音を立てて、深く、深く貪る。

 そうしながら、口づけの合間に聖は呟く。

「オレは……あんた以外にも――――たくさん、本当にたくさんの男と寝た……」

 でも、常に信念と目的があったから壊れる事は無かった。

 心は、いつも大切な所に取ってある。愛も、心の奥底に大切に保管している。

 だから、身体は別なのだと……これはただのビジネスで、仕事の一環なのだと。

 男達がうそぶく愛も睦言も、全てはただ体の表面を流れていく仮初の出来事にしか過ぎないと。

 しかし、その中には――――本当に聖の事を愛した男もいた。

 今はもう、ただ、過ぎ去った季節を懐かしむような気持にしかならないが。

「……数えるのもとうに止めたから、何人と寝たかも覚えちゃあいないが――――でも、これだけは言える」


「……」

「一番、オレを抱いたのは――間違いなく、史郎……あんただぜ」



 その告白に、史郎は複雑な表情を見せた。

 嬉しいような、哀しいような。泣いているようで笑っているような――そんな顔になると、一言「そうか」と頷く。

 そうして、彼はフッと笑った。

「傾国の美女にそう言って貰えるとは、男としちゃあ最高の栄誉だな」

「う……」

 奥底をズンッと突くと、聖の身体が仰け反った。

 同時に、凄まじい刺激が史郎の雄芯を襲い、彼もまた歯を食いしばって耐える。

 そろそろ、さすがにこっちも限界だ。

「聖……」
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