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しおりを挟む意地でも絶対に媚びるものかと思い、聖は数々の仕打ちにジッと耐えていた。
――――黙ってとことん無視していれば、こんな可愛げのない野郎なんぞ直ぐに相手にもされなくなるに違いない。
この業界、華麗な花は幾らでも咲き誇っている。
誰だって抱くなら、柔らかくて可愛い抱き心地のいい女の方がイイに決まっている。
青菱史郎は、青菱組の若頭を名乗っているだけあって、高級クラブのナンバーワンホステスを何人も愛人に抱えている野郎だ。
それが、何の酔狂か知らないが、格下とはいえ他の組の組員を強引に囲うなど前代未聞の珍事だろう。実際、周りも大反対だった。
こんなの、いつまでも続くワケが無い。
だから、とっとと早く飽きやがれ!
――――と、聖は毎日思っていた。
しかし意に反し、一向に史郎は聖を手放そうとしなかった。
だが、それで黙って言いなりになるような性格の聖ではない。
とうとう我慢も限界に達して、ある日彼は反旗を翻した。
◇
「史郎さん、あんたはオレの事をいたぶって随分と楽しいようだが、いい加減にお役御免にしちゃあくれませんか? 」
そう言いながら、史郎の喉にドスを突き付けた聖である。
勿論、ここで本当に史郎の頸動脈を切るつもりはない。
ここまで反逆的な態度を取ったら、折れて聖を解放するか――――それとも、聖を半殺しにするだろうと考えての事だ。
さすがにそうなったら、格下とはいえ天黄組が黙ってはいない。
天黄正弘は、聖の養い親のような男である。
可愛い組員をこんな目に遭わせるようなら、もう若頭に預ける事は出来ないと、正式に青菱の組長へ直訴するだけの大義名分が出来る。
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