彼が恋した華の名は

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
3 / 52
1

1-1

しおりを挟む

「あ――――あぁっ! 」

 抱え上げ、最奥を目指して突き上げると、聖は汗を飛び散らせて悲鳴を放った。

 その乳白色の肌のあちこちには、紅の刻印が刻まれている。

 それら何箇所かは、噛み付いた歯形もある。至る所が鬱血し、血の珠が浮いていた。

 それら全て、史郎が刻んだ所有の証だ。

 白い首筋、胸を飾る緋色の突起、淡く柔らかな茂みに覆われた周辺。

 すんなり伸びたしなやかな脚に、決して日の当たらないであろう秘部。

 それら全てに余すことなく、史郎の刻印が刻まれている。

 これだけ所有の証を刻み、人前ではおいそれと服を脱げない程にマーキングをしたというのに、まだこの男は音を上げようとはしない。

 表面上は服従を誓いながらも、その心の奥底にはまだ何者かの影がある。

 それが悔しくて、憎くてしょうがない。

 決して許せない。

 だから史郎は――――聖が悲鳴を上げて許しを請うても、熱く熟れて白い涙を流し続ける後孔を責めずにはいられないのだ。

 遮二無二腰を使い、一切の慈悲を与えずに、愛撫というよりも拷問に近い加虐を加える。

「さぁ、言え! お前はいったいどこのどいつに惚れてるんだ!? 」

「ヒィッ! 」

 背中を抱えて上に担ぎ上げると、今まで一番の深さまで、史郎の男根は聖に突き刺さった。

 これまで何度も捏ねられ解されていたとはいえ、聖にとってそこは、未知の深部だった。

「――――! 」

 その衝撃が過ぎたのか、聖は眼を剥いて中空を睨み上げる。

「あ――――あっ!! 」

「言え! どこのどいつだ! 」

 これほどまでに聖の心を独占する、その何者かの存在が許せない。

 聖は、上野の天黄組という地回りの組員だった。

 天黄組は、史郎の父が統括する青菱組傘下の組だ。

 新年の挨拶回りで青菱へと参じた天黄組の面々に、聖は紛れていた。

 今まで見た事の無い、まるで天女のように美しい男。

 美しく麗しい月のようなその男は、微かに笑みを浮かべると、微かに史郎へ会釈をした。

 史郎は、一目その聖を見て――――完全に心囚われてしまい、周囲の猛反対を押し切って強引に自分の物へと囲ったのだ。

――――それから、早一年が過ぎていた…………。

「あうっ…………」

 ビクッビクッと大きく震えると、とうとう聖は気を飛ばして意識を失ってしまった。

 同時に、わずかに勃ち上がっていた、形のいい雄芯から薄い精を迸らせる。

「くそっ」

――――また、加減を忘れてやり過ぎちまった。

 史郎は舌打ちをすると、逞しい己の雄芯を二度三度と温かいその中で擦り上げ、躊躇わずに聖の体内へと放った。

「――ふぅ」

「…………う…」

 低い、聖の苦鳴が上がる。

 その後孔の合間から滴り落ちる、たった今盛大に放った己の欲望。

 聖の体内から零れる、白くドロドロとした体液――――。

 だがもうそれに構わず、史郎は己を一気に引き抜くと「おいっ」と、部屋付きで控えている筈の配下へと声を掛けた。

「こいつを綺麗に洗っといてやれ」

「へ、へいっ」

 禿げ頭を茹でタコのようにして、舎弟がすぐさま転がるように部屋の隅から現れた

 見る気は無かったが、その舎弟の股間がパンパンに張っているのが目に入り、史郎はチッと舌打ちをしながら忠告をした。

「言っておくが、オレのモンに手を出したら指の一本二本じゃ済まねぇぞ」

「そ――それは、勿論! 」

 舎弟は、赤い顔を今度は真っ青にして、へどもどしながら聖の身体を恭しく抱えて去って行った。

 そのままバスルームへと連れて行き、命令通りに聖の身体を清拭するのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

処理中です...