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それなのに、それを証言せずにいつまでも聖へ容疑を掛けたままのこの状況は、自分でもマズいと思っていたのは本当だ。
(だから私は、サイエンの条件を呑む事にしたのだ。ヤツの根回しが完了したら、ミドーを自由の身にしてやれる)
その事を伝えたら、聖は喜んで感謝するに違いないとレオンはほくそ笑む。
聖の心と体を手に入れた時の感動と快感を想像し、興奮することを抑えるだけで大変だ。
「それではレオン様、わたくしめは隣室へ控えております故御用の際はお声がけください」
「分かったわかった」
侍従の声に生返事を返すと、やがて、少しサイズの合わない制服を着たメセンジャーが現われた。
帽子を目深に被っているので顔はよく見えないが、元より船員になど興味もないレオンは大した注意も払わずに、手を振って近くへと招く。
「ミドーからのメッセージとは?」
「……こちらで御座います」
涼やかな声が返って来た。
だが次の瞬間、間髪入れずに強烈な前蹴りがレオンの腹に突き刺さった。
「ぐっう!」
防御の体勢も取っていなかったので、不意打ちの蹴りはモロにレオンの腹に入る。
蹴りを喰らったレオンの大柄な身体は、後ろのベッドまで吹っ飛んだ。
「ゲ、ゲホッ! な、なにも……の、だっ」
ぜえぜえと息をつきながら誰何したところ、たった今レオンを蹴ったメッセンジャーは、目深に被っていた帽子を取った。
その顔を見て、レオンは呆気にとられる。
「ミドー!?」
「久しぶりだな。いつになっても招待状が届かないから、こっちから来てやったぞ」
皮肉気に笑いながら、聖は一歩前に出る。
「てめぇ、よくもオレを嵌めやがったな。蹴り一発で済むと思うなよ」
怒気を孕んだ冷たい声に、レオンは息も絶え絶えに言葉を捻り出す。
「ま……まて、ミドーの怒りは尤もだが、私にも都合というものがあったのだ。だから、」
「言い訳をする気か? 見苦しい男だな」
(だから私は、サイエンの条件を呑む事にしたのだ。ヤツの根回しが完了したら、ミドーを自由の身にしてやれる)
その事を伝えたら、聖は喜んで感謝するに違いないとレオンはほくそ笑む。
聖の心と体を手に入れた時の感動と快感を想像し、興奮することを抑えるだけで大変だ。
「それではレオン様、わたくしめは隣室へ控えております故御用の際はお声がけください」
「分かったわかった」
侍従の声に生返事を返すと、やがて、少しサイズの合わない制服を着たメセンジャーが現われた。
帽子を目深に被っているので顔はよく見えないが、元より船員になど興味もないレオンは大した注意も払わずに、手を振って近くへと招く。
「ミドーからのメッセージとは?」
「……こちらで御座います」
涼やかな声が返って来た。
だが次の瞬間、間髪入れずに強烈な前蹴りがレオンの腹に突き刺さった。
「ぐっう!」
防御の体勢も取っていなかったので、不意打ちの蹴りはモロにレオンの腹に入る。
蹴りを喰らったレオンの大柄な身体は、後ろのベッドまで吹っ飛んだ。
「ゲ、ゲホッ! な、なにも……の、だっ」
ぜえぜえと息をつきながら誰何したところ、たった今レオンを蹴ったメッセンジャーは、目深に被っていた帽子を取った。
その顔を見て、レオンは呆気にとられる。
「ミドー!?」
「久しぶりだな。いつになっても招待状が届かないから、こっちから来てやったぞ」
皮肉気に笑いながら、聖は一歩前に出る。
「てめぇ、よくもオレを嵌めやがったな。蹴り一発で済むと思うなよ」
怒気を孕んだ冷たい声に、レオンは息も絶え絶えに言葉を捻り出す。
「ま……まて、ミドーの怒りは尤もだが、私にも都合というものがあったのだ。だから、」
「言い訳をする気か? 見苦しい男だな」
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