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しおりを挟むコンコンと扉がノックされ、侍従がそれに対応している気配を感じながら、レオンはベッドの上で寝返りを打った。
レオンの身の回りを世話する用人は、この船上ではその侍従一人だけである。
船旅では、イオリとの蜜月を過ごそうと計画していたので邪魔な用人の同行は断ったのだが、両親と、何より長老が強く希望したので、レオンは不承不承古参の侍従一人だけを供に連れて来ていた。
老爺の身でありながら、クイーンダイヤモンドで巻き起こったトラブルの対応に追われて気の毒だとは思うが、日頃から口うるさい侍従があたふたとしている様を見ると若干心地よい気もしているレオンだ。
(サイエンが勝手に入り込んでいた事実を知った時のヤツの慌てようも、見ていて愉快だったな。少し可哀想ではあるが、ヤツはお爺様が付けた目付け役だ。もっと慌てるがいいさ)
どうせ、船員かシオリが何か言いに来ているのだろう。
――そう、見做していたレオンだったが。
「レオン様。拘束されているミドー氏から、メッセンジャーが来ておりますが」
「なに? ミドーが?」
「はい。預かったメッセージは直接手渡しをと、そうミドー氏から言付かっていると。メッセンジャーの船員がそんな事を言っておりまして。お断りしてよいでしょうか?」
「通せ」
「しかしレオン様。ミドー氏は、レオン様の頭部に傷を負わせた容疑で拘束中です。そんな人物からのメッセージなど……」
「いいから、通せといっている」
侍従にそう言い渡すと、レオンはベッドから身を起こした。
聖の美貌を脳裏に思い描き、ここのところずっと鬱屈していたレオンの気分は、久しぶりに高揚する。
(ミドーは、自分を庇ってくれない私の事を恨んでいるかもしれないと思っていたが……まだ挽回は可能かもな。彼の無実だけは保証すると言えば、少しは見直してくれるか?)
殴った相手が聖でないことは、レオン本人がよく知っている。
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