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(ボクにはもう、起死回生の一手も残っていないのか?)
晁生は何とか取り繕おうと必死にその方法を考えるが、それより先に、聖が口を開く方が早かった。
「オレはこれからレオンの所へ行って、ヤツを直接問い詰めようと思っている。その間妨害が入るかもしれないが、これだけオレに迷惑をかけたんだ。お前は当然オレの盾になってくれるよな?」
「え? い、いや、それは――」
「どっちにしても、このままじゃあ城嶋エンタープライズは終わりだろ? いい加減に覚悟を決めろ。ヤツを締め上げて、逆にこっちがヤツの弱みを握ってやろうじゃないか」
豪胆な提案に、晁生は度肝を抜かれる気分になった。
聖は、見た目は天女のように麗しく美しいが、こういうところは潔いばかりに男らしい。
益良雄と言ってもいいだろう。
いつまでもグダグダと考え込んで、一向に動き出さない自分とは大違いだ。
まさに、脱帽だ。
(本当に君は素敵だよ。とてもボク如きでは釣り合わない)
それでも、恋い焦がれるこの想いを全て諦めるのは、どうしても踏み切れない。
そんな晁生の気持ちを知ってか知らずか、聖はさっさと自分のトランクを開け、持ち込んでいたロープや折り畳みナイフをリュックに突っ込んだ。
「ヤツは今、医務室ではなく客室なんだよな。あのロイヤルスイートで間違いないか?」
(本当に今すぐ行く気か!?)
素晴らしい行動力だが、さすがにこのまま行かせてはマズい。
晁生は慌てて、ストップをかけた。
「き、君の気持ちは分かるが、レオンを追求するのは早計だ!」
「何を呑気な事を。オレは次の港で船を降ろされるんだぞ。弁護士の手配をして無実を証明しても、日本に帰国するまで余計な日数が掛かっちまう」
「天気は回復したけど沖合は波が荒れているから、上空の低気圧が去ってから船は出港する予定だそうだ。つまり、まだ二日は猶予があるんだ」
「だから?」
「――ボクに考えがある。レオンよりも先に、実行犯を捕まえた方が後々の交渉が有利になる」
晁生は何とか取り繕おうと必死にその方法を考えるが、それより先に、聖が口を開く方が早かった。
「オレはこれからレオンの所へ行って、ヤツを直接問い詰めようと思っている。その間妨害が入るかもしれないが、これだけオレに迷惑をかけたんだ。お前は当然オレの盾になってくれるよな?」
「え? い、いや、それは――」
「どっちにしても、このままじゃあ城嶋エンタープライズは終わりだろ? いい加減に覚悟を決めろ。ヤツを締め上げて、逆にこっちがヤツの弱みを握ってやろうじゃないか」
豪胆な提案に、晁生は度肝を抜かれる気分になった。
聖は、見た目は天女のように麗しく美しいが、こういうところは潔いばかりに男らしい。
益良雄と言ってもいいだろう。
いつまでもグダグダと考え込んで、一向に動き出さない自分とは大違いだ。
まさに、脱帽だ。
(本当に君は素敵だよ。とてもボク如きでは釣り合わない)
それでも、恋い焦がれるこの想いを全て諦めるのは、どうしても踏み切れない。
そんな晁生の気持ちを知ってか知らずか、聖はさっさと自分のトランクを開け、持ち込んでいたロープや折り畳みナイフをリュックに突っ込んだ。
「ヤツは今、医務室ではなく客室なんだよな。あのロイヤルスイートで間違いないか?」
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「何を呑気な事を。オレは次の港で船を降ろされるんだぞ。弁護士の手配をして無実を証明しても、日本に帰国するまで余計な日数が掛かっちまう」
「天気は回復したけど沖合は波が荒れているから、上空の低気圧が去ってから船は出港する予定だそうだ。つまり、まだ二日は猶予があるんだ」
「だから?」
「――ボクに考えがある。レオンよりも先に、実行犯を捕まえた方が後々の交渉が有利になる」
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