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「お前の話だと?」
「ああ。その代わりに、こちらの要求は呑んでもらうぞ」
サイエンはそう言うと、ニヤリと笑った。
◇
城嶋晁生は、客室で一人思い悩んでいた。
予定していたプレゼンは中止になり、また、パートナーとして登録していた人間がマフタン御曹司襲撃の被疑者として拘束されてしまったので、再度プレゼンテーションを希望しても最早運営委員に通る見込みがない。
一万ドルもの金をかき集めてわざわざここに参加したのというのに、その意気込みも全く意味を成さなくなってしまった。
この先船旅を続けても、何の成果も見込めないだろう。
ならばもう、船を下りて日本へ戻り、会社をこの先どうするのか本腰を入れて整理しなければならない。
(ボクの悪足掻きに付き合わせてしまって、聖には申し訳なかったな)
晁生はフゥと溜め息をつき、拘束されている聖の事を考える。
城嶋エンタープライズとは違い、ジュピタープロダクションは多角経営が功を奏して、この未曽有の不況でも無事に生き残れるだろうと、大方の人間は安心して見ていた。
実際、ジュピタープロダクションは株価も安定している。
それなのに、晁生が自社の窮状を訴えて聖にも同行を打診したところ、こうしてはるばる来てくれた。
冷徹で冷酷で、氷の女王のように冷たい聖。
でも、その本質は困った人間を見捨てられない、優しくて暖かいモノがあると。
晁生は、そんな聖のウィークポイントに上手く乗じて、ここまで無理に付き合わせてしまった。
(君が犯人でない事は分かっているよ)
その事を、ここの船員にどんなに訴えても、聞き入れてもらえなかった。
このままでは、聖に無実の罪が着せられたまま、次の港で警官に引き渡されてしまう。
どうすればいいか――と、晁生は考えていた。
「ああ。その代わりに、こちらの要求は呑んでもらうぞ」
サイエンはそう言うと、ニヤリと笑った。
◇
城嶋晁生は、客室で一人思い悩んでいた。
予定していたプレゼンは中止になり、また、パートナーとして登録していた人間がマフタン御曹司襲撃の被疑者として拘束されてしまったので、再度プレゼンテーションを希望しても最早運営委員に通る見込みがない。
一万ドルもの金をかき集めてわざわざここに参加したのというのに、その意気込みも全く意味を成さなくなってしまった。
この先船旅を続けても、何の成果も見込めないだろう。
ならばもう、船を下りて日本へ戻り、会社をこの先どうするのか本腰を入れて整理しなければならない。
(ボクの悪足掻きに付き合わせてしまって、聖には申し訳なかったな)
晁生はフゥと溜め息をつき、拘束されている聖の事を考える。
城嶋エンタープライズとは違い、ジュピタープロダクションは多角経営が功を奏して、この未曽有の不況でも無事に生き残れるだろうと、大方の人間は安心して見ていた。
実際、ジュピタープロダクションは株価も安定している。
それなのに、晁生が自社の窮状を訴えて聖にも同行を打診したところ、こうしてはるばる来てくれた。
冷徹で冷酷で、氷の女王のように冷たい聖。
でも、その本質は困った人間を見捨てられない、優しくて暖かいモノがあると。
晁生は、そんな聖のウィークポイントに上手く乗じて、ここまで無理に付き合わせてしまった。
(君が犯人でない事は分かっているよ)
その事を、ここの船員にどんなに訴えても、聞き入れてもらえなかった。
このままでは、聖に無実の罪が着せられたまま、次の港で警官に引き渡されてしまう。
どうすればいいか――と、晁生は考えていた。
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