MAN OF THE FULL BLOOM

亜衣藍

文字の大きさ
上 下
57 / 75
5

5-5

しおりを挟む
「お前の話だと?」
「ああ。その代わりに、こちらの要求は呑んでもらうぞ」

 サイエンはそう言うと、ニヤリと笑った。

   ◇

 城嶋晁生は、客室で一人思い悩んでいた。

 予定していたプレゼンは中止になり、また、パートナーとして登録していた人間御堂聖がマフタン御曹司襲撃の被疑者として拘束されてしまったので、再度プレゼンテーションを希望しても最早運営委員に通る見込みがない。

 一万ドルもの金をかき集めてわざわざここに参加したのというのに、その意気込みも全く意味を成さなくなってしまった。

 この先船旅を続けても、何の成果も見込めないだろう。
 ならばもう、船を下りて日本へ戻り、会社をこの先どうするのか本腰を入れて整理しなければならない。

(ボクの悪足掻きに付き合わせてしまって、聖には申し訳なかったな)

 晁生はフゥと溜め息をつき、拘束されている聖の事を考える。

 城嶋エンタープライズとは違い、ジュピタープロダクションは多角経営が功を奏して、この未曽有の不況でも無事に生き残れるだろうと、大方の人間は安心して見ていた。

 実際、ジュピタープロダクションは株価も安定している。

 それなのに、晁生が自社の窮状を訴えて聖にも同行を打診したところ、こうしてはるばる来てくれた。

 冷徹で冷酷で、氷の女王のように冷たい聖。
 でも、その本質は困った人間を見捨てられない、優しくて暖かいモノがあると。
 晁生は、そんな聖のウィークポイントに上手く乗じて、ここまで無理に付き合わせてしまった。

(君が犯人でない事は分かっているよ)

 その事を、ここの船員にどんなに訴えても、聞き入れてもらえなかった。
 このままでは、聖に無実の罪が着せられたまま、次の港で警官に引き渡されてしまう。

 どうすればいいか――と、晁生は考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...