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しおりを挟むレオン・マフタンは、今まで何の苦労もした事がないし、苦難に遭った事も無かった。
幼い頃から帝王のように育てられ、それが当たり前の事であるかのように周囲も従属したので、その点に関しても不思議に思った事さえ無かった。
常に、男も女も向こうの方から媚び諂い、レオンの歓心を得ようと躍起になるのが当たり前だった。
それなのに、あいつだけは違っていた。
レオンの招待状を受けたのなら、恭しく傅いて光栄に思うのが当たり前であろうに、何とあいつは「予定が合わないので」と断りの返信を突き付け、ならばと、わざわざレオン自ら直接出向いた時は「突然のご訪問は迷惑です」と門前払いをしたのだ。
この、レオン・マフタンに対してだ。
これまで、他人にそんな態度を取られたことなど無かったレオンは、怒りを覚えて余計に執着した。
なので様々な手を使い、あいつをここへ追い込むよう仕掛けたのだ。
元スーパーモデルのシオリを婚約者に指名したのも、その一環だ。
案の定、あいつは渋々だがここへ来てくれた。
これでようやく、胸のモヤモヤが晴れる。
この船旅で、身も心もあいつをレオンの物にしようと決意していたのに。
(そんなに、私が嫌いか!)
この客室に入って背中を見せた途端、後頭部を衝撃が襲った。
レオンはそのまま昏倒したので、意識が戻るまで自身の身に何が起こったのか知る由もなかったが。
どうやら、手加減無しにシャンパンの瓶で頭を殴られたらしいと、意識を取り戻したレオンに医師が教えてくれた。
そして、嫌疑が御堂聖に掛かっているという事も。
(ミドーは犯人ではないと証言したら、あいつが犯人だという事が露呈してしまう。そうなってはもう、いくら私が庇おうとしてもお爺様が許さないだろう。マフタンの長老に睨まれては、二度と会う事も叶わない)
苦悩するレオンであったが、次の瞬間、その頬にヒヤリとする物が触れた。
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