MAN OF THE FULL BLOOM

亜衣藍

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 そこまで考えて、聖は小さく溜め息をついた。

(ま、それならそれでいいさ。こっちも、余計な期待などしなくて済むからな)

 もしも聖が世間知らずの若者であったなら、辛い現実を目の前にして悲嘆に暮れ打ちひしがれていたかもしれないが。

 だが、こっちも数々の修羅場をくぐって来たのだ。
 騙されて裏切られたことも、一度や二度ではない。
 今更、悲劇の主人公に浸って嘆くなど、時間の無駄だと割り切る事に躊躇いはない。

(とにかく、レオンに会って真意を問い質さなければ)

 婚約者を連れておきながら、別の人物と豪華客船で蜜月を過ごすつもりだったのなら、それはそれで構わない。
 どうぞ、勝手にやってくれと言うだけだ。

 だが、そのに襲撃されたとしたら、そこに至るまでいったい何があったのか?
 何故、巨大な権力を持っている筈のレオンが、傷を負わされたというのに何も言わず、何もしようとしないのか。
 そして、聖が睨んだ通り、犯人はあの地味な秘書で合っているのか?

 当座の目的をはっきりと定めると、聖は大きく息をついた。

(さて、それならここ独房を出ないとな)

 部屋には、勝手に出られないように外から鍵が掛けられている。

 とはいえ、この部屋は一時的に『迷惑客』を拘束するだけのものだから、本物の独房という訳ではない。
 外に見張りが立って監視しているとか、そういうこともないのだ。

 ただ、面会を希望する人間は警備員から許可を得て、その警備員を伴ってこの部屋の内部でだけ会話を認められている。
 晁生やサイエンはその方法で、聖に進捗状況を知らせに来た。

 それでは、直接この部屋へ入室できる者はいないのかというと、そんな事はない。

 清掃スタッフや、食事などを運ぶスタッフは、警備員とは別に鍵を持っているらしく、ここを定期的に出入りしている。
 きっとそれらの雑務は単独ではなく複数人で作業するので、『迷惑客』が暴れたり逃げようとしても、容易く制圧出来るという事なのだろう。
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