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「君は、もうこの船を降りたいと思っているんだろうと、ボクも分かっているが……」
その様子から、聖は晁生が何を言いたいのか察した。
このまま沈黙を続けて、晁生の次のセリフを待つかと一瞬考えたが、
「……言いづらいなら、オレから言ってやろうか?」
聖はフッと笑うと、晁生の本音を先に言い当ててやることにした。
「お前は、オレの気持ちがどうあれ、何がなんでもレオンと確約を交わしてから、この船を降りてほしいと言いたいんだろう?」
晁生は、決して悪人ではない。
自社タレントを使い捨ての駒同然に扱う経営者も多い中、晁生はタレントの一人ひとりを家族のように大切にする、善き経営者であり良い男だ。
聖の事も、大切な恋人であると認識しているワケだが……。
だがこのまま手ぶらで日本に帰っては、聖のジュピタープロダクションはともかく、城嶋エンタープライズは危ない。
だから、あの横柄な王様を誑し込んで、サインを貰って来いと。
――――聖を本当の恋人だと思っていたら決して望まないであろう願いを、城嶋は思っていながら口に出せずにいる。
(誰にでも優しい男というのは、こういう時は逆に残酷だな)
内心で舌打ちしながら、聖はスッとソファーから立ち上がった。
晁生が戸惑った様子で「君がどうしても嫌だというなら、別の手を考えるが」とモゴモゴと呟くが、そんなものは建前だというのはとっくに見抜いている。
これ以上言い訳に付き合うなど、唯々不愉快なだけだ。
だから聖は、スッパリと切り捨てるように告げた。
「お前は部屋に戻って、明日のプレゼンはキャンセルすると各所に伝えろ。オレはこれからレオンの許を訪ねて、必ずマフタン財団のバックアップを確約させる」
「聖……」
晁生は引き留めるように手を伸ばすが、その手は虚しく空を切る。
聖はもう後ろも見ずに、その場を立ち去ったのだった。
その様子から、聖は晁生が何を言いたいのか察した。
このまま沈黙を続けて、晁生の次のセリフを待つかと一瞬考えたが、
「……言いづらいなら、オレから言ってやろうか?」
聖はフッと笑うと、晁生の本音を先に言い当ててやることにした。
「お前は、オレの気持ちがどうあれ、何がなんでもレオンと確約を交わしてから、この船を降りてほしいと言いたいんだろう?」
晁生は、決して悪人ではない。
自社タレントを使い捨ての駒同然に扱う経営者も多い中、晁生はタレントの一人ひとりを家族のように大切にする、善き経営者であり良い男だ。
聖の事も、大切な恋人であると認識しているワケだが……。
だがこのまま手ぶらで日本に帰っては、聖のジュピタープロダクションはともかく、城嶋エンタープライズは危ない。
だから、あの横柄な王様を誑し込んで、サインを貰って来いと。
――――聖を本当の恋人だと思っていたら決して望まないであろう願いを、城嶋は思っていながら口に出せずにいる。
(誰にでも優しい男というのは、こういう時は逆に残酷だな)
内心で舌打ちしながら、聖はスッとソファーから立ち上がった。
晁生が戸惑った様子で「君がどうしても嫌だというなら、別の手を考えるが」とモゴモゴと呟くが、そんなものは建前だというのはとっくに見抜いている。
これ以上言い訳に付き合うなど、唯々不愉快なだけだ。
だから聖は、スッパリと切り捨てるように告げた。
「お前は部屋に戻って、明日のプレゼンはキャンセルすると各所に伝えろ。オレはこれからレオンの許を訪ねて、必ずマフタン財団のバックアップを確約させる」
「聖……」
晁生は引き留めるように手を伸ばすが、その手は虚しく空を切る。
聖はもう後ろも見ずに、その場を立ち去ったのだった。
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