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では、本気で恋人を。
生涯を共にするようなパートナーを捜す気があるのかと問われれば、それに頷く事には躊躇いがある。
数多の色恋を繰り返し、本気になっては傷付いて……聖はすっかり疲れてしまった。
大抵は『まだ若いのだから幾らでもチャンスがある』と、慰めにもならない事を言うが、果たしてどうなのだろうか?
(オレは45だぞ。いくら見た目が若いと言われてもな……)
老若男女問わず口説かれる事は相変わらず多いが、どこまで相手も本気なのかを考えると、実に怪しい気がする。
それに、そんなどうしようもない事を考えている自分が、聖は嫌いだ。
(――なんでオレが、他人の顔色を窺わなきゃダメなんだ。くだらねぇ!)
大体にして、今、誰かを愛している訳では無い。
いもしない恋人を想像するなど虚しい事は止めて、このまま自由を謳歌するのが一番だ。
「聖、大丈夫かい?」
物思いに沈んだ聖を心配してか、晁生が水の入ったグラスを差し出して来た。
聖はソファーに座ったままそのグラスを受け取ると、沈んだ気分を切り替えるようにゴクリと飲み干す。
そんな聖の隣に腰掛けながら、晁生は重苦しい溜め息をついた。
「本当に……失言だった。謝るよ。君がボクに義理で付き合ってくれていることを知っていながら、横柄な事を言ってしまった」
「……サイエンは?」
「彼は、アラブ系の友人に呼ばれて向こうのテーブルに行ったよ」
「そうか」
この後は、サイエンを介さずともレオンの方で勝手に動くだろう。
ヨーロッパでのマフタン財団の協力を取り付けて各書を交わせば、あとはもう船を降りるだけだ。
仕事は終わりだ。
一ヵ月のスケジュールを開けたが、これで早々に下船が叶いそうだと思っていたら、晁生が深刻な表情で聖を見つめている事に気付いた。
「なんだ?」
生涯を共にするようなパートナーを捜す気があるのかと問われれば、それに頷く事には躊躇いがある。
数多の色恋を繰り返し、本気になっては傷付いて……聖はすっかり疲れてしまった。
大抵は『まだ若いのだから幾らでもチャンスがある』と、慰めにもならない事を言うが、果たしてどうなのだろうか?
(オレは45だぞ。いくら見た目が若いと言われてもな……)
老若男女問わず口説かれる事は相変わらず多いが、どこまで相手も本気なのかを考えると、実に怪しい気がする。
それに、そんなどうしようもない事を考えている自分が、聖は嫌いだ。
(――なんでオレが、他人の顔色を窺わなきゃダメなんだ。くだらねぇ!)
大体にして、今、誰かを愛している訳では無い。
いもしない恋人を想像するなど虚しい事は止めて、このまま自由を謳歌するのが一番だ。
「聖、大丈夫かい?」
物思いに沈んだ聖を心配してか、晁生が水の入ったグラスを差し出して来た。
聖はソファーに座ったままそのグラスを受け取ると、沈んだ気分を切り替えるようにゴクリと飲み干す。
そんな聖の隣に腰掛けながら、晁生は重苦しい溜め息をついた。
「本当に……失言だった。謝るよ。君がボクに義理で付き合ってくれていることを知っていながら、横柄な事を言ってしまった」
「……サイエンは?」
「彼は、アラブ系の友人に呼ばれて向こうのテーブルに行ったよ」
「そうか」
この後は、サイエンを介さずともレオンの方で勝手に動くだろう。
ヨーロッパでのマフタン財団の協力を取り付けて各書を交わせば、あとはもう船を降りるだけだ。
仕事は終わりだ。
一ヵ月のスケジュールを開けたが、これで早々に下船が叶いそうだと思っていたら、晁生が深刻な表情で聖を見つめている事に気付いた。
「なんだ?」
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