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そうして彼は、この場の誰にも遠慮する事なく、力強い声で聖に告白した。
「どうやら私は、ミドーに一目惚れをしたようだ。どうかこのまま、私の物になってほしい。NOは許さないぞ。私は、愛しているものに手荒な事はしたくない」
「おい、レオン……」
これにはサイエンも呆れたようで、ますます険悪な表情になる聖を宥めるように、そっと抱き寄せた。
「確かにミドーは美しいが、彼は人形ではない。意志を持った人間だ。それに、シオリの前で言うセリフではないだろう?」
かつて、聖の意志を無視して軟禁した過去があるくせに、サイエンはそれを忘れたかのようにレオンを諭す。
『よくもいけしゃあしゃあと』と聖は思ったが、ここでサイエンに反発しても何の得もしないので、しおらしく目を伏せながら訴えることにした。
「……突然そんな脅すような事を言うなんて思わなかった。サイエンの紹介だというから信用していたのに……オレはもう船を降りたい気分だ」
「おお、可哀想に。レオンは性急すぎるぞ。ミドーを怖がらせてどうする?」
すると、さすがに反省したのか、レオンは申し訳なさそうに肩を落とした。
「そうか。私も少し急ぎ過ぎたようだ。では、改めて招待状を送ろう。その時は是非訪ねて来てくれよ」
そう言うと、レオンは意識を切り替えたようにパッと身を翻して去って行った。
シオリと鞄持ちの青年も、無言のままその後に付いて行く。
まるで嵐が去ったかのような気分で、聖はそれを見送った。
(結局、彼女の声は一度も聞けなかったな)
どうも、愛し合って婚約したようには見えなかった。
始終レオンは、シオリに対して優しい言葉の一つも眼差し一つも向ける事無く、ずっと冷淡だった。
シオリの方はそれがモデルの特性なのか、鉄壁のポーカーフェイスで、感情が読めなかった。
あの二人は何かしらの取り引きがあって婚約したのだろうか?
(そういえばレオンは、不本意だが役目があるから婚約したと言っていたな)
いったい役目とは何なのだろうと考えていたら、あっさりとサイエンがそれを口にした。
「どうやら私は、ミドーに一目惚れをしたようだ。どうかこのまま、私の物になってほしい。NOは許さないぞ。私は、愛しているものに手荒な事はしたくない」
「おい、レオン……」
これにはサイエンも呆れたようで、ますます険悪な表情になる聖を宥めるように、そっと抱き寄せた。
「確かにミドーは美しいが、彼は人形ではない。意志を持った人間だ。それに、シオリの前で言うセリフではないだろう?」
かつて、聖の意志を無視して軟禁した過去があるくせに、サイエンはそれを忘れたかのようにレオンを諭す。
『よくもいけしゃあしゃあと』と聖は思ったが、ここでサイエンに反発しても何の得もしないので、しおらしく目を伏せながら訴えることにした。
「……突然そんな脅すような事を言うなんて思わなかった。サイエンの紹介だというから信用していたのに……オレはもう船を降りたい気分だ」
「おお、可哀想に。レオンは性急すぎるぞ。ミドーを怖がらせてどうする?」
すると、さすがに反省したのか、レオンは申し訳なさそうに肩を落とした。
「そうか。私も少し急ぎ過ぎたようだ。では、改めて招待状を送ろう。その時は是非訪ねて来てくれよ」
そう言うと、レオンは意識を切り替えたようにパッと身を翻して去って行った。
シオリと鞄持ちの青年も、無言のままその後に付いて行く。
まるで嵐が去ったかのような気分で、聖はそれを見送った。
(結局、彼女の声は一度も聞けなかったな)
どうも、愛し合って婚約したようには見えなかった。
始終レオンは、シオリに対して優しい言葉の一つも眼差し一つも向ける事無く、ずっと冷淡だった。
シオリの方はそれがモデルの特性なのか、鉄壁のポーカーフェイスで、感情が読めなかった。
あの二人は何かしらの取り引きがあって婚約したのだろうか?
(そういえばレオンは、不本意だが役目があるから婚約したと言っていたな)
いったい役目とは何なのだろうと考えていたら、あっさりとサイエンがそれを口にした。
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