MAN OF THE FULL BLOOM

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　促されるままにそちらへ視線を向けたところ、黄金の獅子を思わせる風貌の男が会場に姿を見せたのが分かった。

　男の後ろには、クレオパトラのように気品あふれる東洋人の美女と、鞄を抱えた地味な東洋人の男が付き従っていた。
　おそらく、あの美女が男の伴侶パートナーで、鞄持ちの方は秘書か何かだろう。

　男は、サイエンを目ざとく発見すると嬉々とした表情になって、靴音も高く歩み寄って来た。

「サイエン！　ナモ公国では世話になったな！　ところで、私に会わせたい人物とは――お？」

　そこで、男は聖に目が釘付けになった。
　まだサイエンから正式に紹介されていないのに、この人物こそが噂の『傾国の美女』なのだと直感したようだ。

　象牙のように滑らかな肌、碧瑠璃のように輝く瞳に、形のいい緋色の唇。
　スッと通った鼻筋も、細い眉も絹糸のような髪も全てが綺麗だ。

　一目で気に入ったのが傍目に分かるくらいに、男は相好を崩した。

「おお、なんと美しい！　私はレオン・マフタン。フランス人だ。どうか、貴方の名前を教えてくれ」
「おいおい、レオン。オレを差し置いて勝手に話を進めてくれるな」

　苦言を口にするサイエンに、レオンは豪快に笑った。

「ハハハハ、許せ！　これ程美しい東洋人を見たのは初めてだったので、興奮してしまった。……中国の方かな？」

　無視するわけにも行かないので、聖は微笑を浮かべながらゆっくりと口を開く。

「初めまして、ムッシュレオン。オレは御堂みどう聖ひじりという名前です。日本人ですよ」
「そうか、日本人か。イ……イジリーで合っているか？」
「……どうぞ、サイエン氏のようにミドーと呼んで下されば」

※フランスにはHの発音が無いので、HITACHIなどもイタチというらしいです（本当）

「分かった、ミドーだな。貴方も、私の事はただのレオンと呼んでくれ」

　レオンは黄金の鬣たてがみを揺らすように笑うと、サイエンも晁生も、それどころか伴侶であろう美女も無視して、聖を抱き締めると同時にキスをした！